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良薬とはいえ

先日、皮膚科に行きました。

ストレスや体調不良が胃と肌に出やすい体質なのですが、11月くらいから肌荒れの酷さに拍車がかかり、見るに堪えないものになったからです。

大ライブも近いのでさすがに良くないと思い、本気で治しにかかっています。


病院で処方していただいたのは、塗り薬3つと錠剤2種類、粉薬1種類でした。

私は薬を飲むことがすこぶる苦手です。

錠剤はちゃんと喉に詰まるし、粉薬はちゃんと気管に張り付くからです。


特に粉薬は本当に苦手です。

奴らは少量の水分でも一瞬で溶けやがるので、その味に驚いている間に、「これは異物だよ〜飲み込ませないよ〜」と喉が締まり、飲み込めないまましっかり味わってしまいます。

漢方薬が一番良くないです。にがにがです。噛むとシャリリとしています。


もうアラサーの年齢なのにも関わらず、それが原因で未だに「おくすりのめたね」で粉薬を服用しています。

家にストックが無ければ、ジャムや蜂蜜に混ぜたりゼリーを砕くなどして、とにかくなんとかしてやり過ごしてきました。


そこまでしても、まだ飲めません。

「薬は不味いもの」という考えが細胞レベルで刷り込まれているので、口元へ近づけては離し、また近づけては離しを繰り返してしまいます。

あと一押しが欲しい。


そこで思いついたのが、服用用(yo-yo)の出囃子を付けることです。

みなさんは、筋肉料理研究家のマグマ中山さんをご存知でしょうか。

なかやまきんに君さん(敬称に"さん"を付ける文化)のキャラというかネタというか、ちょっとジャンルは分からないです。

有名なものに「マグマスパゲティ」があります。

テーブルにスパゲティを置き、その横には粉チーズを持ったなかやまきんに君さん

今日はみなさんにマグマスパゲティをご紹介したいと思います。まずは皆さんコンビニでスパゲティを買ってきてください。 これだけなら普通のスパゲティ。
でもここからが「マグマ」なんです。

なかやまきんに君

という台詞を放つと、ボン・ジョヴィの『It’s My Life』が流れ始めます。

デーデー!テレレレ〜ンレ〜ン
デーデー!テレレレ〜ンレ〜ン
This ain’t a song for the broken-hearted

粉チーズを片手に持ちながら、ボディビルダーのごとく緩やかにポーズを決めてゆきます。そして

You're going to hear my voice when I shout it out loud
デン!デン!
It’s my ヤー!

It’s my 「life」の箇所で粉チーズ全てをスパゲティにかける、というやつです。


確か初見が、ガキ使の「山-1グランプリ」かと思うのですが、ほんまに腹千切れるくらい笑いました。スパゲティの次の「串カツ」では、死と隣り合わせになるくらい笑いました。

そしてこの一連の流れが、粉薬服用の後押しになるんじゃないかと思ったんです。


一度曲が始まってしまえば、必ずあのフレーズ、「It's my life〜♪」がやってくる。抗うことは出来ません。

ここで粉チーズのごとく粉薬を口へ放り込むのです。

もちろん曲を流す直前には薬を手に持ち、心の中ではありますが「(ここからが「マグマ」なんです)」と唱えております。


この作戦は見事成功しました。

出囃子を付けることで否応なく飲むことができるので、薬が「どうも〜」と言って体内に入ってゆきます。セリ上がりならぬ、セリ下がりです。

今思えば、決められた手順は必ずこなさなければならない、という自分内ランキング上位に君臨する強迫観念を上手く利用出来ています。

正直「It’s my life〜♪」が近付くにつれて恐怖は大きくなってゆきますが、それが聞こえた瞬間には頭よりも先に身体が動いています。パブロフの犬です。


マグマ粉薬は、私の服用生活になくてはならないものになりました。

しかし今回皮膚科で頂いた薬はあまりに多く、あろうことか、時間の関係で朝イチの授業の日にはNSCで飲まなければならないという事態が発生してしまいました。

一見おいしいです。

「私な、It's My Life流さなな、薬飲めへんねん」と周りに伝えてそれを実行すれば、誰かが面白がって動画を撮ったり、「こんなオモロいことあったで笑」とその噂が広まるかもしれません。

そうなればこっちのモンです。

しかし、私にはそれを現実に出来る程のキャラクター性はなく、また交友関係も自分から発信する力も無さすぎるので、

「教室の隅っこで小さく「It's My Life」を流しながら半泣きで粉薬を服用する一般女性(フリーター)」

が出来上がる未来しか見えませんでした。

イタタタ、イタいよ

誰にも触れられない奇行は真っ直ぐ黒歴史行きなので、それは避けなければなりません。


ここで第二のアイデアが浮かびます。
それは、公共の場での服用です。

私は他人の目に対する羞恥心が強い方なので、できるだけ目立つ行動はしたくないという思いが根底にあります。

なので、例えば電車が急停止しても驚きのリアクションは押し殺したりして、ポーカーフェイスを保ちます。身体も動かしません。ポーカーボディです。

それを逆手にとり、人前で薬を服用することによって、「薬を飲む」における正規の手順以外の行動を省くという魂胆です。


〜薬の飲み方〜
・本当に飲まなければならないのか考える
・開けてしまったら最後だと決心する

・粉薬なら袋の上部を開ける、錠剤なら手に粒を出す
・薬を眺める
・反対側の手で飲み物をスタンバイ
・一度、飲み物を飲んでみる
・薬を口に入れた際の位置の確認
・以前飲んだ記憶を懐古
・口に入れるか入れないか、口前で薬を前後させる
・深呼吸
・脳に気付かれないうちにボン・ジョヴィ「It's My Life」再生
・視聴し、その時を待つ

・口に薬を放り込む
・転がして良い位置へ移動させる
・すぐさま飲み物を口へ入れる
・飲むタイミングを見計らう
・頭でリズムをとる
・重力、引力を駆使し頭を傾ける
・場合によってはえずく

・飲む
・場合によってはえずく
・お口直しの何かを口に入れる

これです。

取消線を入れた行動を実行すれば、たとえ直視しなくても視界に私を入れている人に「あの人何やってんだ?」という関心を持たせてしまう可能性が高いです。

なので注目されないためにも、ノーマルを装う必要があるのです。

実験として一度、電車内で服用しました。周りに迷惑をかけないよう、座席に余裕のあるタイミングを見計らって「申し訳ない。大丈夫、私は全て分かっている」という表情を浮かべながらです。


これが本当に上手くいきました。

「薬不味い<注目されたくない」の式が完璧に出来上がり、躊躇うことも喉に張り付くこともありませんでした。

皮膚科で処方された粉薬が、いつもの苦味系ではなく酸味系だったのも功を奏したのか、心なしか味覚も鈍ったように感じます。


先週、今年分の花粉症を発症して、葛根湯を飲まなければならなくなりました。

服用ゾーンに入った私は「おくすりのめたね」を手放し、丸腰で葛根湯に挑みました。出囃子も無しです。

余裕で飲めました。

すいません、私、薬飲めます。

これまでの私は、丸腰で薬を飲めない人間でしたが、今は違います。

丸腰で薬を飲めない頃の私のファンの方がいらっしゃれば、もうあの頃の目つきを失ってしまった私に幻滅されるかもしれません。

でも、ここからが「マグマ」なんです。

失ったものは大きいですが、これまで以上に気を引き締めてやっていく所存ですので、今後とも何卒よろしくお願い致します。

マグマ馬場光

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