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「わかりやすさ」をどこに置くか

 物語を書き上げてみて、明確にわかったことは、私の作品は難しいということだった。「理解するのが難しい」というのと、「一般ウケが難しい」というのの2つの意味が共存している。

 私としても、あまりに哲学的すぎる、理解できない自分がアホに思えてくる作品は好きじゃないけれど、わかりやすい作品の方がもっと好きではない。「わかりやすい! 作家が何を言いたいかが明確だぁ。この文章がそもそも作家の言いたいことだぁ」みたいな文章に出会うと、霧深い山に逃げ出したくなる。それだったら描写だけがとにかく上手い文章を読んでいたい。
 「うわぁ、難しい、全然わかんねぇ。わからないのにおもしろい!」と感じる読書体験が一番好きだ。8割わからないけど2割の魅力がとても輝いて見える。そんな作品を作りたい。

「わからない部分がほとんどだけど魅力的だ!」「なんだかよくわかんないけど、とにかくおもいろい!」と言われたい。言われたんだからしょうがない。そこでもっとわかりやすくしようとか、ブレると迷いだすから考えない。
ここまで目標を削ぎ落とすことができたと思おう。

 現在の活動記録において、「わからない、難しい」と明確に言われることはできた。「わからないけど、面白い作品」を作りたいという、片方の資質は備わっていると解釈した。

 「面白い」とか「魅力的」と言われる部分を補っていくために、当面の目標は作品のビジュアライズだ。

 「もういっそ漫画化してみよう」と決心したのはこの数日だけど、多分、一ヶ月くらいは無意識下で心の準備が始まっていた気がする。作品制作とは別に、これからどんな仕事をしていくか考える一環で、イラスト制作の復習をしていて、「キャラクターデザインてどんなもんかな」と一歩踏み込んで考えたくなっていたのだ。

 イラストレーターのくるみつ氏による技法書が気になったのも、帯に「ド直球で正拳突きなデザイン」だと、さいとうなおき氏による推薦が載っていたからに他ならない。

 わかりやすさコンプレックス、というより、わかりやすさに興味しんしん、強ぇ敵があらわれて、オラわくわくすっぞ。

 技法書は1個でも2個でも学びがあれば儲け物だが、特に巻末のくるみつxさいとうなおき両氏の対談が、イラストの魅力の出し方とか上手くなる秘訣とかがじっくり語られていて、それだけでも読んでみてほしい。

 下記のYoutubeは、以前漫画作品を描いていたときにも目にしていたのだけれど、今また視聴すると、当時より言ってることがよくわかる。

 漫画作品を描いていたのは、3年ほど前だ。当時は、また描ける、作れるということがとにかく嬉しかった。自分はどんな作家になっていくのか、まだまだ未知数だった。作品を世に問うことは脇において、自分の中身を全部出し切ってみたかった。ビッグバンのなかであらゆる可能性を模索するという時間こそが重要だった。

 手前味噌ではないけれど、私はテーマ性にはわりと自信がある。当時から変わっていない。おそらくずっと変わっていない、本来持ち合わせた部分なのだと思う。世の中にはいろんな種類の才能があるとして、テーマへの自信、目に見えないものを信じる気持ちの強さ、持久力は私の才能の側面を成していると思うから、大事にしなければいけない。

 今の私に足りないものは「わかりやすさ」、つまりは「より多くの共感を得ること」だと思っている。

 なんか見たことがある、でもちょっと新しい。
 大好きだった、夢中になったあの物語の延長線上にあるような雰囲気。
 描かれてはなかったけど、残像とか自分フィルターでそう見えてた気がする。
 あの作品のあの場面をもっとじっくり、大きくしたり小さくしたりして見たかった。
 あのキャラクターと、もっと長く冒険していたかった。
 あの幻想の世界に住みたかった。

 オリジナル作品は、オリジナルというけれども、ほぼ二次創作に近い。鬼滅の刃だって、『音速ジョジョの奇妙な冒険』に見えなくもないわけで。完全に新しいものを生み出すというのは、不可能でもあるし、驕りとまでは言わないけど、先人たちへの敬意というか、挑戦心というか、創作における気負いは大きかったかもしれない。もっと省エネで描きたい。

 ①共感を生む作品を作る
 ②省エネで作り続ける

今やりたいことである。



2024年8月8日木曜日朝8時から、漫画エスキャトロギヤのリリースを開始します。

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