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電脳虚構

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近未来テクノロジー空想小説のショートショート
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電脳虚構、Kindle版出版について・・

こんにちわ、ひなたです。 この度、noteで投稿していた「電脳虚構」のKindle版のリリースが決定しました。 カバーデザイン(自作) タイトルは 電脳虚構 ACT-1『善意の都市』です。 著者は「ひなた猫々(ねね)」です。 「ACT-1」とは第一幕という意味ですね。 演劇とか舞台で使われる表現です。 決定というか、誰かに依頼を受けたわけではなく 20作品あるし、まとめよう。と、そんな感じ。 小説はやっぱり「縦書きで読みたい!」 読書好きは皆、そう思うはずです。

メタバース系ショートショートまとめ「電脳虚構」

お久しぶりデスーーー! 電脳作家ひなた猫々(ねね)です。 電脳虚構シリーズは現在出版の準備中です。 ハードル上げまくって首を絞めてる状態です。 Kindle小説に革命が起きるかも!! そんな気持ちで編集作業を行なっています。 最近、ようやく「メタバース・NFT」とか世間でざわついてますね。 やっと私の創作の世界。。。 というか、私の師匠の渡辺浩弐さんの世界観なんですけどね。 現実はその世界が追いついてきた感じです。 師匠の渡辺浩弐さんも、最近noteを開設しました。

電脳虚構#20| 幽霊の証明

「どーですか? 私のかけてるこの”ゴーストグラス”。 一家にひとつ、いや個人にひとつ持っててもいいくらいですよ」 「これで本当に幽霊が見えるんですか? なんかイマイチ実感わかないなぁ」 「いやいや、この商品は”幽霊が見えないこと”に意味があるんですよ」 「え?みえなければ、ゴースト・・グラス? それの意味なくないですか?」 「この商品。我が社がNOSOと共同開発して何年もかけて実現した画期的な発明なのです。 現在、特許申請中ですが、いずれ大きなニュースになるでしょう

電脳虚構#19|マッチング・アベニュー

ダイニングテーブルを分つ、ふたつのカップ。 口も付けず、その熱と珈琲の香りだけが天井へと逃げていく。 長い沈黙を破ったのは、夫の方だった。 「ごめん・・。」 二人を隔てる乾いた空気。その声はポツンと虚しく響いた。 「あやまらないで。実は私も・・」 ”どっちが先”という話ではない。 互いが互いを裏切り、別の人を愛した。 ただそれだけだった。 Chapter.1 アベニュー 「アベニュー」というマッチングアプリがある。 自分のアバターを作って仮想世界で異性と交流する

電脳虚構#18|課金地獄

さびれた工場の隅、毎日の退屈な流れ作業。 安い時給で鞭で打たれるように働かされ、身体を引きずるように帰る。 今日もスーパーで安いカップ麺と、見切り品の総菜を適当にを買う。 殺風景なワンルーム。 エアコンの調子が悪く、むせ返るような暑さだ。 日々溜まっていくのは金ではなく、捨てずに置きっ放しのゴミと、ストレスだけだ。 そんな現実から目をそむけながら、適当に夕食をかっこむ。 ゴミをいつものように放り投げ、逃げるようにして「あの世界へ」もぐる。 ・ ・ ・ Chapte

電脳虚構#17| 人生テトリス

この世の中、みんなそれぞれテトリスのブロックになり、自分の場所へとはまっていく。 向きを変え、スキマをさがし、上手に積み上がったブロックの中に溶け込んでいく。 時にスキマが生まれても、すぐ次のブロックがフォローして隙間を埋めてくれる。そういうチームワーク、助け合いがあるのが素晴らしきこの世界だ。 僕は・・でも僕は。 いつも自分の番が回ってきても、スキマなんかない。 どんなに向きを変えても、自分のというブロックがピタっとハマる場所が見つけられない。 タイムアップがきて、

電脳虚構#16 | 夏の日の少年

コージとユミコと僕。 自転車で学校の裏のドングリ山に行ったんだ。 そこでUFOがみれるんだって、ユミコの兄ちゃんの友達から聞いた。 この夏休み中に実行しようとこっそり作戦を立ててたこの「UFO計画」。 今夜がその決行の日だった。 みんな半分はジョークだった。 ・・でも本当にUFOに遭遇するだなんて。 ・ ・ ・ 彼は「ケンヂ」と名乗った。 自分の星へ帰る途中、充電が切れて急きょ僕らの星に不時着したらしい。 こっそり燃料をためて、帰るつもりだったそうだ。 僕らと

電脳虚構#15 | 夏休みの終わりに

Chapter.1 おんぼろバス ぼくの家から、電車をいくつも乗りかえて3時間。 そこからさらに、おんぼろバスで50分。 ガタガタと山道をゆられ、アーチのような竹林を抜け、おばけがでそうなトンネルを通る。 長い下り坂、バスはスピードが上げて一直線。 南風に乗って、ふわっと潮風の匂いがバスいっぱいになる。 その先の急カーブを左に曲がると、キラキラ光る海が見えてくる。 波に反射する日差しが眩しくて、ぼくは思わず目をつむる。 海を横目に細い道を右に左にくねくねとバスは進む

電脳虚構#14 | ザッピング・ルーム(下)

Chapter.4 シェア・ホスピタル からの続き Chapter.5 暴露 彼女は以前、この「シェア・ホスピタル」チームのチーフプログラマーだった。 もともとは彼女の提案からスタートした社運をかけたこの計画。 「天才」と言われる彼女はいつでもクレバーで最高の仕事仲間だった。 才色兼備、女性としても魅力があり「相棒」からいつしかそういう関係にもなってしまう。 その噂が社内に広まり彼女はこのチームを、会社を追いやられしまった。 僕は彼女を庇わなかった、自分の地位を失うこ

電脳虚構#14 | ザッピング・ルーム(上)

Chapter.1 イチカ家の裏の通りに差し掛かると、温かくいい匂いが漂ってきた。 「お、今日はカレーだな」 イチカは家庭的で料理上手だ。 特に彼女のカレーは格別でつい食べ過ぎてしまう。 「ただいま、今日はカレーだね。 裏の路地まで匂いがしててもうそれだけで腹ペコだ。」 3つ年上の彼女、高く髪を束ね、白いうなじのエプロン姿。 この素朴な無自覚のかわいさが、たまらない色気を放っている。 「おつかれさま。お料理、すぐできるから先にお風呂どうぞ。 今日はお隣さんから柚子い

電脳虚構#13 | ホークアイ

Chapter.1 博士と助手 「どうです?私のこと見えてますか?」 少し目を逸らした隙に博士は目の前から姿を消した。 「これはすごい、まるでステルス迷彩だ。」 空間がニュルっと歪み、透明な空気に色がつく。 その色は徐々に人間の輪郭へと形成されていき、博士の姿が現れた。 「そうこれがカメレオンの能力なのですよ。  きっとヒットしますよ、この擬態能力は。」 遺伝子工学の研究が進み、あらゆる生物の能力、その遺伝子を人体に取り込むことが可能となった。 その技術が国の研

電脳虚構#12 | どろろ

Chapter.1 サブスク 人体転送サービス「ファストトラベル事業」が盛んになり、企業の低価競争がはじまった。 サービス開始当初は1回のトラベルから発生していた料金。 ついに「トラベルし放題」のサブスクが主流の時代へ。 ・全世界どこへでも! ・国内のどこへでも! ・地域限定 ・夜割、学割 ・レディースデー・シニアデー 様々なターゲットにしぼり、サービスが次々に実装された。 僕は頭も悪く、容姿もごく普通。特に取り柄のないフリーターだ。 お金もなくサブスクに入るような

電脳虚構#11 | ソウマトウセンター

「人類は生も死もテクノロジーで掌握しようとした。  その結晶がこの”ENMA”システムというモノなのです。」 そう言い放つ、何者かの冷たい表情と声に戦慄を覚えた。 「これから貴方には【ソウマトウ】を体験してもらいます。  大丈夫、別に命を奪うわけではないですから。」 Chapter.1 ライフログ ・ ・ ・ 【 ゲームクリアです!おめでとうございます!  つきましては、3日後の○月□日。  ソウマトウセンターまでお越しくださいませ! 】 通達は突然やってきた。

電脳虚構#10 |レトロフリーク

「ほら、これみてください!  この車、タイヤがボタンひとつで格納できて、飛行モードに切り替わるんです。」 「ほぉーこれはすごい。飛行モードはどういった原理で飛ぶんですか?」 「反重力ですね。燃料は電気です。  ソーラーでまかなえるほどの省電力ですが。」 「それは初めて知りました、反重力なんて技術。  それにソーラーとはまた貴重だ。  あ、あっちの装置はなんですか?  リビング中央でくるくるまわってますが。」 「プロジェクションマッピングってご存知ですか?  その技術