[詩]爪切り鋏を失くした
爪切り鋏を失くした。
部屋のどこか、おそらく易々と目にはつかないところに転がっていて
新しいのを買うより探したほうがいいけれど
それには時間と手間がかかるから今はできない
雪が降ると「ありふれた」がすべて「雪の降る」に変わるから雪は好きだ。
ありふれた宅地にも、ありふれた自分にも降り積もり、雪は
色を奪うかわりに重みをかっさらってくれる
爪は伸びると回転すると聞いたことがあるけど
そうしたら手はただの飾りになる
クリスマスツリーと同じようにオブジェになって、見ようによっては光る
割り箸が何百本もとれる間伐材、
無作為な意味のない数字、
顔を洗う前のだれか、
それぞれに
全き孤独はやってくる
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