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anime回論 王道を芸術に変えたアニメ「無職転生」

アニメには、それぞれメッセージがある。ストーリーを通して、愛や友情や努力の大切さを私たちに投げかけてくる。

だが、芸術のアニメは、それだけではない。

芸術となりえるアニメは、多角的な深堀ができるものだ。世界観一つとっても、哲学的に、社会学的に作りこまれている。

だからこそ、ストーリーに重厚感があるのだ。

それは、風の谷のナウシカやもののけ姫などを想像すれば、納得できることだろう。

そして、無職転生は芸術アニメとなる可能性を持っている。

前提として、無職転生は、典型的な異世界系アニメである。

異世界系の魅力は、人生のリスタートにある。「世界ごと人生をやり直したい」という願いがベースにあり、だからこそ、主人公の多くは、引きこもりなのである。

無職転生の主人公ルーデウス・グレイラットも、前世では引きこもりだった。そして、異世界に転生を果たす。

まさに、異世界系アニメの王道といえる。

しかし無職転生の魅力は、異世界系アニメの王道、以上。ではない。

無職転生の魅力は、この上なく人生というものを、メインに描いている点にある。

多くのアニメにおいて、「人生」とは、キャラクターのストーリーを振り返って始めて「このキャラは、こういう人生だったんだな~」となるものだ

だが、無職転生は逆だ。リスタートから始まり、かつ、(多くの主人公でが、開き直って異世界生活をするところを、)過去を引きずりながら異世界での生活をおくっている。その光景は、前世で傷ついた心のリハビリを、異世界がしているようにすら見えることがある。

過去を引きずりながら異世界での生活をおくっているという点では、類似のアニメに「Re:ゼロから始める異世界生活」がある。

両者の違いは、「Re:ゼロから始める異世界生活」が、主人公の根性を叩き直す、いわゆるニート更生ストーリーなのに対して、「無職転生」は、赤ん坊の頃から始まる人生のre.スタートストーリーである。

これにより、「Re:ゼロから始める異世界生活」が、心の大切さを説いたのに対して、「無職転生」は、人生の大切さを説くというように、同じ異世界系でもメッセージが大きく変わるのである。

無職転生の最大の特徴は、「人生」を振り返るのではなく、「人生」を連続的に自覚していくストーリーになっている点だ。

だからこそ、抽象的な「人生」というものを形作る、世界観キャラストーリーがより、他のアニメと比べ鮮明かつ意味を持つのだ。

言い換えれば、無職転生は、他の異世界アニメと大枠は変わらないが、「人生」というものを、ストーリーの結果としてではなく、ストーリーを作るための軸としたことにより、「中世の街並み」や「剣と魔法の世界」といった世界観や「幼馴染」や「ツンデレ」といったキャラクターの存在価値を高めたのである。

最初に、芸術となりえるアニメは、多角的な深堀ができるものと書いたが、無職転生は、「人生」というものを主軸にすることで、それを形成する、世界観やキャラやストーリーといった、全ての価値を強制的に引き上げることとなり、結果として、深堀せざるを得ない状況を作り上げたのである。

無職転生、2期は10月からスタート。楽しみでならない。

noteでは、よく見るアニメ考察ではなく、社会的、経済的、哲学的といった「学」の視点から、アニメ論を書いています。マガジンとして投稿しているので、登録してくれると嬉しいです。

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