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【超ショートショート】(141)~華麗な恋の作法~☆CHAGE&ASKA『標的(ターゲット)』☆

指を鳴らす3人組のレディたち。
ダンスのステップで近づいてくる。

私は人様の裏を覗き見のが仕事、
しがない探偵のひとり。

今日もある男の依頼で、
ひとりの女を尾行して1週間。

女は、日中の事務の制服とは違って、
なんとも妖艶な背中を惜しげもなく、
ヒップまで見えそうな、
ハリウッド女優張りのドレスで、
週3日通うお気に入りのbarへやって来ていた。

私はbarの隅で、女に気づかれないように、
いつものジントニックを飲んでいた。

店内は、
クラシカルな音楽が流れる中、
突然、「フーッ!」と、
女性コーラスの声がした。

おつまみを運んできた店員に、
「今のコーラスは?」と尋ねるが、
「この曲にはコーラスは入っていませんよ(笑)」

では、今のは一体何の声だったのか?

私は、
そんなつまらない声の正体に思いを馳せていたら、
探偵業を忘れて、普通に店内を見回し、
尾行中の女と視線が合ってしまった。

なぜか、女は私を見ながら笑っている。

しかし私は仕事中。
気配を消すことに意識を向けた。

だが・・・
「こんばんは!ご一緒してもよいかしら?(笑)」
と女が私に声を掛けてしまった。

私は疑われないように、
一般のサラリーマンを装い、
「どうぞ(笑)」
と、女を横に座らせた。

女は、私の瞳を覗き見るようと、
何度も何度も上目使いし、
その度に私はその女の瞳から逃げる、
鬼ごっこがはじまった。

女が、鬼ごっこに飽きた頃、
私に背中を向けて、
barの音楽でダンスする人々を眺めた。

私が、女の艶やかな背中に
次第に釘つけになると、
またあのコーラスの声がした。
「フーッ!」と。

その声に、私の鼓動が高鳴り、
額にスーッと一筋の汗が流れると、
また「フーッ!」と。

女はダンスする人を眺めながら、
音楽に身体をゆらしはじめる。
すると、シルクのドレスが
女の肌を行ったり来たり、
私の探偵心をくすぐるように、
覗くことを誘う。

「フーッ!」と、
もう何度も言われていたが、
気にもせず、
女に見惚れていく自分を押さえるのに、
すでに必死になっていた。

女の尾行を依頼してきたのは、
女の父親で、一流上場企業の社長。

「もし、君が娘に手でも出したならば、
どうなるかわかるな。」

そう依頼されたときに、
脅されていた。

しかし、どんどん女に心が支配されていく。
もう止めることができないくらい、
女の背中姿に惚れてしまう。

「どうにかして女の心を奪えないか?
せめて今夜だけでも・・・」

そんな下心と会話する私に気づいた様子で、
女が身体の向きをテーブルに戻し、
汗だくの私を見ている。

「どうしたんですか?」

「いや、ちょっと飲みすぎたみたいで(笑)」

「でも一杯しか飲んでないですよね!
ひょっとして風邪でも引いたのかも。
今から私の部屋へ行きませんか?
自宅まですぐですから。(笑)」

すると女は、
自分のコートと私のコートを店員からもらい、
私に女はコートを着せ、
barを一緒に出るとタクシーに乗った。

そして、
超高層マンションの最上階へ。

見渡す限りの百万ドルの都会の夜景に、
女は、ワイングラスと赤ワインを、
私のいる窓辺まで運んできた。

「やっとふたりになれた!(笑)」

「えっ?」

「あなたは私に惚れたでしょう?(笑)」

「いいえ。(汗)」

「うふふ!(笑)嘘言ってもダメよ!
その尋常じゃない汗が、もう認めているわ!(笑)」

女は、夜景を眺めながら赤ワインを一口、
また一口と飲み干す。

そして、
赤ワインの酔いの力を借りるように、
私の唇に、
赤ワインの香りのする女の唇を、
女は預けた。

私は、
仕事と恋の板挟みで、
預けられた女の唇を待たせていると、
時間切れとばかりに、
赤ワインの香りが私の鼻先へ走った。

ふたりが唇を別れさせると、
もう女は月明かりのドレスを
フワッとまとうだけの、
麗しい姿になっていた。

私がその姿に、
ますます見惚れていると、
そっと女は私の手を取り、
まるでドミノを倒すように、
女は私の心を「ポンッ!」と押し、
私が次のドミノに当たるように、
上手に倒された。

そのまま女と私は、
そのドミノのゴールを見届けるように、
月明かりの届かない、
夜の闇の中へ。

私の汗を半分、女にあげながら、
もうどっちの汗だとかわからないくらいに、
私と女がまるでチョコレートを溶かすように、
ふたりはひとつになる。

朝まで湯煎されるように、
絶えることのない恋の熱に、
夢のように溶け続けた。

私が女より先に目覚めると、
夜のことが嘘のように、
女の寝顔を見て、
恋の熱は「フーッ!」と・・・

消せるのか?
消されたのか?
またもっと熱くなったのか?

私は、目覚めたばかりの女が
最初に話した言葉で、
私の気持ちを確認できた。

「フーッ!(笑)」


(制作日 2021.10.22(金))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1984年10月25日発売 シングル
CHAGE&ASKA『標的(ターゲット)』
発売からまもなく「37周年」になります。

今日は、この曲を参考に書きました。
書いてみても、その前からも、
ちょっと恥ずかしさが先行中。
なので、
歌詞を少し書いておくだけにします。

~~~~~
(1番)
ダンス気分のままで
指を鳴らして
古井を引き寄せる
慣れた手順

誘われ上手な
あなたの背中
ほんのり紅い
すべてが見たい

感じ合えたなら
二人 Mellow in the night
絹の夜をほどく 夢を見る

SALIN' 何処までも
SALIN' Oh just tonight
盗んだ心 返さない

LOVIN' いつまでも
LOVIN' In your heart
今夜の標的は 外せない 外せない
~~~~~

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA
『標的(ターゲット)』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 平野孝幸
(1984.10.25発売)


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