LGBTからずっと逃げていたTです

今の会社に勤めてもう5年以上になる。仕事もつつがなくこなしているし、後輩もできて、穏やかな会社員としての日々を過ごしている。

私はトランスジェンダーで、2012年に戸籍を男性から女性に変更した。変更する前は夜の接待を伴う飲食店(いわゆるキャバレー)で働いていてお金を貯めていた。お金を貯めて手術をして戸籍を変える、という明確な目的があったから仕事もがんばれた。無駄遣いはしなかったし、休みが週1回でも平気だった。入学した大学は1年で休学していたけれど、結局その間にやめた。携帯も解約して、人間関係も一度全部リセットした。

やがてお金がたまった私はキャバレーを辞めて性別適合手術をし、戸籍も変更した。その後は就職活動を行い一般企業に就職、現在に至る。

ずっとLGBTを避けてきた。テレビで何かしらの主張や不利を訴えるLGBTが苦手だった。私は社会に埋もれたかった。だから、メディアにLGBTが取り上げられて目立った活動をしていたりするのがとても気に障った。役所の職員が途中で性別を変えて働きたいと主張したり、大手企業がLGBTフレンドリーを掲げることを新聞やネットニュースを通して一般の人の耳目に触れることがとても嫌だった。そうしたニュースが「おまえもそうなんじゃないか」と思われるきっかけになるんじゃないかと怖くなるからだ。LGBTが声を挙げるたびに、LGBT当事者である自分の今の立場が脅かされるような気持ちになった。LGBTの話題を避け、情報をシャットダウンしてきた。淡々と目の前のタスクを処理していけばいいのに何でわざわざ声を荒げるの?と憤る反面、自分が戸籍を変えられているのは、かつて声を挙げた人がいたからなのにという矛盾にも気づいていた。

先日、私の素性を知る幼馴染から「性同一性障害で悩んでいるインターン生がいるけど話を聞いてあげられるか」といわれた。性同一性障害という言葉を久しぶりに聞いて、身の毛がよだった。ずっと避けていた言葉だ。でも一方で自分が頼りにされたことに素直にうれしさを感じている自分がいた。

それから私は、LGBTについて調べている。始めたばかりなのでまだわからないことばかりだ。いつの間にかLGBTはLGBTQになっていて、それぞれにジェンダーも細分化されている。一回聞いただけでは覚えられないくらい種類が多いように感じる。そして、LGBTQの全員が一致団結しているわけではないということも知った。それぞれに主義主張がある。

私はこれからも社会に埋没して生きていきたいと思っている。でも一方で自分の経験が誰かの役に立ったらうれしいとも思う。いろいろあったけど今は楽しく生きてるし、自分をあきらめなくてよかったなあと思っている。LGBTの情報統制をしてきたから、本当に自分が何も知らないということを再確認している。とりあえずAmazonの勧めるがままに本を買う。Amazonの勧めにより今日はハーヴェイ・ミルクの映画を見ることになっている。

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