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私たちは、プリンセス願望を否定するほどまだ成熟していないんじゃないか

娘(1歳半)がディズニープリンセスにハマっている。

自粛期間に彼女が退屈しないように動画サブスクリプションにかたっぱしから入った影響で、ディズニープラスで全作品が見られるので(昔は1年に1作品くらいVHS買ってもらうのが楽しみで、擦り切れるほどみていたのに、いい時代である)私も一緒になって一本一本見直しているのだれど、

1937年の白雪姫(世界初の長編アニメーション映画)からはじまって、アナ雪まですべてが素晴らしい作品で、歌もストーリーもビジュアルも、エンターテイメント性がまったく色あせていない。1歳半から30代後半な私まで楽しめるのに圧倒される。

眠りながら待つ姫→王を目指す姫へ、時代の女性を映すプリンセスたち

それから、時代ごとに変遷するプリンセスに投影される価値観(つまりその時代をいきる女の子の価値観)を追っているのも面白い。

白雪姫が封切られた1937年は日本では日中戦争がはじまった年だし、シンデレラの1950年は終戦から5年しか経っていない時。

今でこそディズニープリンセス映画のステレオタイプなハッピーエンド(王子様と結婚することが幸せという描き方)には否定的な声が多く、近年実写化が盛んなプリンセス登場映画は現代的な価値観をミックスしたストーリーラインにアップデートしていたりする(実写版アラジンのジャスミンは自ら王位継承を望んでいる設定)けれど、

今は多様性をこんなに盛んに叫んでいるアメリカで、たった80年前まで「健気に生きる女性のところに王子様が迎えに来て幸せになる」みたいなストーリーに多くの女性が熱狂したのだとすると、

そういう価値観が「前時代的」と否定するにはまだ早いんじゃないかというほど、ここ100年くらいの女性の社会的地位の変化・進化というのは人類の長い歴史の中でも凄まじいものがあるんだなと思ってしまう。

「プリンセス願望」は死んでしまうべきか?

かくいう私は母として、娘にはこれからの100年〜120年を生き抜いていただきたいと思うので、王子様との結婚式のラストシーンのたびに

「ここからが本当の人生なんだぞ..」

とか、

「さすがに井戸で歌ってるだけでは王子は来ないぞ..(白雪姫)」

とか、

「好きな男のためとはいえ、危ない契約書にみだりにサインすると人生詰むぞ..(リトルマーメイド)」

とか、強く生きていっていただくための副音声を一生懸命つけている。

ただ、たしかに理想の男性との結婚が人生のゴールでないことは明確だけれど、そのハッピーストーリーを鵜呑みにしないで自分で考えろというだけで、否定的に語る気にはなぜかなれない。

それならどうして、ディズニープリンセスは80年たった今もシリーズとして愛され、熱狂する女性が多いのか。

プリンセス願望は、本当に前時代的で、もう死んでしまうべき概念なのだろうか。

世界中のディズニーショップに今もプリンセスグッズコーナーが広い面積を占めているのはなぜなのか。

プリンセスへの憧れ=理想のパートナーシップへの憧れ

その答えの一つは、パートナーシップへの普遍的な憧れなのではないかと思う(ここまでパートナーが描かれていないアナ雪のエルサは除く)。

今、仕事をもち経済的に自立する女性たちにとって、また、終身雇用や右肩上がりの給与が望めない男性たちにとって、結婚する経済的な意義はどんどん薄れているそうだ。

かくいう私もシングルマザーだけれども、出産と結婚を切り離して考えている私にとって、結婚する実利や、自立したパートナーシップの中に結婚が必要かどうかについては、即答することができない。

それでも、経済的セーフティーネットとしての役割も強かった結婚の意義が弱くなっている今だとしても、やはり普遍的に誰かに必要とされ、必要としながら生きていきたいという願望は、人間の普遍的なものなのではないだろうか。

人生を一人で生きていけるとたかを括れるほど、自分は精神的に自立してないと思うし、そんな日がくるのかもよくわからない。それどころか(異性に限らず)理想的なパートナーシップを築くことは、人生を賭けて挑戦するに値するワクワクする課題だとも思う。

ちょっと飛躍しているようにも思うけれど、プリンセスたちが憧れを歌い、その物語の中で叶えた理想の王子様との結婚(=理想のパートナーシップ)を否定するほど、私たちはまだ成熟してはいないんじゃないかと思うのだ。

娘には、もうステレオタイプのお姫様として生きていけない時代がきている現実は受け入れつつ、1歳半の彼女のDNAにもプログラムされていたプリンセス願望を、なにかしらのパートナーシップを築いていってもらうことで叶えてもらいたいなと

(そんなこと言ってたら「国家と結婚した」と宣言したクイーンエリザベスにでもなってしまうんじゃないかと謎の妄想をしつつ)

今日は「眠れる森の美女」を鑑賞したのでした。

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