見出し画像

世界はどう”釣り合って”いるのか。 〜感謝とイノベーションを産むもの〜

我々の世界はビクともしない、何か安定的なものだと捉えていませんか?

今回は「世の不安定さ」から「感謝」、そして「イノベーション」へと話を紡いでいきたいと思います。

明日が存在すると、なぜ言い切れるのか?

まず、以下の二つの絵を見てください。皆様は何を描写したものだと思いますか?

(「世界は贈与で出来ている」より)

答えは、「世界がどのように釣り合っているか」の捉え方の違い、です。

多くの人は、今日という日が想像の範囲に収まっていると思います。つまり、それは「皆さんの世界が釣り合って、安定している」と言えます。

では、どう安定しているのか。

上図の内、右図を選ぶ人は「ちょっと何かが起こっても、世界は元の場所に戻ってきてくれる」と信じている人。左図を選ぶ人は「何かが起きたら、もう今日の世界には戻って来られない」と思っている人。

世界はどちらの形で釣り合いが取れていると捉えるかで、社会の見え方が大きく変わってきませんか?

私はこの図に大きなインスピレーションを貰い、また今まさに感じていることがバチっと表現された感覚がありました。

大企業とスタートアップの、釣り合い方の違い

住友商事在籍時は、ウクライナに行くまで、120%右図の認識でした。

そもそも、日々命の危険が無く、明日の食事に困らない人生を送ってきましたので、世は基本的に揺るがない、とても安定したものだと考えていました。

ウクライナに行き、世の中にはそうではない国と地域があるということを身を持って理解しましたが、それでも所属している「住友商事」という船は依然として右図だと感じていましたし、だからこそ「その船に乗り続けていると自分はダメになる」と考え、転職しました。

今所属しているセルソースは、時価総額は700−800億円前後という比較的大きめのスタートアップです。

が、簿価純資産は30億円(住友商事は3兆円)。つまり、何かが起きて30億円以上の損失を計上することがあり、資金調達が間に合わなければ、その瞬間に債務超過に陥ります。

ファイナンスの面だけでなく、まだ創業8年目の当社は色んなインフラも構築途中です。社員全員が試行錯誤しながら、強い足場を作るべく日々奮闘しています。

冒頭の図で言えば、紛れもなく左図の状態で、その不安定さは日々感じるところです。

このとても不安定な環境で4ヶ月仕事をしたことで、「無垢な感謝」が生まれ、「イノベーションの源泉がどこにあるのか」の仮説が生まれました。

無垢でピュアな、心からの感謝を持って

この非常にFragileな状態ながらも「釣り合い」、今日という日が無事終わり、そして会社が猛スピードで成長しているのは、紛れもなく社員140人全員のお陰です。

私の守備範囲だけ見ても、中計・人事戦略・DX・マスマーケティング・デジタルマーケティング・日々の相談対応・・・と多岐に渡りますが、その中で私個人が出来ることなど10%もありません。1%くらいでしょうか。

残りの99%は、メンバーが其々のスペシャリティを発揮し、モチベーション高く取り組むことで成し遂げられています。

全社で見ても、トラブルが起きたらみんなで対応する。Slackに分からないことが投稿されたら、誰彼問わずにわかる人が教える。自分の分野では、他が真似できないレベルでのパフォーマンスを出す。

そういった素敵なメンバーのお陰で、このFragileな船は左右に揺れながらも一方向を向いて爆速で進んでいます(そして「揺れてませんよ」なんて絶対に言わない)。

つまり、不安定であることを感じるからこそ、全員への無垢な感謝を持って日々仕事をすることが出来ています

ただ、この想いを持って住友商事に戻ったら、もっと多くの人に感謝の気持ちを持てるのだろうなと思います。揺れが少ないが故に、周りの声なき支援に気付けていなかった部分が絶対にありました。想像力が足りてなかった。

会社に限らず社会全体において、自分や自分の生活を支えてくれている人のことたちを想像して生きていけたらと思っています。

イノベーションを産む土壌とは

日本史を学んでいて、昔からとても不思議に思っていたことがありました。

坂本龍馬や土方歳三、その他多くの偉人たちは20代や30代前半でとんでもない偉業を成し遂げています。

私はもう、当時の彼らよりも大分年上です。最近は少し変わってきましたが、それでも昔から名を馳せる人の大半はもっと年上です。何が違うのか。

これを「人間としてのレベルが違う」と言ってしまえばそれまでですが、一体なぜ、そんなに若くして偉業を成し遂げる人がポコポコ生まれるのか(今より遥かに人口が少ないのに)、中学・高校時代からずっと不思議でした。

しかし、今回の件で分かった気がします。彼らは、生まれた時から世の中を右図ではなく、左図、つまり「極めて不安定に釣り合っているもの」として捉えていたのでは無いかと。

戦争もあれば、疫病もある。道を歩けば、普通に死体が転がっている。そもそも寿命が短い。そんな「不安定な社会」で生きていれば、自ずとその日一日への真剣度は違うでしょうし、何よりリスクを取りに行きます。日々のリスクが低く無い=追加で取るリスクが今よりも大きくない、という構図がそうさせます。

言い換えれば、「人と違うことをやりやすい土壌が整っていた」とも言えます。だからこそ、多様なイノベーションが生まれたのではないでしょうか。

世が安定していると思うようになればなるほど、リスクを冒しづらくなり、結果、イノベーションが起きづらくなるのは自然な流れに感じます。

世の不安定さから、目を背けない

コロナ、ウクライナ戦争、安倍元首相の殺害、急激な円安とインフレ、、、

今、日々の生活を揺るがすような、また他人の生活が明らかに揺さぶられていることがわかるような事態が多数発生しています

こういった事態を直視することは辛いですし、目を背けようと思えば出来るものもあります。現実逃避して、「きっとすぐ元通りになる」と考えることも出来ます。

しかし、もうそれはやめましょう。世界は極めてFragileであり、「生きる」ということは常にリスクを負っていることだということを強く認識しましょう。

そうして初めて、その世界を成り立たせてくれている人たちに「本気の無垢の感謝」が生まれますし、リスクを恐れない勇敢さが自分の人生にイノベーションをもたらしてくれます

目を背けていては感謝も出来ませんし、イノベーションも生まれません。リスクを認識するからこそ、前向きに生きていけると信じています。

常に「釣鐘の上に自分がいる」感覚を持って、今日という一日を始めたいと思います。

では、また来週。


この記事が参加している募集

転職してよかったこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?