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【独白】なぜ僕は「有人宇宙開発」ではないのか。

「なぜ宇宙なのか」

修士2年になって、進路を模索する時期になり、コロナによる外出自粛の影響も相まって、今までの人生でも自分を見つめる時間が一番長くなっています。

そんな中で、毎日のように考えることは「なぜ自分は宇宙をテーマに仕事がしたいのか」ということです。

僕と関わったことがある方には「宇宙分野で仕事がしたい人、なんなら宇宙じゃなきゃ絶対に嫌な人」だと認識されていることかと思います。

僕もそう思っていますし、それは変わっていません。

でも、それがイコール日本の宇宙業界、特に今の宇宙業界に入らねばとはならない、と最近強く思うようになりました。

それはなぜか。自分のやりたいことは日本の宇宙業界では実現が難しい、おそらく海外でも困難で、結局は自分で切り拓かなければいけないと考えているからです。

その理由については、自分の思いの整理がついていないこともあるので、まずは、今回はそう考えるに至ったきっかけ、宇宙に対する思いから紐解いていこうと思います。

聞かれるたびにお答えしていることですが、自分が宇宙に興味を持ったきっかけは正直覚えていません。昔からそういう情報に触れていたからか、科学未来館や今はなきJAXAiに何度も行っていたからか、はっきりとしたものはありません。

でも、宇宙に対する夢をブーストするきっかけ、JPLの小野さんの言葉を借りるなら「何か」を呼び起こしたのは、中学生のときに地学図表で土星の衛星タイタンの写真を見たことでした。

これは地球の白黒写真じゃないのか、なぜこんな星があるのか、地学の時間はいつもその写真が載っているページを見ていました。

以来、タイタンに魅せられてから、その謎に迫れるアプローチを常に模索して生きてきました。

高校生のとき、JAXAの職員の方から「航空宇宙工学の人が探査機を作るというより、惑星物理学とかサイエンス側の人が必要に駆られて探査機を作るんだ」と言われて、大学では宇宙物理学を選びました。

今いる大学院を選ぶときには、宇宙物理というバックグラウンドも生かしつつ、やはり工学のスキルも必要だし、でも航空宇宙工学の人と同じアプローチでは勝てないと思い、システムズエンジニアリング、そして品質管理を選びました。

ただまあ、そのアプローチでもなかなか厳しいということを身をもって味わわされているわけですが…。就活に関する思いは、それはそれで長くなるので別に書こうと思います。

「宇宙探査」

では、なぜ宇宙探査を選んだのか。

宇宙に魅せられているなら、誰しも宇宙飛行士に一度は関心を持っていて、特に僕のように他の星に強く魅せられているなら、なおさら宇宙飛行士なんじゃないかと。有人宇宙開発なんじゃないかと。

一度言って笑われてから人前では言ったことがないですが、僕は「宇宙飛行士を目指すには生まれてくる時代を間違えた」と思っています。

1960年代のアポロ計画から50年以上、人類は上空400kmとの往復ばかりを繰り返してきました。僕にとって宇宙飛行士という職業はISSに出向く人でしかなく、今ようやく月や火星への広がりを見せるようになってきましたが、所詮はその程度です。(毒を吐いているのは自分でもわかっています。)

自分が魅せられている「タイタン」を含め、いわゆる深宇宙に人が直接乗り出すのはまだまだ先の話であり、僕が現役で働いている時代には実現しないと思っています。

有人探査が月や火星以遠にその範囲を広げることが現実的ではないから、僕は無人探査を志すようになったのです。そう考えるに至ったのも、振り返れば中学生の頃だったと思います。

「有人宇宙開発」

ただ、有人宇宙開発が今のままでいいとは思っていません

今の有人宇宙開発は、宇宙開発全体の流れよろしく、アメリカが主導し、日本を含むそれ以外の国がアメリカについていく構図になっています。つまり、アメリカが月に行くと言えば日本も月に行くし、火星に行くと言われれば日本も火星を目指す。しかもそれを担当するのはJAXA。

それでは、先に進まないのではないでしょうか。JAXAの予算は1800億円、アメリカと比較して10分の1、しかも有人宇宙開発に当てられる予算はさらに少なくなります。

予算規模が小さく、アメリカの意思に左右され、中長期的にロケットの打ち上げ本数もすでに決まっていて、新しい計画が滑り込む余地はほとんどない。

やはり、民間が参入することで流れを変える必要があると思います。そうでなければ月や火星以遠の有人探査なんて、いつまでたっても実現しないだろうし、月や火星探査も小規模なままじゃないかという気がします。

「SpaceXの打上げ成功」これは、とてつもなく大きなパラダイムシフトだと思います。今まで国が担い、国でなければできないと考えられてきた有人宇宙開発に民間が参入できることを示した。

なぜ、日本ではそこまで大々的に報じられないのか、芸能人のゴシップより順位が低いのはなぜか。個人的には注目度が低すぎるように感じます。ホリエモンが言っているように、宇宙開発、宇宙ビジネスこそ日本が世界と戦える分野だと思います。

その宇宙開発を今こそ盛り上げなければ世界に置いていかれてしまう。有人宇宙開発も含めて、世界の動向をキャッチアップし、日本も世界を変革するプレーヤーになるべく動いていく必要があると思います。

「最後に」

今回、この文章を書こうと思ったのは、有人宇宙開発を盛り上げる団体(Homer Spaceflight Project)の設立を宣伝してくれということがきっかけでした。今ちょうど自分の進路や将来を深く見つめている中で、いろいろ思うことがあったので長々と書いてみました。

結局、自分は有人宇宙開発ではないアプローチから宇宙に関わっていきたいという思いに変わりはありませんが、今の動き次第では5年後どうなっているかも分からないので、しっかり注目していこうと思います。

直近の進路や、それ以降のキャリアプランなど思うことはまだまだありますが、それはまた別の機会に(思い立ったらやる人なので、いつになるかは分かりません)。

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