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大企業で金太郎飴にならない方法④〜如何に一人で戦える機会を増やすか〜

全5回なので、ついに佳境に入ってまいりました本連載。今回は、「一人で戦える機会の増やし方とその重要性」について記して参ります。

大企業で「一人で戦える場所」など基本的に存在しない。

このタイトルに、頷いていただける大企業勤務の方は多いのではないでしょうか。「何を決めるにも誰かの承認がいる」「どこに行くにも、何故か誰かが付いてくる」、これが大企業の特徴です。

入社初日から、「会議に来て、発言せずに帰って行く人」を見て、ずっと疑問に思っていました、こいつは何しに来たんだ、と。

でも、段々日が経つに連れて分かってきます。「同じ会社から、同じ部から複数人数が必ず参加するから、発言する必要のない、もっと言えば、発言を求められていない人間が必然的に発生する」ということが。

ここまで読んで、「いやいや、俺は一人で商談に行ってるぞ」と言う商社マンがいるでしょう。では、その場で数量から価格から、発送時期まで決められますか?株主間契約に署名出来ますか?そこまで裁量が与えられている人は、殆どいないでしょう。

つまり、大企業においては

①一人で舞台に立つことも中々許されない、
②舞台に立たせて貰ったとしても、そこで「決める」ことは更に許されない、

ことになります。

一方、スポーツでも芸術でも何でも、「誰の助けも借りられない表舞台に立って、成功 or 失敗をして、初めて成長する」ということは、最早自明過ぎて書くまでもありません。社会人になるまでに、何かしらの形で誰もが認識していることのはずです。

では、なぜ上記①・②のようなことが起こるのでしょうか?それは、「個人がリスクを取れない仕組み」に大会社はなってしまっているからです。なお、これは総合商社に限った話でも、日本に限った話でもありません。海外の大企業も大半がそうです。仕事柄、海外の大企業の人と話す機会が多いですが、コピー&ペーストしたのかと思うくらい、同じことが起きています。

なので、ある意味この仕組みに陥ってしまうのは大企業の宿命のようなもので、そこに抗うのは流石に時間の無駄です。何でもかんでも戦いを挑む私も、流石に費用対効果が見合わなさすぎて、やりません。では、何をしたらいいのか?

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何が何でも、「一人で戦う場」を作る

仕組みを変えられないのなら、運用を変えるしかありません。「決める」ことには制度の壁がありますが、「舞台の設定」にはありません

なので、私は取り敢えず、以下のようなアクションを取ってみました。簡単にですが、それぞれ紹介していきます。

①小規模の部隊に身を置く 〜鶏口牛後〜
②許される範囲で、「場」を増やす。
③業務時間外を駆使する
④頼まれていない仕事、提案を行う。

①小規模の部隊に身を置く 〜鶏口牛後〜

私が入社した2009年というのは資源価格が高騰した頃で、所謂「資源金属部隊」が各総合商社の稼ぎ頭になっていました。会社のPRでもそれら部隊がフォーカスされ、私の周囲も、資源事業を希望する者が多くいました。

一方、私は元より「規模の大きくない、出来れば小さい部隊に行きたい」と強く思っていました。

なので、コーポレート部隊に配属した後、中小規模の行きたい営業部を見つけてからは、ありとあらゆる場所でその部に行きたいことをアピールし、やりたくないゴルフを始めてその部のゴルフコンペに参加し、何とか希望の部署に異動することが出来ました。尚、異動してからは一度もクラブを握っていません(笑)

この時の決断と行動が、今の私の基盤となっており、当時の自分を褒めてあげたいくらいです。

異動した先の部は、成長途次にある意欲的な部であった一方、そのポテンシャルに陣容が追いついていない状況でした。そうなると、どうなるか。異動初日の面談で「このM&A案件、Aさんと二人でやっといて。後はよろしく」と言われ、予想以上のアサインメントに震えた記憶があります。

多くの仕事に共通しますが、M&A案件は特に、「規模感が10倍になったからといって、仕事が10倍に増える」わけではありません。一方、案件規模が多くなればなるほど、それに従って関係者が増えるのが、大企業の常です、

つまり、「小規模案件を一人とか二人でやる」方が、「大規模案件を十人でやる」よりも遥かに経験値が詰めるわけです。

結果、その案件は初期的交渉からDD、交渉、出資、PMIまで一気通貫でやらせていただき、自分のキャリアの名刺代わりになる案件の一つになりました。

牛後は牛後の良さがあると思いますが、私は鶏口を選んで本当によかった、と心から思います。

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②許される範囲で、「場」を作る。

主に上で書いた「鶏口」部隊に行く前の話ですが、私は以下のやり方で「場」を増やしていました。

1)会議を設定せず、会いたい人のデスクに直接言って、そこで話す。
 →当たり前ですが、そこには私一人しかいません。

2) 会議を設定せざるを得ない場合、極力所属部の人が参加しづらい時間に設定する
 →「そこ難しそうだから、出ておいて」と言って貰える可能性を上げる。

涙ぐましい努力ですが、これを繰り返すと、「あ、こいつ一人でも話になるやん」と思って貰えるようになり、次から指名が入ることもあります。上の人と一緒に出ると、その会議が成功裏に終わっても、誰のお陰かわからないので、個人の評価に繋がりづらいのです。

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③業務時間外を駆使する

朝食、昼食、夕食は業務時間外ですので、誰にも何も言われません。なので、この時間を使って、会いたい人に会いに行きます。

【社外】
私は、「特にAgendが無くても会いに行く」ことを結構意識しています。勿論、毎回目的があるのも大事ですし、会社の会食とかだと「何のために」をよく聞かれますが、「目的が無いと会ってくれない人」「何かを取りに会いにきてる人」と思われるリスクを伴うな、と感じたので、少しやり方を変えるようにしました。

私自身、「人と会って話すこと」がすごい好きなので、このやり方の方が自分の素が出ているのかもしれません。「とりあえず、飯行きません?」みたいな関係っていいな、と思ってます。

後は、M&A交渉の前などは、自分の持っていない観点を身につけるべく、ビジネススクールでお世話になった交渉学の教授と朝飯食ってから、「全員と交渉してるつもりで1日を過ごす(意味わかんないですよね)」とかやってました。

【社内】
恐らく、私ほど「案件関係者飲み」を開催してる人はいないのではないでしょうか、という位、自分の案件に携わっていただいている方々との懇親会は定期的に開催しています。Closingした時などのみならず、忘年会でも何でも、理由を付けて開催し、「自分毎」に思って貰えるようにしています。

これは、自分のために開催しているのではなく、「所属部署関係なく、案件に携わる人全てが営業マン」と心から信じている一方、最前線にいない限り、自分が営業マンであることを感じられない、というのがコーポレート所属の人間として痛いほど分かるため、です。

その会では、参加していただいた皆様と、一人一人向き合ってお話するようにしています。そうすると、それまでの電話やメールでやり合った結果、ちょっと(かなり)私のことを嫌いになってる人がいたとしても、「全員が営業マンだと思ってるから、真剣に向き合ってるんです」というお話をさせていただき、ご理解をいただけると、翌日にはより「強い」チームになっている印象です。

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④頼まれてもいない仕事、提案を行う。

一つ前の投稿で、「上司はアピールを待っている」と書きましたが、それは人事面に限らず、全てにおいてだと思っています。

「そんなことやってないで、与えられた仕事をやれ」と言われたら話が進まないので基本業務はちゃんとやり、その上で、ガンガン新しい提案や分析結果などを投げていきます。

凡そ50%以上は打ち捨てられますが、意外と誰かに引っかかるもので、そうなったら話に呼ばれるのは、私です。だって「部の提案」じゃなくて、「私の提案」なので。勿論、それで前に進まないことも多いですが、その場は「私の舞台」ですし、何より個人名で覚えてもらえます

そうしたら、その後は相談や問い合わせが、その人から個人に来るようになるかもしれません。増えるときは指数関数的に増えるので、結構驚きます。

繰り返しますが、「新しい提案をされること自体が不快な人」というのは極めて稀で、みんな心のどこかで待ってます。

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ここまでやると、何が起きるか

ちなみに、そういう会社に勤めていない方には理解されないと思いますが、この過程の至る所で、怒られます(笑)。結構な場合、何で怒られてるのかはよく分かりません。

しかし、こうやって無理やりにでも「一人で戦う場」を作ると、当たり前ですが自然と「一人で戦える実力」がつき、最終的には「もう一人で行ってきて」となります。

今まで実現してきた、2件のベンチャー投資、2件の大型M&Aも、かなりのパートを一人でやらせていただきましたし、今私が来ているウクライナM&A案件は、堂々と「私が率いて実現しました」と言えるものです(勿論、多くの方のサポート無しには実現しませんでした。ここで申し上げたいのは「自分が最前線に立って進めた」というところです)。

つまり、「一人で戦う場を増やすと、自分を差別化出来るようになる」とも言い換えられます。

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第四章の終わりに

今回書いたような話を人にすると、「それって周りに何か言われない?」とよく聞かれます。そりゃ、言われます。先に書いた通り、なぜか怒られたりします。出る杭だろうがなんだろうが、目立った行為をする人にアタックする人は一定層必ず存在するので。

でも、それよりも何よりも、「自分が今日成長していない」「自分の名前で仕事が出来ていない」と思うことが辛い。

他人に叩かれても自分が凹まなければ、足を踏み出した分だけ前に進みます。

でも、何もしなかったら、その日失っている記憶や老化の分だけ後退していますし、周りの成長分だけ、より相対的に後退します。そんなのは耐えられません。

折角生を与えられて、唯一無二の名前を親から与えられたのだから、「その名前」で勝負したいですよね。

同じ想いの人と、もっと繋がりたい。そんな想いでNOTEを始めました。

次回、漸く最終回を迎えます。頑張ろうっと。


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