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持ちものにアイデンティティを。モノに対する嗜好の変化。

なんでこのカバンがほしいのか


育休から復帰したら通勤に使いたいな、と思えるカバンを見つけた。
本当は靴を買いにきたんだけれど、ふらっと立ち寄ったら一目惚れ。

マザーハウスのカゼマトウ バックパック。

持ちモノに対する私の欲求は、歳を重ねるにつれて変化している。
今の私は、持ちモノにアイデンティティやストーリー性を求めているようだ。

なぜこのカバンがほしくなったのかを考えていくうちに、私のモノに対する価値観の変化が見えてきた話。

キラキラOLになりたい、新米社会人期


当時のほしいものは、ハイブランドのカバンや靴。
お給料を貯めて、自分へのご褒美として特別なときに買っていた。
ブランドのカバンを持っていると、自分に自信が持てる。
見た目のかわいさにときめき、持っているだけで気持ちがアガる。

一方で仕事に慣れるのが大変で、そのカバンを身につけることでテンションを上げて、なんとかハードワークを乗り切るかんじだった。

クリスマスや誕生日に何がほしい?って聞かれても、必ずといっていいほど、名の知れたブランドの小物をおねだりしていたと思う。

仕事にやりがいが見えだした、中堅OL期


ある時から、なぜかブランドものに対する欲が薄れ、機能性を重視するようになった。
通勤カバンは、ユニクロのリュック。
パソコンや水筒、いろんなところに分類してモノをしまえるから、どこに何があるかがすぐにわかる。
軽くていっぱいしまえる。
お値段もお手頃でコスパよし。
なんて便利なんだ。
モノ持ちの私からすると目からウロコだった。

この時期は、誕生日プレゼントもほしいものがすぐに思い浮かばなくて、履きつぶしたスニーカーの代わりみたいな、とにかく実用性を求めていた。

出産を経て、自分見つめなおし期


子どもを産んでからしばらく経った頃。
何か学びたいなと思い、ブランディングを勉強しはじめた。
その結果、自分は何者で何が好きなのか、といった自分のアイデンティティを意識するようになってきた。

自分が持つモノは、「わたし」という人を表す大切な友だち。
例えば、「そのカバン、素敵ですね」と言ってもらえたとき。
そのカバンを買った経緯や、カバンのブランドがもつストーリーを話すことになって、相手に「わたし」という人物像をもっと知ってもらえたら。
もっと相手に私のことを知ってもらえるし、強烈な印象を残せる。
そのカバンにも新たな意味が見出される。

これから長く使うモノは、そういう気持ちで選んでいきたいな、と思う。

「途上国」というワードがもたらす印象ってなんだろう


前述した、カゼマトウ バックパックは、マザーハウスのものだ。

マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる。」という理念を掲げている。

ブランドメッセージは以下。

「途上国」と一括りにされた場所にも、
可能性があることを証明したい。

その想いを胸に、マザーハウスは
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」
という理念を掲げ、 2006年に
バングラデシュからスタートしました。

個性的な輝きを放つ素材、
誇りある職人の技術、
多様性あふれる固有の文化。

途上国の可能性を形にして、
素材開発からお客さまにお届けするまでを
一貫しておこなう マザーハウスの
モノづくりは、 現在、6つの生産国と
4つの販売国に広がりました。


さて、「途上国」というワードにどのような印象をもつだろうか。

いい意味では、成長し続けていて活気がありそう、ハングリー精神をもつ人が多そう、その土地固有の文化や習慣が残っていそう、など。

あえてマイナスのイメージをあげるなら、インフラや教育が行き届いていなさそう、国民の生活水準が安定していなさそう、日本みたいにキレイなトイレに行けなさそう、などか。

数年前、私はミャンマーやインドネシアの人々と仕事をしていた。
インドネシアの人々は大らかな一方で、時間も仕事もややルーズな性格な印象があった。
またミャンマーの人々は勤勉な一方で、工場設備の安全性や衛生面などが不透明な印象もあった。

私が彼らの国について知っていることは、ほんの少しでしかない。
けれど、そういった物事のほんの一部の印象が、私の「途上国」に対する印象を占めていた気がする。

また正直にいうと、フェアトレード(※)商品を買うとき、お恥ずかしながら、どこか有利な立場からモノを「買ってあげる」みたいな気持ちがあった。

※FAIRTRADE JAPANによるフェアトレードの定義

フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。
つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。


「途上国」というワードがもつ先入観を覆す。
途上国の職人が作っているから買うのではない。
いい素材でいいデザインで、ブランドのストーリーに共感するから買う、という購買行動につなげたい。


マザーハウスの理念を読んで、そんな強い想いが溢れているような気がした。

「わたし」を表すカバンとは

就職活動のときから、漠然と社会貢献に興味があった。
当時は、CSR(企業の社会的責任。環境や社会の資源を使って儲けた分、一部の利益を還元する)が主流。

新卒で入社した会社でも、CSRを推進する部署を希望していた。
けれど、どこか心の中で、「利益の一部を還元するんじゃなくて、本業で儲けながら、環境や社会にも貢献することはできないのか」と考えていた。

いろんな縁に恵まれて、今ではお客さまにサステナビリティを普及していく仕事をしている。
出産を経て、将来の子どものためにも、仕事だけじゃなくてプライベートでもサステナビリティを意識した生活に関心がある。


そんな私が気になっているカバンとは。
ほしいと思うに至った、心の中(カギカッコ内)はこんな感じ。

たまたま訪れた百貨店で、
「あ、マザーハウスのポップアップ店やってる。
たしか社会にいいことやってるブランドだったっけ、ちょっと覗いてみるか。」

商品を見て、
「このリュックかわいい。
素材の質感も色も好き。ノートパソコンも入りそうだから、通勤に使えるかも。
まぁ今は休んでるから半年後からだけど。
半年後だと好みも変わるだろうし、今買わなくてもいいか。」

一応試着させてもらう。
「思ったよりも可愛いな。
持っている服とも相性良さそう。
見た目はコンパクトなかんじ。
この素材なら、キレイめの服でもリュックしょえそう。」

店員さんと話し、
「えっ、持ち手のラインが絶妙にカーブしてるから、片方の肩にかけたままでも、サイドポケットのファスナーを開けて、荷物が取り出しやすい。
Lサイズなら13インチのノートパソコンがはいる。
ええやん…!」


お値段も安くはなかったので即決はできず。
帰ってから、いただいたパンフレットを見る。
「『想いをつなぐ、モノづくり』っていいなぁ。
理想の自分に持ってほしいカバン。
このカバンを持つことで、自分を語れる気がする。

とはいえ、なんとなく今の自分では分不相応な気もしている。
あと半年かちょっと。
再び働き始める私が、このカバンにふさわしい自分になれますように。

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