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【超ショートショート】(110)~中秋の名月、右肩の幸せ~☆ASKA『MY Mr. LONELY HEART』☆

夜空に中秋の名月が浮かぶ頃、
右肩に重みを感じた。

それは心地よい初めての感覚だった。

むかし香港の映像を見たことがあった。
〈百万ドルの夜景〉

人は、〈百万ドルの夜景〉のような
ゴージャスな夜景を見ると、
つい・・・「帰りたくない!」と、
恋人同士で言うならわかるが、
ひとりぼっちの孤独を楽しむお散歩で、
「帰りたくない!」というのは、
さすがに変なのではないかと、
思いつつ、
でも、やっぱり、
「帰りたくない!」と独り言。

「そう言えば、
あちらにレインボーブリッジが見えるみたいだ!」

ひとりぼっちの孤独を楽しむお散歩の始まりは、
遠くに見えるレインボーブリッジの橋脚。
どうしても全貌を拝んで見たくなった。

そして、歩き始めた。
ヒールのある靴で。

ひとりぼっちの孤独を楽しむお散歩で
歩いた歩道は、
歩けば歩く程、夜景の景色を変えていく。

目的のレインボーブリッジを
目視できたときだった。
遠くに、真っ赤な鉄塔の全貌が見えた。

「そういえば、
あなたが好きな真っ赤な鉄塔ね!」

そんな独り言をしながら、
何枚も写真を撮ってみた。

そして思った!
「やっぱり帰りたくない!」と。

映像で見る夜景は、どこか偽物のよう。
肉眼で見る夜景は、まるで宝石のよう。

でも、その宝石は、
刻一刻と変化する。
同じ形にとどまらない。

真っ赤な鉄塔を見ながら、
一瞬夢を見た。

「またここに来れるといいな」って。

ひとりぼっちでも、ふたりぼっちでも、
どっちでもいい。

ただ、この美しい宝石のような景色を
見せてあげたいと思った。

帰りたくない気持ちを制して、
レインボーブリッジを背にして、
歩き始めて気づいた。

「脚が痛い」

調子に乗って歩き過ぎたようだ。

子供の頃、体育の授業で持久走があった。
スタートしてすぐだった。
つい先頭になってしまった。
その後の景色は想像できるだろう。
結局何着だったのだろうか?

そんな景色がよぎりながら、
痛みを見せず、
しらっとした顔して歩いて見せた。
「誰に?」
「そうだな、自分に!」

久しぶりの運動に疲労困憊になり、
寝床に知らずに入っていた。

今日は中秋の名月と伝えるテレビ。
何気に仕事をし始めた。
ひとりぼっちで作業する中、
突然、右肩に重みを感じた。

右肩から伸びる腕がだらりと遊ばせている。
ふと、自分の身体の左側を見た。

「ここはどこ?あなたは誰?」

そんな思いよりも、
自分のパーソナルスペースに人がいる。
その事実が信じられなかった。

ひとりぼっちの孤独を楽しむお散歩を好む
のは、
パーソナルスペースに人が入って来るのが
こわいのだ。
本当に入っていい人は限られるが、
まずもって、
この世に実在しても出逢うことはないだろう人。

自分の身体の左側にいたのは、
この世に実在しても出逢うことはないだろう人。

まともに瞳を見つめてしまうと、
理性という心を奪われそうだったから、
理性を保つ振りをして、
瞳を見ないようにした。

でも、右肩の重みを与えるその腕を外しては
くれない。

困り果てながらも、
ふつふつと胸が頬があたたかくなるのを、
とても心地よく感じている。

「こんな幸せってあるのかな」と。

その幸せと感じてる心を忘れないように、
あらためて右肩に重みを与える腕を見ると、
全身に重みを感じた。

「はっ!」と
意識が気づいた時、
「夢か!」と、
幸せを奪われたように、
寂しさに襲われた。

そのまま朝の憂鬱となり、
夜、
中秋の名月を見上げりゃあ、
「今日もまた逢わせて!」と、
ただの神頼み。

あなたの朝の夢は・・・
ひとりぼっちでしたか?
ふたりぼっちでしたか?


(制作日 2021.9.21(火))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1987年9月21日発売
ASKAソロ1枚目のシングル
『MY Mr. LONELY HEART』
発売から今日で「34周年」になります。

それを記念して、今日のお話を書いてみました。
ひとりぼっちの孤独な時でも、
愛する人と夢でもいい、
もし逢えたなら、
幸せなふたりぼっちを叶えたい。

そんな想いを書いてみました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
ASKA
『MY Mr. LONELY HEART』
作詞作曲 ASKA
(1987.9.21発売)



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