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標高1,250メートルのバスターミナルで

標高1,250メートルのバスターミナルで、Aは、私を迎えてくれました。20万円で買った、という中古車の助手席に私を乗せて、Aが暮らす町に向かいます。

「ペーパードライバーだったんですけど、ここでは車なしではやっていけませんから」と、ウンウンうなる軽自動車のアクセルをベタ踏みして山道を行きます。

Aが私たちのカイシャを辞めた理由。言い換えればAの夢の所在を知る私は、その準備のためここで温泉宿のバイトに明け暮れるAの横顔をチラ見します。

「今はまだ何者にもなれずにいます」というLINEを送ってよこしたAの今の暮らしも肯定してやりたい私は、さっきから窓の外の景色ばかり褒めています。

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