Leave No Traceを深掘り!【原則6野生動物の尊重編】
ひの社会教育センターの活動ではおなじみの「Leave No Trace(通称:LNT)」
ひの社会教育センターの活動に参加している方であれば、活動のしおりや説明会などの動画でも度々紹介しているので、もう耳にしたことがある人も多いと思います。
今回はそんなLNTを深掘りしていきたいと思います!
LNTってなに?という方は以下の記事からご覧ください👇
1枚の写真から考える「野生動物の尊重」
皆さんはこちらの写真を見たことがあるでしょうか。
一見ただの“駆除された熊”です。
しかし、この写真には悲しい真実があります。
以下、世界自然遺産「知床」で環境教育や普及啓発、自然・野生動物の保護をしている「知床財団」が観光客に配布したポストカードの内容です。
きっと、餌付けをした観光客からすると、ある意味“野生動物を尊重して”とった行動なのかもしれません。しかし、そのような行為は真に「尊重している」と言えるのでしょうか。
本来、野生動物たちは厳しい自然の中で、生きていくために自分たちで住むところを見つけ、生きるために自分たちで獲物を捕獲し、野生の中で力強く生きています。野生には野生の摂理があるということです。大切なのは、それを人間が理解して行動することではないでしょうか。この悲しい出来事の教訓はここにあります。
「野生動物の尊重」とは?
我々が訪れるキャンプ場や山などの自然の中は、野生動物たちにとっての家や庭のようなもの。そこに“お邪魔する”意識をもつことが大切です。我々人間にも“ソーシャルディスタンス”があるように、動物たちにも“ソーシャルディスタンス”つまり「動物たちがストレスを感じる距離感」があり、野生動物が自然の中で伸び伸びと暮していくためには、人間がその距離感を保つことが野生動物を尊重するうえで大切になってくるでしょう。
≪野生動物がストレスを感じる3要素≫
① 「距離」=動物によって適切な距離が異なる
② 「人間の行為」=大声を出す、大きな荷物、大人数etc.
③ 「動物の状態」=出産、子育て、食事、繁殖期etc.
不適切な距離は、動物たちにストレスを与え、場合によっては危害を加えてくる可能性があります。まずは距離を保つことを意識し、グループの人数が多い場合は少人数に分けたり、身体をかがめたり、声量に注意をはらったりすることで、野生動物たちに与えるストレスを最小限にして自然を楽しむことができます。(熊は例外で、急な接触を避けるために脅さない程度の音を出しながら人間の存在を知らせる必要があります。)また、子育てや食事中の動物はセンスティブになっているため、より注意を払う必要があるでしょう。
そしてもう一つ、「野生動物にはエサを与えない」という観点から、キャンプ後や山の中での食事で出る食べかすを必ず持ち帰ることが大切です。また、病気や怪我をした野生動物をむやみに近づいたり、触ったりすると、危害を及ぼしてくる可能性がありますし、その後群れに戻れなくなる可能性もあります。それも“野生の摂理”として捉えていくことが真の「野生動物の尊重」なのだと思います。
野生動物との適切な距離感を覚えよう!
日野市近辺で言えば「高尾山」が有名ですが、そんな高尾山にもムササビやタヌキなどの小型動物をはじめ、イノシシなどの大型動物も野生動物として生息しています。コロナ禍で人間の活動が減少した過程があったことから、野生動物の行動範囲が増え、近年自然の中へ出かけると野生動物たちとの遭遇率が上がっているという話もあります。
では、実際に野生動物たちに出会ったらどうすればいいのでしょうか。
「適切な距離」とは言うものの、実際どれくらいの距離を保てばいいのでしょうか。
【動物とのソーシャルディスタンス「サムズロー」】
前章でも述べたように、その動物によって適切な距離が変わってきます。
その目安となる距離を保つことができる方法が「サムズロー」です。
① 片方の親指を立てて、肘を真っ直ぐに伸ばし、対象の動物に向ける。
② もう片方の手で片目を隠し、親指の奥に対象の動物が入るようにする。
③ 親指の中に対象の動物が収まるまで距離をとる。
④ 親指の中にスッポリ入ったら、その距離がその動物にとっての「適切な距離」!
動画はこちらから👇
これはあくまでも目安です。前章でも伝えている通り、動物にストレスを与える要素は距離だけではないので、総合的に考えて野生動物との適切な距離を保ちましょう!
最近、八王子市内でも鹿の出没、都内での野生動物遭遇など、郊外・都市部関係なく野生動物たちの行動範囲が広がっています。その背景には様々な理由がありますが、レジャーとして楽しむことができるキャンプ地や山などでは、その郊外よりもさらに野生動物たちとの遭遇率が上がっています。
野生動物との遭遇は、時として私たちに学びを与えてくれ、自然とのつながりを感じさせてくれる機会でもあります。そんな野生動物たちと“共生”してくための架け橋となるのが、このLNTの考え方なのかもしれません。
ひの自然学校サステナブル レスポンシビリティマネージャー
若泉わか
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