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第十八話 かわいい恋愛②
あの日からくみちゃんは、私に対して急によそよそしい感じになっていた。
スマートフォンを一人一台以上持っているのが当たり前の今の時代ならば、誰かに何かを伝えたいときに、それができるツールがいくらでもあるだろう。それらが全てなかった時代では、『ゴメン』の一言を相手に伝えるのはとても難しい事だった。
くみちゃんにどうにかして、あの日のことを謝りたかったのだが、私の周りには常に誰かがいるし、二人で話している所を見られれば、また皆にからかわれるのがオチなのでそれが出来ずにいた。
そんなことを数日考えていたある日の放課後、格技場へ向かう途中にそのチャンスが訪れた。私の少し前をくみちゃんも、格技場に向かって歩いていたのだ。私は小走りでくみちゃんを追い抜き、その時に小さな声で「この前はゴメン、皆がいたからちょっと恥ずかしくて・・・」と言った。追い抜く一瞬の間だったが、くみちゃんの表情は少しホッとしていたように見えた。
その日の練習は、とりあえずは謝れたことで気持ちがスッとしていたからかいつも以上に集中できた。その件はもうそれで終わったと思っていた、次の日の朝、朝練が終わって教室に行き机に座ると、机の端の手前の方に、可愛く折りたたまれた紙があるのを見つけた。他の人に見られないようにこっそり開いてみると、『○○○ー△△△ー✕✕✕✕ くみ』と書かれてあった。
その日の夜、固定電話の子機をこっそり部屋に持っていき、書かれていた番号に電話をかけた。「はい。△△です」電話口からは大人の女の人の声が聞こえてきた。「柔道部の○○ですけど、くみちゃんいますか?」柔道部と言ったことで、部活の連絡と思ったのか、「柔道部の○○君から電話だよー」という声が聞こえた後、「はい。もしもし」と今度はくみちゃんの元気な声が聞こえてきた。
週に1~2回、特別電話で話すことではないような会話をするのが楽しみになっていた。授業の話、先生について、部活について、等々、会話はいくらでも続いた。「俺、一年のうちに初段になりたいんだよね」「大丈夫!絶対なれるよ!」「二年になるまで、あと何回かしか審査会ないけど、もし初段取れたらお祝いしてよ」「わかった!いいよ!」
今回は少しだけ進展したくみちゃんとの関係を書きました。次回はくみちゃんとのエピソード最終話になります。
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