【超ショートショート】(48)~あの公園、すれ違いを恋想~☆MIDNIGHT 2 CALL☆MOON LIGHT BLUES☆
左から右に点滅していく
ヘリコプターのライトの奥、
夜空のキャンパスに涼しげに浮かび上がる
東京スカイツリー。
私の震える手には、
シャンパングラス。
「さぁ飲んで!」
言われるままに初めてのシャンパンを一口。
あれは、
私が近くの公園で1人、遊んでいたとき、
お兄さんグループが公園に来て遊んでいた。
「ねぇ一緒に遊ばない?(笑)」
そう遊びに誘ってくれた
瞳がまん丸の可愛いお兄さん。
お話すると、
私が小学1年で、
お兄さんは小学6年生か中学生だった。
「この浅草ビューホテルから見るスカイツリーも、
俺好きなんだ。」
私は初めての浅草ビューホテル、
26階のレストラン武蔵。
私が高所恐怖症だと知っているのに、
わざと連れてきたの?
怖がる私を、
瞳をまん丸にして笑う人。
(私)
「ねぇ、憶えてる?
昔、◯◯公園で小学生の女の子と遊んだの?」
「出逢った時に、その話したじゃないか?
またするのか?」
この所、素っ気ない返答ばかり。
優しさで、
このレストランに連れて来てくれたのか?
それとも、
長い出張のお詫びに連れて来ただけなのか?
彼が出張してすぐ、
会社の仲間と飲みに行った。
(後輩)
「先輩。私見ちゃったんですよね!
先輩の彼氏さん、今本当に出張しています?」
(私)
「どういうこと?
ちゃんと出張しているはずよ!」
(後輩)
「きのう、仕事の帰りに、
銀座のデパートに行ったんですけど、
そこで、仲良く腕を組む男女がいたんです!
女の人は、若くてモデルさんみたいにきれいな人。
男の人は、彼氏さんでした。」
(私)
「いや、あなたの見間違えよ!(焦)」
(後輩)
「いや、見間違えていません!
あれは絶対に彼氏さんでした。
私、心配になって、しばらく後をつけたんです。
そうしたら、
東京駅近くのホテルに二人で入って行きましたよ!
これが証拠です。」
後輩は、話した様子すべてを撮影していた。
(同僚)
「どれどれ?私にも写真見せて!(笑)
この人じゃないわ。
最近付き合いだした人かもね。」
(私)
「それは、どういう意味?」
同僚は、
他にも何人もの女性とデートする彼を
目撃していると話す。
(同僚)
「本当にあなたと彼は恋人同士なの?」
(後輩)
「彼氏さんに
〈愛してる〉〈好きだ〉って、
ちゃんと言われたことあります?」
(私)
「・・・・・(困)」
最後のデザートを食べ終えると、
「じゃあ部屋に行こうか?(笑)」
(私の心の声)
「他の女の人も、こうしてデートしてるのね。
本当は誰でも良かったの?
あの時、しつこく迫って来たのは、
嘘だったの?
前に付き合ってた人が訪ねて来たときも、
〈俺の女だ!
こいつとは、一生付き合っていくつもりだ!
だから、もうここには来ないでくれ!〉
そう話したのは、なんだったの?
なんか、私、バカみたい!
あなたの言うこと全部信じて待っているんだから。
あなたにとって私って何?」
「じゃあ、シャワー浴びてくるよ!
それとも一緒に入るか?(笑)。」
(私の心の声)
「なんか悲しくなってきた。
ただすればいいと思ってるの?
女をなんだと思ってるの?
でも、仕方がない。
好きなんだから。
あの公園でナンパされた時から嬉しくて、
公園で別れる時、
勇気を出して、
〈お兄さんの将来の恋人にして!〉って告白したら、
あなたは、
〈じゃあ、きれいな女の人になっていたら、
お嬢ちゃんを迎えに、お兄さん行くから、
待っててね〉
その話を、
大人になって再会して話したら、
全く憶えてなくて、ショックだった。」
「あのさ~、また明日から出張なんだけど。」
悔しくなって、ベッドの中で泣いてしまった。
その様子が、いつもと違いのを、
後から話していたけど、
この日のキスで異変を感じていたらしい。
「全然嬉しそうじゃない」って。
翌朝、
あの人が起きる前に、
前の日に書いた手紙を残して、
永遠のお別れのつもりで、
ホテルをあとにした。
はじめの頃、
多少の浮気は許すつもりでいたし、
何度も許してきたつもり。
だけど、
もう我慢の限界だった。
いつもいつも子供扱いするのが許せなかった。
いつもいつも大人の女を誉めるのが悔しかった。
僕より10コも下の彼女が、
何を怒って別れを選んだのか?
今も僕にはわからないでいた。
彼女と連絡が取らなくなってから、
彼女と僕の共通の友達に、
事情を相談して、
彼女の様子を確認した。
(僕)
「彼女と連絡が取れないんだ。
電話も繋がらないし、部屋も引っ越しててさ。
彼女に何があった?」
(友達)
「何も知らないで別れたのか二人は?」
(僕)
「別れてないだろ?まだ・・・」
(友達)
「そう思っているのは、お前だけだよ!」
(僕)
「・・・・・(困)」
(友達)
「お前さ、彼女の周りの人から、
何と噂されているか、知らないのか?」
(僕)
「知らない。噂って?」
(友達)
「お前さ、何人の女性とあちこちのホテルに
出入りしているだろう?
それを彼女の周りの人が、結構目撃していて、
証拠もあるらしいんだ。
お前、浮気してるのか?」
(僕)
「はぁー、浮気じゃないよ!
お客さんだよ。ホテルに行くのは、
打ち合わせのため。
お客さんは地方から来るから、
それぞれが宿泊するホテルに
送り届けているだけだよ。
東京に不馴れで、でも観光したいって言うから、
いつもいつも東京を案内してるんだよ!
ただそれだけだ。」
(友達)
「じゃあ、浮気は?
一度も無いって言えるのか?」
(僕)
「浮気は一度もしたこと無い!
俺には彼女だけなんだよ!
お前も高校の時、あの公園で小さな女の子と
遊んだの憶えてるだろう?
あの時、
〈俺はこの娘と結婚する!〉
そう決めたんだよ!運命だよ!」
(友達)
「小学生に恋したのかよ!(笑)」
(僕)
「うるさいよ!可愛かったんだから、
仕方ないだろう。(笑)」
友達も彼女の家族も、
彼女の連絡先も住まいもわからないと、
僕が彼女を探す術がなくなってしまった。
僕が40歳を過ぎる頃、
秋風に漂う金木犀の香りが、
独身男の部屋までも甘くする夜。
電話が鳴った。
(僕)
「はい・・・・・」
なかなか相手が話さないので、
切ろうとしたその時、
「もしもし?」
(僕)
「もしもし?・・・・・元気か?」
「・・・・・」
(僕)
「どうしたんだよ!急に電話してきて。
何かあったのか?」
「・・・・・(涙)」
(僕)
「今、どこにいるんだ!東京か?
付き合ってる人いるのか?」
「・・・・・(涙)」
(僕)
「泣いてちゃ、何も分からないじゃないか?
俺、お前のこと、全然怒って無いから、
相談くらいなら乗るから、
もう泣いてないで話してみろ!なぁ!」
「・・・・・うん。」
別れて、もう10年が経っていた。
僕もすっかり中年らしい雰囲気がするようで、
あれから、彼女らしい彼女一人も出来なかった。
職場では、みんなに、
老後はお一人さまなんですからって、
からかわれてばかり。
男だって、内心傷ついているのに、
20代の女子は、ずけずけと、
僕の悩みを突いて来る。
「もしもし、私・・・ごめんね。」
(僕)
「別に謝らなくていいから、
何で泣いてるのか教えて。
今、どこから電話してる?」
(彼女)
「今・・・・・あの公園。」
(僕)
「あの公園?ってあの公園か?」
僕は理由も聞かずに、
部屋を飛び出していた。
(僕)
「今、迎えに行くから待ってろ!」
タクシーを降り、公園の入り口に入ると、
彼女が、男の車に乗ろうとしていた。
僕は急いで、その車のもとへ。
(男)
「何ですか?」
(僕)
「彼女は?」
(男)
「あなたには関係ないでしょう!」
(僕)
「どういう関係ですか?」
(彼女)
「・・・・・(涙)」
(制作日 2021.7.21(水))
※この物語は、フィクションです。
今日は、
1988年7月21日発売
ASKA 2ndソロシングル
『MIDNIGHT 2 CALL』
発売から今日で「33周年」
お話は、
女性側は『MOON LIGHT BLUES』
男性側は『MIDNIGHT 2 CALL』
をそれぞれ参考にしました。
書いてみると、
楽曲のような切ない気持ちが沸いてしまい、
最後が、もっと切なくなってしまいました。
この先の二人は?
新たに登場した男は一体何者なのか?
お話の途中に、
二人の未来を案じた言葉を入れています。
幸せな二人に生じた小さな誤解。
二人がいつか向かい合って話ができたら、
誤解が好きから生まれた
幸せな元だったと、
そう思える未来の二人になってほしいと思う。
(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/
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参考にした曲は
ASKA ソロ2ndシングル
『MIDNIGHT 2 CALL』
作詞作曲 飛鳥涼
(1988.7.21発売)
☆収録アルバム
ASKA
『SCENE』(1988.8.21発売)
『ASKA the BEST Selection 1988-1998』
(1999.3.31発売)
『君の知らない君の歌』(2010.11.3発売)
『Made in ASKA』(2018.10.17発売)
CHAGE&ASKA
『MOON LIGHT BLUES』
作詞作曲 飛鳥涼
(1984.2.22発売)
https://m.youtube.com/watch?v=i_C5pMsnF9o