食欲の冬。
これを書いている今、机の上のノートパソコンの横に、甘酒の瓶が置かれている。
二日ほど前に唐突に甘酒が飲みたくなって買ってきたものだ。
思えばここ数年、年の瀬が近づいてくるとこの甘酒に嵌り、何種類かの甘酒を試し……結局、これに戻ってくる、というムーブを繰り返している。
食欲の季節と言えば秋だ。実り豊かな秋はご馳走の季節……理屈は分かるが、俺個人としては、秋にそこまで食欲を搔き立てられた覚えはない。
せいぜいスーパーでフェアを開いている栗や芋のお菓子を買うくらいだ。
だけど、冬は確かに食欲が掻き立てられる。
親に連れられて、寒空の下身を凍えさせながら参拝した帰りの甘酒……。
小学校のイベントで振舞われ、校庭の隅で友達と食べた豚汁。
大学時代、バイト帰りに食べた熱々のラーメン。
冬は、記憶残っている食事経験が多い。だからか、冬こそ美食の季節のように感じてしまう。少なくとも、俺はそうだ。
寒い身体を温める熱い食べ物の記憶が、食欲を刺激しているような気もする。
今は早朝だから甘酒や豚汁のようなさっぱりしたものの方が思い浮かぶが、多分、仕事帰りにはラーメンの方が食べたくなる。
彩華ラーメンという奈良のご当地ラーメンで、ピリ辛のスープに、白菜や野菜がドカ゚盛りにされた健康的な? ラーメンだ。
普段は家系とか脂っこいラーメンが好きなのだが……どういうわけか、奈良にいた頃は冬に一度はこのラーメン屋に寄っていた。
当時はバイトで生計を立てる学生で貧乏だったから、外食は貴重だった。
今でこそ気軽にラーメン屋に行けるが、当時は中々行けなかった。懐かしい思い出の味だ。
今住んでいる名古屋にも、このラーメン屋があるらしい。
近いうちに、ぜひ行きたいものだ。
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