古代史構想学のすすめ

少し学芸員の話題から離れて、古代史学習の話をしてみます。

仕事をしながら始めた古代史の勉強。ともに古代史を学ぶ先輩が私たちの学びを「古代史構想学」と名付けました。私も先輩も法学部出身なので古代史や考古学は全くの素人です。そんな素人の私たちが曲がりなりにも真面目に取り組もうとしている以上、それを学問と称してやろうよ、ということで「古代史構想学」となった次第です。空想でも妄想でもなく構想です。ディテールの研究は専門家に任せる。その専門家の研究成果を拝借しながら自分の考えを論理的に組み立てて古代史の骨格を構想する。それが「古代史構想学」です。

たとえば、邪馬台国はどこにあったのか。最初は根拠がない中で曖昧ながらも自分の考えが浮かびます。かっこよく言えば「仮説」というものです。その仮説をもちながら、様々な情報を集めます。

ひとつは、事実を集めます。どんな遺跡がどこにあるのか、どんな遺物が出たのか、歴史書にはどう書かれているのか、これらの事実に対する評価は人それぞれということになりますが、事実そのものは動くことがないので、まず事実を確認します。遺跡や遺物の確認の方法は書籍やネットで調べることと、実際に現地を訪ねること、そして歴史博物館などで実物(複製の場合もあります)を確かめること、です。歴史書の場合は、実際にそれを読むことですね。中国の史書も含めて原文にあたりながらも現代文に訳されたものを読みます。

もうひとつは、歴史学や考古学など専門の研究者、歴史作家、郷土史研究家などが発表されている書籍、論文、ブログなどを読みます。あるいは、仮説がないままに読みあさっているうちにアイデアが浮かぶこともあります。いずれの場合も心がけていることは、そういう先学の成果に対して決して批判的な気持ちを持たないことです。反論もしません。むしろ逆に、自分の仮説に使えそうな情報を探しながら読みます。ある人と別の人が対立する説を出していたとします。私はそのどちらからも自分の仮説に適合しそうな部分を取り出します。ときにはほとんどパクることになる場合もあります。

ほぼ思いつきのアイデアであった仮説を、こうして集めた材料をもとに文章にしていきます。筋の通った話になれば完成です。結局は先学の成果と変わらない結論になることもあれば、いわゆるトンデモ説になることもあります。その結論も大事なのですが、それ以上に大事にしたいのは、その結論を導き出したプロセス、いわゆるロジックです。ここにオリジナリティを出したいと思っています。

邪馬台国の例でいえば、私の結論としては「邪馬台国は大和の纒向にあった」という、いわゆる邪馬台国畿内説になるのですが、その結論に至った考え方は、少なくとも私がこれまで読んできたものには書かれていませんでした。(そのロジックはまた別の機会に紹介したいと思います。)

古代史構想学は、①先学の成果のいいとこ取り②事実を確かめる実地踏査、この2点によって成り立っています。これによって、推理小説のような謎解きの面白さと、パズルを完成させたときの達成感、その両方を味わえます。古代構想学という名のもとに取り組んでいくと学ぶことがどんどん楽しくなっていきます。いつか「古代史構想学」という学問分野を確立したいという密かな思いも持ちながら取り組んでいます。


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