店を始めたい人へのメッセージその12：コーヒーミルは２つ買おう
自家焙煎珈琲店にとってコーヒーミル（グラインダ）は、焙煎機と同様に必須の設備であり、同時に焙煎機の次に高額な機械でもあります。
コーヒーミルはいつか必ず故障します。機械ですから。
そして、故障した瞬間にコーヒーをドリップすることも、豆の挽き売りをすることも出来なくなります。
つまり自家焙煎珈琲店としての機能の多くの部分が麻痺した状態に陥るわけです。
しかも、その状態が、修理から戻って来るまで、新しいものが届くまで、あるいは珈琲屋仲間から借りて来るまで続きます。
当店ではディッティング社（スイス）製のKRｰ805というコーヒーミルを使用しています。
ディッティングは自家焙煎珈琲店では定番とも言える業務用コーヒーミルです。
しかし、希望小売価格55万円（実際にはもう少し安く買えますが・・）と高額ゆえ、1台しか買えませんでした。
師匠からコーヒーミルは2台用意するべきだよと。また、資金に余裕がないのなら10万円程度でも必要充分な性能を持つコーヒーミルもあるからそちらにしなさいとアドバイスを受けたにもかかわらず、私は言うことを聞かず、ディッティングを買いました。
つまり私にとって「分不相応」な買い物だったわけです。
これが不幸の始まりでした。
そして「ディッティングなら大丈夫」などと根拠のないことを自分に言い聞かせ、「ま、そのうちにもう一台買おう」なんて呑気なことを考えている内にくだんの日を迎えることになります。
付記：焙煎機は国産品であることを絶対条件にした私が、なぜコーヒーミルは外国製にしたのか？
実はろくに比較検討などせずに、定評がある、使っている店が多い、カッコいい、とただそれだけの理由で選びました。
ミーハーの極みです。
大した検証もせずにディッティングにしたことを、今は少し・・・いやかなり後悔しています。
そんなことを言いながら2台目もディッティングを買ってしまった私・・・。
このあたりは、改めて書こうと思います。
3年目のある日、コーヒーミルが突然うんともすんとも言わなくなりました。
ちから一杯テンパりました。
故障の原因は突き止めたのですが、自分では修理不能と判断。すぐに代理店と連絡を取り、翌日、代理店に発送。
コーヒーミルが故障した日から戻ってくるまで5日。
神奈川→大阪の距離を考えればこれ以上の短縮はほぼ不可能と言えるくらいの速い対応を頂きました。
今も代理店のワタル株式会社大阪に感謝しています。
では、コーヒーミルが戻ってくるまでに私がしたこと。
①自宅で使っていたカリタ・ナイスカットミルをピンチヒッターとして持ち込む。→豆の挽き売りには全く戦力にならず。ナイスカットミルは、そもそもそういうミルではないので虐めてはかわいそうですね。
②故障したその日に2台目を発注。故障した日から3日目に届く。こちらもワタル株式会社大阪の迅速な対応のおかげ。
コーヒーミル1台での営業はもうこりごりです。
現在は、2台のコーヒーミルを運用しています。
そして平時は、1台しか使わないのはもったいないので1台は浅、中煎り用、もう一台は中深、深煎り用と使い分けています。
4年目にも故障しましたが、もちろん、何の心配も無く営業を続けることが出来ました。
店の運用に重要な役割を持つ設備については、万一に備え対応をマニュアル化しておくだけでなく、予算が許すのならば、設備に冗長性を持たせておくことをお勧めします。
とは言え、焙煎機を2台用意することは費用的にもスペース的にもなかなか難しいものがあると思いますが、コーヒーミルならできるでしょう。
コーヒーミルは是非2台揃えましょう。
ディッティングやマールクーニックのように、人気があるけど高額なコーヒーミルだけに囚われず、安くても必要充分な性能を持つコーヒーミルもたくさんあります。是非それらも含めて検討して下さい。
言えることは「あの店はマールクーニックだから行こう」なんて来店動機にはならないということ。もし来店客が2倍に増えるなら是非とも買わなければなりませんが、残念ながらそれはない。
そんなことを言いながら2台目もディッティングを買ってしまった私・・・。
同じものを2台並べた方が見栄えがするだろう、ただそれだけです。
ほとんど店主の自己満足です。
救いがありません。
そもそもディッティングやマールクーニックの定評なんてただのステレオタイプかも知れません。他に、より優れたコーヒーミルが在るかも知れませんよ。
当店のディッティングはすでに2回故障しています。
定評なんて鵜呑みにせずに、まずは自分の頭で考え、自分の目で確かめて選びたいものです。
ブランドよりも「実質、実用」で選びましょう。
もう一度言います。
コーヒーミルは2台揃えましょう。
サポートは謹んで辞退させて頂きます。お気持ちだけで十分幸せです。