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差別は「こうあってほしい」と期待しているだけ

こんにちは。社会福祉士、精神保健福祉士のHinaです。


◇雑談

昨日、勤務先の施設で防犯訓練を行いました。変質者が施設に来た時、または施設の利用者が興奮して暴れている際の正しい身の守り方について講師によるレクチャーを受けました。その際、私の施設にはアルソックのような、通報したらすぐに飛んできてくれるサービスが入っているということを知りました。こちらで通報ボタンを押すと駆けつけてくれるそうなのですが、ふと「この人たちは待機時間に何をしているんだろう?」と素朴な疑問が生まれました。
事務作業をしているにしても急な通報ばかりでは思うように仕事が回らないよな・・・とか、とはいえ何もせずのんびりしているわけではないだろうし・・・と、待機時間を必要とする事業の運営の難しさを感じた防犯訓練でした。

◇ほんとうの多様性についての話をしよう

さて、今日は読んだ本の紹介です。

この本の著者の両親は、ドイツ人と日本人。ということで、著者はよくこんなことを聞かれるそうです。
「心の中では、ドイツ人と日本人のどちらですか?」
著者の答えはいつも「両方です。」というシンプルなもの。しかし、質問者からはあまり良いリアクションをされません。
私は、「本当の意味で多様性を受け入れる準備ができているのか?」と自信がありません。この本から少しでも私の中の”多様性”に深さを出したいと思い、手に取りました。

・二項対立にしたがる私たち

私たちは、わかりやすい概念が好きです。わかりやすい方が、理解するのに頭を使いません。無意識のうちに、何かにつけてカテゴライズしたがる生き物なのだと思います。著者で言えば、”ハーフ”というカテゴリーに分類されます。ドイツ人と日本人の血を半分ずつ持った人=ハーフ という概念はわかりやすいものですが、本来はもう少し広く、そして曖昧な存在がいるのではないかと思うのです。
私は日本人の両親のもとに生まれましたが、例えば日本の国籍を持っている、外国人の見た目をした両親のもとに生まれていたとしても同じカテゴリーになります。日本人の見た目をしていても外国籍の人がいるように、国籍と見た目、つまり引いている遺伝的な血筋は必ずしも一致しません。
このように、二項対立に「これか、これじゃないか」と分かりやすく判断するほど、世界はわかりやすくできていないのです。

・わかりやすい判断は詳細を隠す


私が働く福祉の現場では、ラベリングやカテゴライズをしないようにしよう、と常々言われます。そのクライエントを「○○障害の人」と一括りにせず、あくまでも個人として捉えることが必要である、という考え方です。
私は、この考え方は福祉の現場に限らず、日常的な人間関係にも当てはまると考えています。「おとなしい人」「優しい人」「怒りっぽい人」など、性格を言い表す単語はたくさんありますが、安易なカテゴライズはその人の「おとなしさ」の中にある個人差を見えなくしてしまうのです。
物事と距離をとって冷静に核心をつく洞察力がある人は、普段こそ発言しませんがいざという時のキーマンになります。おとなしさの中に優しさが溢れる人もいれば、おとなしくなる状況とそうでない状況を持つ人もいるかもしれません。その人を「おとなしい人だな」と安易に理解するだけで、それ以上その人に対して理解が深まる機会を失います。

・マイクロアグレッション

話を本に戻します。本の中では、「マイクロアグレッション」という言葉が紹介されています。=社会におけるマイノリティーの人に対して向けられる、偏見や先入観が垣間見える言動の事 を指します。
例えば男性に対する「男性なのに育児や家事を手伝っていてすごいですね」という発言や、ドイツ人の見た目の著者に対する「日本人よりも日本人らしいですね」という言葉。その言葉の裏には、無意識な差別的意識(家事は女性がやるものだ、外国人は礼儀を知らないなど)が存在します。悪意の有無に限らず、違うという意識があるということです。

・「その人らしさ」を期待する

私は、人は「無意識の差別」ではなく、「無意識の期待」を持っているのだと思います。
日本人には日本人らしくいて欲しい」という期待の中に、物腰柔らかく、丁寧に、ホスピタリティ溢れていて・・・といった期待が込められています。無意識のうちに、「この人はこういう人だろう。だったらこうあってほしい」と期待を持って人と接してしまいがちです。
身体的な障害を持っている人に対して、「この人は身体的なハンディを負っている=健常者よりも早く動けるなんて凄いですね」といった言葉が出てくる。
人は無意識のうちに、相手の「その人らしさ」を想像し、その通りの姿を期待してしまうのだと思います。

著者は「多様性とは、じっくり見ることから始まる」と述べています。「見た目はこうだけど、実は違うかも」といろいろな可能性を含めて、まずはその人のことをじっくり見る。その視点を忘れないようにしていきたいと思います。

というわけで、多様性に関するお話でした。
では、また💐

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