中級者向け 物語らしい世界観の作り方 「試練」「調達」「欠落」「回復」「依頼と代行」「報酬の支払い」「難題」「解決」「罪を犯す」「処罰」そして「謎」 クリエイターの為の批評コラム

前回はこちら。


第2部は「物語らしい世界観の作り方」となりましたので早速、と行きたい所ですが一応新シリーズなので説明しますと、魅力的なキャラクターを作るのと同じで魅力的な世界観を作る為には「物語らしさを生む要素を世界観に埋め込む」必要があるという基本スタンスの下、各物語構造ユニットを世界観にどう埋め込んでいくのかについて書き進めていきます。

つまり今までと同じ事を世界観作りでやっていくので、似たようなものが頻出する事必至ですが、このシリーズは反復ばかりなのは以前にも申し上げましたので最早言う事はありません(その内{あるいは同時に}「面白さ」や「意外性」についても反復する事でしょう)。

とりあえず期間を設けて考えてみた所どうやらジャンルやメディア、ストーリーラインや文体(描写の作風)等は実際には世界観作りの軸にはならず、作者自身がどのようなテーマやモチーフを入れたいか、が最重要なんじゃないかな、と。パッと浮かんだワンシーン、そのディテールのイメージ、または具体的なこだわりのモチーフ、熟考に熟考を重ねてどうしても外したくない・描かざるを得ない・動かしたくないテーマ、そういったもの。そうした軸となる何かの為にそれ以外の要素を奉仕・従属させ、活用・行使し、発展・成長させ、強化・育成し、魅力的な世界観を構成する頼もしい一部分にしていくのです。そうやって全体を隙なく魅力で埋め尽くすのが理想ではありますがいきなり全てが語れる訳ではないのでこちらもそちらも少しずついきましょう。


さて、本題。

「試練」→「調達」。どんな世界観でも必要な何かを手に入れる為には多少の困難や障害を乗り越えさせなければなりません。ジャンルに合ったものを用意しましょう。学園モノなら教師や堅い生徒、SFなら自動監視装置や酸素残量、ファンタジーならモンスターやトラップ、そういったものに悩まされながら主人公はどうにかこうにか必要なものを手に入れるのです。どんな試練を乗り越え、何を調達するのでしょうか?

「欠落」→「回復」。その世界では(と言っても「作中で描かれるスケール」に於いて)何かが足りなくなります。そしてその何かは必ず何らかの形で埋め合わせる事ができるものでなくてはなりません(不完全に見えても「実は本当に欠けていたのは別のもので、そっちは満たされた」とか「それは仕方がないので諦めがついた(代わりに別のものを手に入れた)」という風に決着をつけます。完全に駄目になるパッドエンドもあっていいんですが、その場合でも「回復の手段があるように見せかけ、行動できる」必要があります)。何が欠けていて、どのように回復するのでしょうか?

「依頼と代行」→「報酬の支払い」。その世界では何かを頼んだり頼まれたりできます。役割分担や能力差があり、それによって取引し、糧を得る存在になれる世界でなくてはなりません。報酬は価値のあるもので支払われ、それがその世界のディテールとなります(必ずしも通貨である必要はなく、交換価値のあるものでいいでしょう{「お昼ご飯1週間分」「なんでもひとつ言う事をきく」等})。

「難題」→「解決」。どんな世界にするにしても、何か難しい事があり、それを解決する手段が必要です。主人公が機転を利かせて解決する場合、何か伏線やヒントになるような要素を予め描写しておかなければなりませんが、その世界で何が難題となっているのか、というのは特に魅力的に出来る「世界の謎」に大接近するポイントなので長篇や長期連載の場合にはうまく生かすといいでしょう。

「罪を犯す」→「処罰」。その世界には何かの規則や主人公の矜持等があり、罪と罰の概念があります。どのような理由で何が罪となり、どんな罰が下るのか、考えてみてください……


う~ん、一応書いてみたもののイマイチ面白くなりませんね。それもその筈で、ここまでの説明は前回も取り扱った構造ユニットばかりの上に(まぁプロップの「31の機能」は使い切りましたが)世界観を作る為に最も重要な軸がない。外せないテーマとモチーフがない。エヴァのない『新世紀エヴァンゲリオン』や冒険屋のいない『EAT-MAN』や念能力もなくハンターもいない『HANTER×HANTER』やF4のいない『花より男子』やニンジャのいない『ニンジャスレイヤー』のようなもの。脇をしっかり固めても主役がいなくちゃ締まらない。そういう状態です。

つまり主役がいないと世界観が物語らしくならない。逆に主役が居る事によって、主役が持つ何らかの要因が世界観に付与され、世界観が物語らしくなる。それは小池一夫の言う「キャラが起つ」に準えて言うと「世界観が起つ」、という事で、そうする為には受け手が魅力を感じるようなテーマやモチーフを作品内に存在させなければならないのではないでしょうか。

その魅力、テーマ・モチーフは、主人公に密接に関わるものでなければならないでしょう(主人公はロボに乗り、代行し、特殊能力を行使して目的を果たし、特殊な存在と関係し、ニンジャとなって復讐の道を歩むのです)。主人公の存在の仕方で世界観の存在の仕方が決まり、世界観の最も重要な特徴(テーマ・モチーフ)を設定する事で主人公の特徴が決まるという、世界観とキャラクターの相補性が見えてきました。

どうやら世界観というものは、キャラクター達が物語らしい存在となり得る環境を用意するように造形すればよいようです。若しくは、物語らしいキャラクター達が存在しそうな世界観を造形すればキャラが起つようになる、という事でしょうか。

とりあえず、「物語らしい世界観の作り方」について書く為には、「物語らしいキャラクター」についても書かなければならないようです。「物語らしいキャラクター」こそが「物語らしい世界観」の軸を為すのかもしれません。



キャラクターについて考えていなかったので、次回に続きます。




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