見出し画像

#06 幻のいかなご

関西では、春を告げる風物詩に
いかなご漁がある。
この数年、不漁でなかなか手に入らなかった“いかなご”だったが、なんと、今年は奇跡的に手に入れることができた。

ザラメや醤油などが煮立ったところに、透明な‘新子‘をばら撒きながら入れていくと、いい香りが部屋中を立ち込める。
この匂いだけでも、ご飯が何杯も食べれそうだ。
水分がなくなるまで煮込み、手早く冷ませば、錆びた釘色に染まったくぎ煮の完成。
季節のご挨拶に少しずつ、ご近所さんにもお福分け。

今年は3/1に、いかなご漁の解禁というニュースで見たので、すぐに魚屋さんに
「入ったら、取っておいて!」とお願いをしたが自信がなさそうな声に、やっぱり今年も難しいかな~と思っていた。
しかし昨日に電話があり、駆けつけると
「ラッキーやで。
今年は今日で漁が終わったわ。
実質4日間しか漁に出られへんかったわ」と魚屋さん。
希少価値となってきた‘いかなご’と、巡り会えたことにガッツポーズ!
貴重な産物に感謝し、新子と1匹ずつ目を合わせ「ありがとう」と言いながら、丁寧に炊き上げた。

私が若い頃は、この時期になれば、店頭には、ザル山盛りのいかなごの新子が並んでいた。
焦らなくても、1カ月ぐらいは目にし、新子も日が経つごとに少しずつ大きくなっていくので、タイミングを見計らって、いい大きさのタイミングで買っていたのだが…
いつの頃だろうか、店頭で見かけなくなったのは。

1999年までは1万トンから3万トンも獲れていたのが、2017年には1/10の1000トンになり、2020年には147トン…
これでは一般の私たちの手元には入らないはずだ。

水産資源を残そうと漁獲量を調整し、解禁日や休漁日も統一して、来年に親となる新子を残しているそうだ。それで今年も4日しか漁を行えず、そのほとんども業者へと流れてしまう。
これは持続可能のため、やむを得ない。
海が綺麗になり過ぎ、リンや窒素などの栄養分が少なくなる「貧栄養化」状態あることで、餌不足となり、産卵も1/3も減っている。日本の少子化も大きな社会問題だが、いかなごまで少子化とは…
これはいかなごに限ったことではなく、プランクトンを餌とする海の生き物全てがこの状況である。
小学生の時に習ったように、山から流れてくる川が海へと合流している。森、川、海の関係は深い。山の荒廃や私たちが住んでいる陸での生活が起こす自然破壊の影響が海にも与えている。

気仙沼で牡蠣の養殖をしている畠山重篤氏は「森は海の恋人」をキャッチフレーズに、地元の漁師さんと、気仙沼湾に注ぐ川の上流の森に広葉樹の植林活動を続けている。

この活動にルイヴィトンも支援していると知って驚いた。
ブランドと牡蠣とは程遠い関係だと思うが、トランクの素材が木を使っていることやフランスブルターニュの牡蠣養殖の取り組みなど共通することがあり、東日本大震災後、支援を続けているという。
さすが歴史あるブランドは、垣根を超えた発想で貢献できる姿勢はカッコいい。

ずっと美味しい海の産物を食べ続けるには、上流の山の豊かさが大切であり、私たちも環境保全を考えた暮らしに変えることで、毎年季節を感じる美味しい食事がいただける。
自然の循環の中に私たちの生活が成り立っていることも踏まえ、地域の産業や文化を守りぬくことは、地域全体の課題として取り組まなければといけないと思う。

<iframe class="note-embed" src="https://note.com/embed/notes/n40a5ba58e28d" style="border: 0; display: block; max-width: 99%; width: 494px; padding: 0px; margin: 10px 0px; position: static; visibility: visible;" height="400"></iframe><script async src="https://note.com/scripts/embed.js" charset="utf-8"></script>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?