見出し画像

4つのタイプ別演出法

前回の記事で、憑依・出産・合体・建築型の分類と説明をしました。
おそらく前記事を読んでいないとわかりにくいところもあるかと思うので、
もしこの記事を読んでいてわからなかったら飛んでみてください。


4つのタイプはそもそもの作り方が違う

核が内側・勝手に動く→憑依
核が内側・自分で動く→出産
核が外側・勝手に動く→合体
核が外側・自分で動く→建築

という分類分けをしました。
言わなくてもわかっちゃう方もいるかと思うのですが、
この4タイプ、役との向き合い方が根本的に違います。

私がそのタイプと出会った時にどんな演出をするのかをまとめたものです。
「へーこんなこともあるのねぇ」という感じで心理テスト的に読んでくださいませ。


【建築】材料を一緒に探そう。美しさは君の中にある。

画像1

核が外側・自分で動く建築型は、職人気質の人が多い印象です。
とことん材料を探す。
リサーチして、考えて、ちょっと作って全部崩し、一気に図面を書きあげて工事する。

このタイプ、実は演出的にはもっとも安心して演出できるタイプです。
基本情報は感情ではなく理論
核を作るにも役を表現していくにも、話し合いや意見を重ねて作り上げていく感覚があります。

役者が建築士ならば、演出は現場監督。
建築士が美しいと思う表現や技法、思想などをいかにそのまま再現するか現場監督は挑戦します。

建築型の役者は「美しい」と思う感覚を持っている人が多い印象です。
単なる美だけではなく、醜さすら美しく見せるというか。
作り物だけど思わずひれ伏したくなる荘厳な建築が見えた日には
演出は一人立ち飲み屋で祝杯をあげています。

このタイプにはとにかく情報を与えます。
それは世界情勢のようなものからパーソナルな気持ちまで。
とにかく核を作れそうな情報を片っ端から与えて、設計図を見て、意見して。
設計図である核が完成したら、もうあとは工事をして実際に作るだけ。

建築タイプに大切なのは「情報」なのです。


【合体】役との境界線を探そう。自分の中に役を取り込もう。

画像2

核が外側・勝手に動く合体型は、自分探しから始まります。
自分のアイデンティティーや思想、思い、好きなこと、嫌いなこと。
それらを言語化する作業をします。

そして自分の輪郭がなんとなく掴めたら、
今度は役の輪郭を作っていきます。
自分と対比をしながら、役について思考を巡らす。
自分の体を動かして、役の輪郭を手探りで掴んでいきます。

役の手を握れたら、その役を体の中に引っ張り込む。
自分の体の中に役を入れるです。
二重人格みたいになるけど、主人格は役者です。

あとは役に体を預け、自由に動いてもらいます。
役者は役を監視するだけです。

合体型に大切なことは「境界線」です。
自分と他人の境界線を認知し、そこから他人である役を形作る。
情報も必要だけれど、境界線を作ってなくすことでより強固な合体ができるようになります。

合体が始まったら、役者に役を制御する術を話し合っていきます。
役は基本的に勝手に動き回るので、進みたい方向を役者と一緒に考えて進みます。

合体型は、自分と役の境目がなくなると憑依型に近くなってしまうので気をつけたいところです。


【出産】難産しないように、事前準備をしっかりと。

画像3

核が内側・自分で動く出産型は、難産しないように事前準備を怠らないことが大切です。
ここでいう事前準備は、子供である役が自分の意思を持って動き出したらどういう風にアプローチすれば良いのかということです。

子供は、時に大人には理解できない行動をします。
さっきまで笑っていたのに急に泣き出したり、手を繋いで歩いていたのに突然走り出してしまったり。

役者にもこの現象が起きる時があります。
今まで何も思わなかった台詞に突然涙してしまったり
自分の意思とは違う感情で動いてしまったり。
これは子供が親には理解できない行動をした時です。

そんな時、親である役者がすべきことが
「自分は何を大切に子育てをしているか」ということに立ち戻ること。
これがに当たる部分です。

その核を見て、自分の子育てが間違っていないか考えます。
間違っていたら自分にとっての正解を教える。
間違っていなかったら、子供の自由にしてみるのもアリです。

核がしっかり見えていないと苦しくなってしまう出産型。
子供を産む前に、事前準備をしっかりすれば、楽しい子育てが待っています。


【憑依】神のみぞ知る世界に行こう。

画像4

核が内側・勝手に動く憑依型は、私たち子羊にはどうしようもありません。
憑依型はある時突然役が降りてきます。いわゆる天才タイプです。

憑依をさせるためには、核を作る必要があります。
内側と表記していますが、正直内側なのか外側なのかはっきりわからない人もいます。
ふと電車の車窓から見た景色や小さなこと踏んでしまった綺麗な花、
最近言われた言葉やリツイートで回ってきた呟き。
何が起爆剤になるか検討もつきません。

けれど、確かに言えることは
憑依型は役になる時、その時のことを忘れてしまうことがあるのです。
舞台にいる記憶がない、今何してた?みたいな。

その状態を作る練習をします。
その練習は……人それぞれです。
全然わかりません。サンプルも少ないし共通項が見つからない。
だから、一番稽古をしなくてはいけないタイプだとも思っています。

正直、演出ができることが一番少ないタイプです。
神頼みです。いつでもできる役者がいるならイタコになれる。

憑依型は、時が解決するわけでも妥協ができるわけでもないので
自覚がある人は自分なりの役の下ろし方を研究して演出に伝えてください。。。


4タイプ、できることもアプローチも違う。だからこそ面白い。

画像5

4つのタイプは全て考え方や準備、アプローチが違います。
だからこそ秀でるところや補い合える関係ができます。

私は配役する時に(芝居にもよりますが)多くの場合タイプをばらけさせて配役をします。
いろんな役者がいるからこそ、いろんな役が描ける。

ダブルキャストやトリプルキャストの時も、同じ役に同じタイプはあまり配役しません。
その方が役に対して違うアプローチができて、同じ作品でも核が違うので異なるメッセージになるのです。

このタイプ分けは私の独断と偏見なので
「これは違う!」とか思っても、私は「そうなのねー」と聞き流すので悪しからず。
自分の推しの役者さんのタイプを考えるもよし
役者が役作りの時にへーと思うでもよし。

下記は私がこのような考えに至る際にヒントになった本たちです。
気になる方は読んでみてね!

何かの参考になれば嬉しいです。


いただいたお金は!!!全て舞台裏のためのお金にします!!!!殺人鬼もびっくり☆真っ赤っかな帳簿からの脱却を目指して……!!!