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2020年日本のOOH広告市場

前回は広告市場全体から、インターネット広告、動画広告、プログラマティックのトレンドを解説し、近年コンサルティングファームが世界のデジタルエージェンシーの主勢力となっており、ボリュームやブランディングよりパフォーマンスが重要になっていることを説明した。その上で最後にDX(Digital Transformation)に触れ、パフォーマンス設計の考え方を紹介させて頂いた。

記事投稿後、コンサルティングファームの知人と話したが、近年やはり企業のDXに対する関心が一気に高まったことで、多くの案件が舞い込み、対応するコンサルティングファームの人材が足りないとのことであった。企業のDXを支援し、その流れで必要な広告をとなると、予算の大元は広告代理店ではなくコンサルティングファームが握っていくことになる。コンサルティングファームを経由して広告代理店に流れてくることはあるかもしれないが、大元の予算を取りに行くとなると、単純に媒体枠を抑えるという業務だけで戦うことは非常に難しいと言える。

その中で、OOH(Out Of Home)広告市場、所謂屋外広告や交通広告の市場はどうなるのであろうか?OOH広告こそ、単純な媒体枠抑えが主流のイメージである。

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まず、市場規模から見てみよう。2020年の日本の広告費6兆1,594億円のうち、OOH広告市場は4,283億円という市場規模である。この4,283億円は上昇傾向なのか、下降傾向なのか、推移はどうだろうか?

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実は、2020年のコロナ禍によって、凹んだだけであり、2019年までの傾向としては上昇でも下降でも無く、約5,000億円の市場が横ばい状態であった。OOH広告の内訳としては、屋外広告が前年比15.7%減の2,715億円、交通広告が前年比24%減の1,568億円である。OOH広告はその名の通り、アウトオブホーム、家の外の広告であるので、外出が抑えられている昨今、広告出稿が落ちるのは当然といえば当然のことである。では、常に日本の5年先を行っている(と言われている)アメリカではどうだろうか?

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アメリカの市場も傾向としてはそこまで変わらず、横ばいに近い微増である(2018年以前5年間も同じ傾向であった)。市場規模としては、日本の約2倍の1兆円程の市場規模だ。米国eMarketer社が新型コロナウイルスが本格的に広まる前の2020年3月に予測した数値を、コロナ禍に入った2020年6月に修正して発表しているが、ダメージとしては限定的で、翌年以降すぐ回復すると予測している。

次に、この微増を支える要因を深掘って見てみよう。

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アメリカではOOH広告のデジタル化(デジタルサイネージ化)が進むと予測されており、2019年時点で既にOOH広告市場全体の31%がデジタル化されており、4年後の2023年には42%、DOOH(Digital Out Of Home)広告市場は約4200億円に達すると予想されている。

デジタル化がどう市場に貢献するかと言うと、大きく2つ、「広告配信の効率化」と「データの可視化」である。広告配信の効率化は、さらに「オペレーションの効率化」と「営業の効率化」の2つのカテゴリーに分かれる。

通常のOOH広告は今まで製作取付撤去料金という費用が広告料金と別でかかっており、人を使って行うため、かなりの手間と費用がかかってきた。また、ビルの屋外広告だと、高所作業車も必要になってしまう。DOOHであれば、期間とクリエイティブをボタン1つでセットするだけである。もう一つの効率化、営業の効率化は、一言で言うと広告が自動で入ってくるということである。WEBでも同じであるが、媒体側としては、1番売上の高い純広告(掲載期間保証)で広告が売れることがベストだ。WEBでは第一優先で純広告で販売し、空き枠をプログラマティックにアドネットワーク経由で埋めていくのが一般的であるが、OOHもデジタル化によって同じことができるのだ。DOOHになると、ローテーションするからたくさんの広告主に売らないといけないと思われるかもしれないが、それも設定次第である。PMP(プライベートマーケットプレイス)と言って、広告主からの所謂指名買いもあり、その際配信単価は高くなる。純広告、PMP、アドネットワークを効率良く運用し、広告収入の最大化を目指すことができるのだ。

もう一つがデータの可視化である。デジタルサイネージにカメラ、センサー、ビーコンなどを付けることにより、どんな人がOOH広告のまわりにいて、いつの期間、どれぐらいの人に配信されたかのデータが可視化されるのである。今までOOH広告は、平均通行量を目安にしか出稿を決定できなかったが、近年ではOOH広告前での滞在率や、どんな属性が多い場所なのかをデータで見ながら広告出向を検討できるのだ。これによって、たくさん人は通るけど通過するだけの場所、人通りは少ないけど目当てのターゲット層が集まる場所などを選定することができてくる。

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実際にアメリカでは、DOOH広告市場のプログラマティック化は急速に伸びると予想されており、2019年の3.2%から2022年は14.8%に達するとのことである。このようにDOOH広告市場とプログラマティックの拡大がアメリカのOOH市場に貢献していると考えられる。

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日本のDOOH広告市場はというと、アメリカやその他欧米市場と比較してDOOH後進国ではあるが、順調に成長していくと予想されており、2023年には1,248億円に達するとのことだ。あえて調査元が違うデータを組み合わせて2019年実績で算出すると、日本のDOOH広告比率は14.5%である。先ほどのアメリカの2019年は31%。ちなみに、アメリカよりもDOOHが進んでいるのがノルウェーとイギリスで、DOOH広告比率は50%を超えていると言われている。

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プログラマティック化に関しては、日本でもジーニーやマイクロアドなど複数のアドテク企業が取り組んでいるが、わかりやすい図を見つけたのでLIVE BOARDのプレスリリースから拝借して紹介する。LIVE BOARDは、「世界に立ち遅れている日本のDOOH市場を急速に活性化すること」を使命に、NTTドコモ51%、電通グループ49%の出資で2019年2月に立ち上がった会社である。LIVE BOARDは、SSP(Supply Side Platform)としてDOOH媒体と連携し、自社及びパートナーDSP(Demand Side Platform)から広告案件を引っ張って来ている。

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広く言うとデータの可視化、狭く言うとプログラマティック化であるが、その活用方法は様々である。データが手元にあるということは、そのデータを使って、手元のスマホにメッセージを配信することもできる。こちらもLIVE BOARDのプレスリリースからお借りしたが、LIVE BOARDが連携するDOOH広告を見たとされるユーザーに対して、ドコモのメール広告を行うというサービスである。これによって、本来であれば広告を見てただ認知しただけで終わっていたユーザーに対して、オンラインの購入サイトを配信したり、リアルな店舗に誘導したりなど、具体的なアクションに繋げることができる。つまり、通常のDOOH広告に付加価値が付けられると言うことである。

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スイッチスマイルのプレスリリースより

屋外だけで無く、電車内でも少しずつ事例が出て来ており、例えばジェイアール東日本企画(jeki)とスイッチスマイルは、JR山手線車両内の窓上チャンネルと、車両に設置したビーコンとを連携して、先ほどと同様に広告接触タイミングでスマホから情報配信できるというメニューを作っている。もし、この窓上チャンネルに、飲食店や小売店の情報が流れて、同じタイミングでスマホからそのお店のクーポンや山手線沿線の店舗情報が流れくると、店舗の誘導に繋がる可能性が高くなる。あるいは、もしそのタイミングで行けなくても、スマホ上でページをブックマークするか、スクリーンショットを撮るかで後日アクションを起こすかもしれない。

2020年はコロナ禍の影響もあり、乗客が多い路線や駅であっても、広告が入りにくい状況ではあったが、その間前述のようなデジタル化の実証実験は少しずつ行われており、交通広告のDX化は前進している。


最後に断っておくが、筆者は全てをデジタル化せよ、DOOH広告にせよ、プログラマティックにせよと推奨しているわけでは無い。筆者は「広告の本質は伝えること」で、「ビジネスの本質は利益を出すこと」だと考えているので、広告主に対してどんな価値提供が必要で、その価値を生み出すためにどれぐらいコスト効率を上げられるのか?その価値提供(売上)ーコストで生まれる利益でしっかり事業を継続させることが重要だと考えている。その上で、世の中の広告主のニーズがパフォーマンスに向かっているなら、しっかりパフォーマンス設計を行った価値提供が必要である。特にこのコロナ禍で、新規顧客にフォーカスするよりも、リピート率やLTV(Life Time Value / 顧客生涯価値)を上げる、つまり顧客1人1人をどれだけ満足させられるかが重要になって来ている。例えば、夢の国に興味が無い人に、いくらディズニーランドを押し付けてもダメで、主体的に検索する人や、興味がありそうな人にアプローチすべきなのである。そう言う意味でも、デジタル化せよ、DOOH広告にせよ、プログラマティックなどをひっくるめたDXが重要になっているのだと思う。

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デジタルマーケティング10年、インドネシア7年、飲食2年、DX1年、今からフードテック