ひのくま

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声のルッキズム

あなたの声、落ち着いていて聞きやすいね。 優しい声で癒される感じがしたよ。 初対面の人にあうと時折、声をほめてもらえる。最初言われたときはお世辞も甚だしいなと思ったけれど、たびたび言われるようになってからは素直にお褒めの言葉として受け止めるようにしている。 私の声はとても特徴的だと思う。たいていの女の人よりは低く、たいていの男の人よりは高いような声をしている。自分の声を録音したものを聞くと、鼻炎でもないのにいつも鼻にかかった声をしている。 長い間、自分の声を受け入れら

    • 悪魔が来たりて正論を説く

      生まれてこのかた、自分の人生を生きているという感覚がない。 誰かの人生、とまでは言わないけれど、自分の人生が人ごとのよう思えて仕方がないのだ。だから、人ごとのように深く興味が持てないし、どうでもよいとさえ思うこともある。流されるように流れたいままに生きてきたような感じがする。みな計画的に生きているのだろうか。計画が思い通りにいかなくなったらどうするのだろうか。やり直したり、巻き戻したりできない不可逆な人生とみんなどうやって折り合いをつけて生きているんだろう。 18歳で大学

      • 「ガッキーはかわいい、私はかわいくない」ってノートに書きなぐった

        私は自分のことを日本一かわいいmtfだと思っています。自称する分には許してほしいです。こんなことを言うと本当に頭のおかしなやつと思われても仕方ないのですが、以前は自分に自信が持てない、鏡に向かって「ブスブスブスブス…」とつぶやいているような自己肯定力0の人間でした。そんな私が自己肯定力をどのように高めていったのかお話しさせてください。 結論から言うと、私の場合周りの人に「かわいい」と言ってもらえたことが、自己肯定力を少しずつ高めてくれたと思います。なあんだ見た目のことか、と

        • 出戻りスパイラルのわけ

          私が歌舞伎町の接待を伴う飲食店(いわゆるキャバレー)で働いていたのはもう10年ちかく前になる。コマ劇場の建物がかろうじてあって、TOHOもゴジラもなかったと記憶。今みたいにホストはそこまで多くなくて、ちょっとだけ不景気だった。実家を離れるとき、親から「歌舞伎町みたいなところには絶対にいっちゃだめだ」と言われたその足で夜の店の面接に向かった日のことを今でもよく覚えている。 酔っぱらったキャスト同士の喧嘩がたびたびあって、(ヒールを飛ばしあったりしてて、見てる分にはおもしろかっ

        声のルッキズム

          LGBTからずっと逃げていたTです

          今の会社に勤めてもう5年以上になる。仕事もつつがなくこなしているし、後輩もできて、穏やかな会社員としての日々を過ごしている。 私はトランスジェンダーで、2012年に戸籍を男性から女性に変更した。変更する前は夜の接待を伴う飲食店(いわゆるキャバレー)で働いていてお金を貯めていた。お金を貯めて手術をして戸籍を変える、という明確な目的があったから仕事もがんばれた。無駄遣いはしなかったし、休みが週1回でも平気だった。入学した大学は1年で休学していたけれど、結局その間にやめた。携帯も

          LGBTからずっと逃げていたTです