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銀座。23階から、夜の街に手を伸ばす

銀座の街には、あまり馴染みがない。


煌びやかで、眠らない街。そんな場所は自分には合わないし、ショッピングにも興味がないから、寄り付かないのだ。


でも、なぜか私たちは銀座に1泊した。しかも、三井ガーデンホテルプレミアという、20階以上に客室を持つ高いホテルに。

このホテルを選んだ決め手は、お風呂から銀座の街、特に東京タワーを見渡すことができるという「ビューバスルーム」だった。お風呂はお風呂でも、キラキラの夜景をみられるなんて、特別な日にはぴったりだと思う。


朝から海に行って、午後には銀座に行って、銀ブラして俺のイタリアンでお腹いっぱいになって、ホテルのバーで寝落ち寸前まで飲んだ。



もう、お風呂入ったらそのまま沈むんじゃないかってほど、いい疲労感でいっぱいになっていたけど、楽しみにしていたビューバスルームを外すわけにはいかない。


夜11時すぎの銀座。目の前のビルにはまだ明かりがついていて、こんな時間にもみんな働いているのかと、ちょっと違う世界を覗いている気分になった。

私たちの目の前、そして下では、無数の人と車と電車とかが動いている。今日が彼の誕生日だとか、私たちにとっては休日だとか、そんなことには一ミリも興味を抱かずに。


こうやって、大きなビル群の中に身を置いていることを実感すると、得体も知れない、抗えない何かに包まれているような気持ちになる。

自然に囲まれている時とは違う、今にも崩れそうなモノに握られているような感覚。


もともと高いところは好きではない。このまま倒れてしまうような、恐怖感が足元から襲ってくるからだ。


でも、それ以上に、この夜の街には違う怖さがあった。

彼と私は、こういうところで共通している。この夜に対する「綺麗」だけじゃない何かを感じ取り、そこにある何かを探ろうとするところで。手を伸ばしても何も掴めないような夜に、それでも手を伸ばそうとするところで。


結局、私たちには夜を掴みきれないかもしれない。
でも、わかることもある。


私たちは、人と感情が蠢く夜の街を見下ろすよりも、
今にも降ってきそうなほどの星空を眺めて、自然に対する畏怖を感じる方が好きなのだと。


憧れも、焦燥も、諦めも、希望も。
全部は銀座の夜に吸い込まれていく。

昨日の夢で、私はその中を歩いているような気がした。



言葉で、日々に小さな実りを。そんな気持ちで文章を綴っています。