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M&Aの流儀⑦:欠点があるからこそ、君とやれる

細田薫です。私に気付いていただき、ありがとうございます!

「私のM&Aの流儀シリーズ」第7️⃣弾。今回のフレーズは「欠点があるから、君とやれる」。「悪い所、できていない所」=「悪」ではない、ということについて語っていきます。

減点主義が生む忖度文化、これが日本企業M&Aにおける病巣だと信じます。

完璧な彼氏/彼女、欲しいですか?

M&Aで迷ったら、人間社会に置き換えてみるのは一つのやり方です。M&Aはよく結婚に例えられますが、まさにそうで、M&A対象企業を「パートナー・配偶者」に例えてみるのはアリなやり方です。

皆さん、現実世界で
①非の打ち所がないほど美しく、
②賢く、そして弛まぬ好奇心を持ち、
③誰からも好かれる人徳を有し、
④健康な肉体を持ち、、、、etc
という「完璧な人」、パートナーに迎えたいですか?

多くの人の回答は「NO」でしょう。全てを自身で完結できてしまう人と一緒にいても、「すごい!」とは思えても、「共に歩みたい」とはなりづらいのではないでしょうか。

互いに欠けているところがあり、補い支え合うからこそ、「お互いが共にいることの意味」を実感することができ、より深い絆が醸成されていくのではないでしょうか。

そして何より、そもそもそんな「完全無欠な人」などいません。みんな良く分かっていることのはずです。

なぜか「完全無欠な会社はある」と思う不思議

にも関わらず、何故か「完全無欠な会社はある」と多くの買収側企業が思っているように感じます。更に言うと、「あたかも自分の会社は完全無欠だ」と言わんばかりの人もいます。

そうすると何が起きるか。減点主義です。対象会社のことを良く知るプロセスであるDue Diligence(DD)においては、色んな指摘事項や問題が出てきます。社歴の長い会社を対象にすれば尚更です。例えば、、

・過去の税務申告に疑義がある
・製造設備の老朽化が深刻
・既存契約で過大なリスクを負っているものがある
・現在の会計基準は不十分であり、月締も遅い
・社長のリーダーシップに不安要素あり
・資金調達が下手            ・・・etc

ケースを挙げたらキリがありません。でも出てくるのは当たり前です。だって事業をやっているのですから。算数の問題を毎日解いているのではないのです。

しかし、こういった指摘事項が見つかってくる度に「この会社のここは不安だ。大丈夫なのか」「こんなグローバルスタンダードに沿ってない会社でいいのか」。。。こんなコメントが相次ぎます。

でも、完全無欠な会社はありません。そして、担当者はその案件はやりたい。何が起こるか。「隠匿」です。つまり、耳障りのいい情報ばかりを上げ、耳障りの悪い情報はできるだけ隠す。

隠している本人は絶対に気付いてます、隠していることに。しかし、減点主義の文化が、彼にそうさせるインセンティブを生んでいるのです。人間はインセンティブの奴隷。こうなると、実態と乖離した情報ばかりが意思決定者に届くようになり、誤った意思決定に繋がります

私は、日本企業がやたらM&Aで失敗を重ねる最大の要因が、この

減点主義が生む忖度文化

にあるのではないか、と思っています。

凹=魅力!!

一方、私が過去に世界有数の投資ファンドのセミナーに出たときに聞いた以下の言葉が忘れられません。

DDで欠点を見つけたら、「漸く出資する理由が見つかった!!」と喜びます
欠点が見つかったらその欠点を我々が改善可能かどうかを精査し、改善可能であれば、その案件がGOになる可能性が飛躍的に高まります

今の私なら、この言葉に心底から頷けます。

自分も相手もどうしようも出来ない「凹」であれば、残念ながら出資をしない理由になり得ます。でももし、我々が補ってあげられるのであれば、世界に新たなValueが生まれ、みな幸せになるわけです

裏を返すと、それが出来ない案件はどうやっても「三方よし」になり得ないので良いM&Aにはなりません。お金でしか繋がっていない冷たい関係が続き、いつか後味の悪い別れが待っているでしょう。

自分たちの「凸」を見つけよう、ちゃんと理解しよう

対象会社の欠点を見つけたところで、「それを我々がなんとか出来るのかどうか」が精査できなければ、前項のストーリーは成り立ちません。

これもまた人間社会と同じですが、私はつくづくこう思います。

自分(自社)のことは、自分(自社)が一番分かって”ない”

これもまた日本人の傾向なのかも知れませんが、「うちの部に強みなんてないよ。。。」と仰る方によく出逢います。「俺に強みなんてないよ。。。」の人と同じくらい。

でも、そんなわけないんです。強みがゼロなんだったら、いくら守られた日本経済であっても、とうの昔に駆逐されています。絶対に何かあります。

自社・自部・自分の強みを明確に定義し、関係者全員が同じ理解を持っているかどうか。

これが「良いパートナーを見つけられるかどうか」に繋がり、ひいては「強気の交渉ができるかどうか」にも繋がってきます。自分達に自信があるからこそ、「さようなら」と言えるわけです。

ぜひ買収案件検討を始める前に、まずは自社を見つめ直してください。ガッツリブレストをやってください。その上で、最愛・最高のパートナーを探しにいきましょう。

おわりに

「いいM&Aをする」とか云々以上に、「相手の良いところを探す」「欠点をチャンスに捉える」というマインドで仕事をした方が、他者と向き合った方が、幸せで楽しくないですか?

その「幸せで楽しい」気持ちって絶対相手にも伝わると思うんです。相手が全肯定してくれると信じられたら、自分の欠点も言いやすくなりますよね。

金勘定的なセンスでビジネスが上手くいく時代は終わったんじゃないかなって最近凄く思います。幸せを世に出来るだけ与える人が、最も対価をいただく。そして、その人に対価を渡すこと自体が、世に正の効果を与えている。

そんな時代になっていると痛感します。もっと前向きで気持ちよく生きていけたら。その大きな時代の中に、M&Aがただ存在するだけ。そういうマインドで今後もM&Aに向き合っていきたいと思います。

最後までご一読いただき、本当にありがとうございます。

細田 薫

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