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北海道で中古住宅を買うのが怖い理由

オンナひとりと犬3匹、住む場所を探していたとき、
中古住宅の購入を考えました。
マンションのほとんどの物件では、規約で犬3匹とは暮らせないとわかったからです。


でも結局は、ローコスト住宅とは言え、新築することを選びました。


理由はシンプルで、


中古住宅も、新築ローコスト住宅も、
必要な費用に大差がなかったから。


自分としては大金を投じるのに、
脆弱な中古住宅を購入するのに抵抗があったから。


世の中では、中古住宅市場を盛り上げようって気運なのは知っていますが、
北海道(もっと言えば雪国地方)では、
もうちょっと繊細な事情があるように感じるのです。


北海道は、寒い

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何だか、身体が冷えて寒く感じる
じゃないです。


北海道は、物理的・客観的に寒いです。


道内では比較的過ごしやすい気候の札幌周辺でも、
12月半ば~3月頃までは雪が積もり、
マイナス気温の毎日です。

マイナス10℃以下だって、
驚くようなことではありません。


旭川以北の道北や、日本有数の寒冷地帯の道東では、
マイナス20℃の日もあります。

深呼吸すると、咳き込んだり、腹筋がこわばるレベルです。


断熱材のない中古住宅など、論外です。


断熱材が普及したのは、そんな昔じゃない

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そんな極寒の地、北海道ですが、
断熱材が施工された住宅が普及したのは、
実はそんなに昔ではありません。


契機は1973年頃です。
オイルショックが起こり、灯油代が2倍以上に跳ね上がったあの時代です。


寒いなら、ストーブがんがん焚けばいいべや

そんなことは、経済的に難しくなったのです。


当時多かったのは、
断熱材に配慮のない本州の家と同じような仕様の住宅や、
「北の国から」で登場するような手作り感ある木造小屋、
コンクリートブロックを積み上げた防寒住宅


そこへ、当時やっと市中で安定供給されはじめたのが、
断熱材のグラスウールでした。


安くて、施工しやすいグラスウール。

これを壁の中にパンパンに詰め込み、
「暖かい木造住宅」として売り出した工務店が登場し始めたのです。


それにしても、1973年って。
まだ50年も経っていません。


新しい工法・施工が安定するまで、
数年から10年以上かかります。

とすると、築40年より前の家は、
充分な断熱材が施工されていないかもしれないのです。


断熱材だけでも、ダメ!

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断熱材はしっかり入ってます、大丈夫!

これがですね、
全然大丈夫じゃないかも、なんです。


グラスウールが普及し、断熱材施工も当たり前になりつつあった1970年代末期。
北海道の住宅業界に激震が走りました。


なんと、築数年の新しい住宅で、床が抜け落ちるという事態が続出したのです。
被害住宅は、札幌市内だけでも、200軒以上に上りました。


それが、ナミダタケ事件です。

ナミダタケとは、暗闇・湿潤・冷涼な環境を好み、木材で繁殖するキノコの一種です。
これが床下で大発生し、建材を破壊し、ついには床が抜けてしまったのです。

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※床下で大量発生したナミダタケ:画像はお借りしました

ではなぜ、ナミダタケがすくすくと成長できたのか。
助けとなったのは、グラスウールにびっしょりと溜まった結露でした。
この結露が木材を濡らし、そこにナミダタケが住み着いたのです。


どうして、断熱材のグラスウール内で空気が結露するのか。
当時は、住宅の気密性能など、全く顧みられていなかったからです。

その結果、室内の暖かい空気がグラスウールに浸透し、それが外壁側に近づくにつれて冷やされ、結露したというわけです。


このことをきっかけに、
室内は気密性の高い空間に施工し、断熱材へ湿った空気が流れ込まないようにする
断熱材と内壁が接する場面では、防湿処理をする
計画換気で、よどんだ空気が溜まらないようにする

つまり高断熱・高気密がセットで語られるようになったのでした。


え。
ということは、1980年代より以前の中古住宅は、
断熱材が不十分
気密性能が不十分
既にナミダタケがいるかもしれない

こういうことでしょうね。


もちろん全てではありませんが、調査が必要です。

そして調査の結果、
補修が必要となると、結局かなりの費用が必要なのです。


一方で、
これは問題なし!大丈夫!
こんな中古住宅は、新築ローコスト住宅と大差ない値段です。


ちなみに築年数の浅い中古住宅も、
新築ローコスト住宅と比べて、
極端に安いわけではありません。

ローコスト住宅という分野はまだ新しく、
中古住宅市場には、あまり登場していないのかもと思います。


寒い北海道です。
断熱材のない家は、生命にかかわります。
断熱材は入っているけど、気密性の低い家は、早晩の倒壊リスクがあります。


もちろん「そんな神経質にならなくても」って話かもしれません。
でもね、気分の問題って、案外重要です。


自分としては、そんなギャンブル性の高い話に、
大金をつっこむ気にはなれなかった。

それが中古住宅の購入をあきらめた理由でした。

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