祖母と手芸の話。
小学校卒業まで、母方の祖父母の隣の家に住んでいた。
この祖母は母方の祖母である。
このおっとりした祖母と私はとても相性が良く、よく祖母のところに入り浸っていた。
庭に咲く花の名前を教えてもらったり、一緒に焚き火をしたり。
植物を育てるのが好きになったのは確実に祖母の影響だが、最も影響を受けたのが手芸だ。
祖母はとても器用な人で、服でもセーターでも自分でなんでも作ってしまう人だった。
私のエレクトーンの発表会のワンピースも、楽器のカバーも、服もたくさん作ってもらった。
編み物も教えてもらった。
セーターなどの難しいものはわからなかったので、ひたすらマフラーとか膝掛けばかり作りまくっていたが、かぎ針編みも棒針編みも教えてもらってとても楽しかった。
それ以外でも、一緒にお夕飯の下拵えをしたり、おやつに鍋いっぱいのいちじくを煮る手伝いをして一番に味見させてもらったり。
おばあちゃんと過ごす穏やかな時間が、とても好きだった。
ただ、服作りだけはさっぱり理解出来なかった。
前見ごろとか図形から立体になるのが苦手過ぎて、教わりはしたがお人形の服を作るので精一杯だった。
そんな私だが、成人してからコスプレにハマり、手芸初心者向けの本を読み漁り自分で試行錯誤するうちに、今ではあんなに理解出来なかった服作りを楽しんでいる。
今や自分の好きな服やカバンを自作するのが、すっかり当たり前になった。
自分の好きな布で、自分の好きなデザインで服を作れるのはいいものだ。
本当に楽しい。
編み物から服作りから刺繍からビーズまで、今やなんでも好きだ。
私になくてはならないもの三つあげるとするなら、本と音楽ともう一つは確実に手芸だというぐらい、大体何かしら作っている。
惜しむらくは、私が服作りの楽しさを理解してから祖母に色々聞く機会が無かったことだ。
初めてやる時の疑問と、ある程度経験してからの疑問は全然違うと思う。
今日も次に何を作ろうか考えながら、おばあちゃんに難しい型紙の作り方を聞きたかったなぁ、と天国に思いを馳せるのだ。