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negai のあるところへ
白色というよりも、雪色(yukiiro)
その世界の参道をわたしはひとり奥へと歩いていた
参道を挟むように出店が両側に立ち並ぶけれど、そのどれもが戸締まりをしている。そしてそれらもすべて雪色だった
静寂と、一色と、ただそれだけの世界
しばらく歩くと目の前には観音開きの扉
わたしは躊躇なくその扉を押し開ける
と、同時に、わたしは天のうえから白い龍を見下ろしていた
観音扉の開けた先は、白い龍の背中にある祠だった
龍の背中に比べて祠のなんて小さいこと!
龍はまるでひとつの国のようだ
龍は悠々と、青い空に浮かぶ雲の波間を静かに泳ぐ
わたしにはわかっていた
そこが"願い"の場所なのだと
生命は願いでできている
ほんとうは、たったひとつの願いだけだったはず
今では願いが小さな石ころのようになって、両手ではもう持ちきれないでいる
そのどれひとつとしてこぼれ落ちないように必死だ
シンプルにたったひとつの願いをみつけられたのなら…