女性は文学世界をどのように作り上げているか
女性の文豪
文豪のことを考えていて、私は女性なので「女性の文豪を挙げられなかったな……」と思わずにいられない。
女性文豪は母数からして多くない。私もまだちょっと、どうやって歴史の中の女流文学世界にランディングすればいいのか決めかねている。悩まないでとにかく面白い、と思える作品も当然あるけれど。
過去の(現在もおおかたそうだけど)知識人は男性が大半だ。「当時の文豪たちを評価したのは、ほとんど男性だったのではないか……?」と頭をよぎった。場合によっては……私が苦手な芥川龍之介や太宰治(ついでに三島由紀夫あたり)は、男性による男性のための文学である可能性がないと、誰が言える?
審査員の男女比が5:5での評価なんだろうかと考えた時、男女比9:1とか、100:1になってはいないかと思ったのだ。あるいは女性比がゼロかもしれない。現代でさえ、文学賞の審査員に女性がいないか、やっと一名いる状態だったりする。
例えば、明治〜昭和年代あたりまでの名作があるとして、女性Aがそれらの作品をなんだか好きじゃないとする。好きじゃない理由は、「名作」とされる物語は、男性が選んだマッチョな作風だからだとする。それが理由で女性は「自分は文学が好きじゃない」と思ってるとしたら、もったいなくはないか? ということだ。
もしくは、ある程度自分で本を選んで読むことが習慣づいている女性Bは、自分が選ぶ本は「名作」じゃないという理由で、自分の読書体験はちょっと劣ったものだという認識をしているとしたら、それももったいない。
どうしてもフェミニズムの文脈が無視できない流れになってしまうけど、読者を創出するという観点でも、考えてみるのも無駄じゃない。書く人は、読む人がいて初めて成り立つのだ。
女性が作る文学の世界
以上のような理由で、「女性は文学世界をどのように作り上げているか」を知るにあたり、「女性による文学賞」「女性による書店」などを調べてみた。
R-18文学賞
20年以上前から存在する、女による女のためのR-18文学賞。応募者も選者も女性限定。
『成瀬は信じた道をいく』で本屋大賞を受賞した宮島未奈氏も、2021年に「ありがとう西武大津店」で当賞を受賞していて、なんと大賞・読者賞・友近賞受賞というトリプル受賞だったそうだ。
R-18文学賞のサイトのいいところは、受賞者のその後の活躍がまとめられているところにもある。
女性による書店
まっさきに上がってきたのは、女性が経営する女性の本屋の紹介記事だ。都内の書店が3店、私の居住地札幌からは「かの書房」がピックアップされていた。
新井賞
知る人ぞ知る、かもしれないけれど、書店員、新井見枝香氏による「新井賞」も、文芸界の評価軸に新風を吹き込んでいると言える。
大阪女性文芸賞の休止
女性による文学賞が休止してしまったという苦いニュースもある。有料記事なので途中までしか読めなかったが、男性の評価者によって女性文学で描かれる感覚が理解されなかった、というのは実際にあったそうだ。
読者は信じた道をいけ
物語を紡ぎ出す人が女性だろうと、男性だろうと、どのような性自認をもった人であろうと、いいものはいい、という事実が変わることはないだろう。
女性にしか書けない感性の文学が受け入れられていくということは、男性だって、「男性らしさ」に抑圧された自己を、文学によって解放できるフィールドが広がっていくということにつながる。つまり文学はまだまだ新しく、面白くできるということだ。
というか、文学の歴史はつまるところ、どれだけ先人が文章表現の限界を広げてきたかにある。
「新井賞」の実績によって、全国に「個人文学賞」が広まっている。「自分が面白いと思えば、それでいい」という勢いは、読書に対するハードルを下げるだろうし、「面白い」と声に出す人が増えるだけで、文学の世界も盛り上がるだろう。
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