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乾いた人生に5色の薔薇を添えて⑤

今まであまり干渉するタイプでは無かった。

事務所の誰かがスキャンダルを起こしても、結婚しても、炎上しても、ドラッグで捕まっても、退所しても、自分とはどこか違う世界で起こっていることで、直接影響を受ける訳ではないし、今騒がれているだけで、時間と共に人々の記憶からどんどん忘れられていく。一つ一つにリアクションを取ったところで事実は変わらないと、偉そうに一歩引いた視点で見ていた。受け入れない訳ではない。と思っていたがこう書いてみて、そんなことに感情を乱されるのが怖かったから干渉しない自分を作り上げていたのかもしれないとハッとした。何でものめり込んでしまうと、抜け出すのが大変だから。

King & Princeの岩橋くんが活動休止になった時も、デビューしてこれから勢いがつく時に、本人は相当辛いだろうなと心を波立てずに独り言のように思っていた。事務所としても期待を掛けてデビューさせた子達が半年ほどで活動休止になるのは痛手だっただろうに前向きな決断をしたなと、どっかの評論家気取りのような感想を抱いたくらいだった。

まさか自分の番が来るとは思っても見なかった。

前日まで、昼間と夜に番組に出ていたのに?自担の誕生日なのに?

朝からニュースを見た私はあまりに、あまりのショックに放心状態となった。

大袈裟に思うだろう。今まで体調が悪くても、失恋した時でも、どんな辛い時でも食事だけは欠かさなかった私が、食事が喉を通らないなんて。いつもみたいに他人事と思いたかった。でも、仕事中も頭から離れず、私の日頃の行いが悪いから、バチが当たったんだ、と被害妄想極まりない思考が頭を駆け巡っていた。

webサイトには本人直筆のメッセージが掲載された。

一ヶ月ほど前から不調が続いていた事、診断結果にショックと悔しさを隠しきれない事、今できることは治療に専念する事。

そして最後に、「愛するファンの皆様、各関係者の皆様、そして家族のようなメンバー、本当に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、周囲の人への迷惑を考えたメッセージを残した。

丁寧に、ゆっくりと、一筆に重量オーバーになる程の思いを乗せて書いた彼の言葉を何度も何度も目に焼き付けて、自分の幼さと無力さ、そして彼の偉大さを痛感した。


続く

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