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パートナーは双極症【死が怖いわけじゃなかった】

ユキはICUに入った時から、

いつ何があってもおかしくない状態だった。





だから面会をすぐさせてもらったけれど
怖くて、触れることも、
名前を呼ぶことすらできなかった。





彼から感じる絶望の振動が怖かった。
彼が持っていたもの。
自分も持っているもの。


誰のものだかわからないものまで感じて、

怖くて仕方なかった。


それを覗き込み、
呑み込まれ、
膨れ上がっていく。
それが怖かった。






ICUに入り1週間、
ユキの表情からそれが消えていた。





身体から少しずつ離れて、
静かなところにいるのを感じて安心し、





同時に死を覚悟しながら、
それでも目を覚ましてくれることを祈った。





ユキと物理的に離れる時間ができてやっと
ユキの願いとは違う
私の願いを
私自身のために
祈ってもいいと思えた。


『生きてほしい』




毎日触れて、声をかけた。





ベットの横で
膝を突っ張り立っていたことに気づいて、
膝を緩めて、

「私が緩んでないと呼吸苦しいよね」
と声をかけたと思う。





意識もなく人工呼吸器をつけたまま、
ユキの目から涙が溢れた。
突然のことで驚きながら
私の目からも涙が溢れだす。


身体の可能性を信じていたユキの涙。
身体を持ち生きている…
もう自力では呼吸すらできない身体でも
振動をキャッチしている。


身体があるうちにできることは
何でもしようと思った。



その翌朝、ユキの表情の違いに気づいた。
もう、本当にほぼ身体を離れている。
気づいたけど、気づきたくなかった。


気づきながら、できることは何でもした。
カミソリで荒れた肌にシアバターを塗って、
アロマオイルも使って、
話しかけて、
2人で笑いながら歌った曲も歌った。
30分の面会時間はあっという間だった。


明日また来るねって言ったのに、


その日の晩、病院に飛んで行くことになった。




ユキの身体はもう限界だった。
そして、ユキは身体を離れていった。



ひとり彼を見送り、
葬儀屋の車が到着するまで数時間







身体と共にある2人最後の時間。


とても静かで、
ユキも、私も
心底安堵していた。



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