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雨の真夜中
2024年5月15日 00:34
僕は失明宣言を受けて失う全部を 失う前にポータブルのテープレコーダーに話し閉じ込めてしまう事を思い付いた長く歩いて 吹き込んだのはつぎの様な事だった海は海の様に広がり木々は木々の様にそびえ光は光の様に射し最後に吹き込んだのは…闇は闇の様に覆った
2024年5月3日 00:41
サイドミラーの中静かな分離帯で転倒するジプシーの女の子を見た他の景色と一緒に時速 七十四キロメートルで吹っ飛んでいった僕は どうしようもなく独りだと悲しくなったんだけれど…そう云えば 食パンを一斤買いに来ていたんだったあヽそうか 僕は幸せなんだ
2024年5月3日 00:35
ねぇ この世界に 運命があるとしてそれは つまり こう云うことだろう僕と君は まるで…まるで漫画の様なまるでドラマの様なまるで舞台劇の様なまるで映画の様なまるで民謡の様なまるで小説の様なそんなエトセトラ
2024年3月28日 20:18
花火の枯れた後の匂いが好きだふと何かを想い出しそうになって何も想い出せないのに涙腺だけが 懐かしい何かを見て少しだけ体温より 温かくなる様なそんな具合いが 酷く愛おしい花火の枯れた後の匂いが好きだ
2024年3月26日 05:17
僕の身長を測った彼は 棺桶屋である貴方は幸せですよあヽきっと そうだろう顔の思い出せない 友人の葬儀があった日で焼き場の煙突から煙が軽く昇ってゆくのが見えた僕もあれになりたいどうぞ あたしゃ商売であヽやはり想い出は 地下に深い
2024年3月26日 05:13
鳥の話しを聞いたんだ 昨日羽ばたく為に 胸の筋肉は強く厚く全体の体重を下げる為に 足は細くなっていてあヽなんだそこにも自由は無いじゃないか仕方ないから 風船を買うよ風船をたくさん買うよ 仕方ないから
2024年3月12日 22:35
発狂したい願望ってある僕はたった一人でもたった一人でなくても構わないあの日 賢志くんが十三段の階段の頂上で言ってたじゃないかギロチンは いつも上から下だが奇跡の刃が下から上へと走らせたって一瞬も寿命は変わらないあヽ正に 正しく その通りだ最期の数秒か 数十秒に夢を見れるか 違うかなんてなんて些細な問題だあヽ発狂したら絵描きになろうカンバスは僕の心くらい広いやつ
2024年3月11日 20:49
賢志くんは旅に出るのだと言って大きな鞄を持って 歩き始めたその重さは尋常ならざる様子で玄関から 少しも離れない所で賢志くんは力尽きたすると賢志くんは鞄から大変 立派な安楽椅子を取り出し腰掛けて言ったあヽこの椅子を持って来て 本当によかったそうでなければ僕は絶望していたかも知れない薄っぺらになった鞄を賢志くんは ひょいと掴み膝掛けに代えた
2024年3月11日 20:39
忘れることそのこと以外の事こそが僕を抱いて眠る僕を抱いて眠る僕を抱いて眠るあヽいつの今も本能と理性と他の 忘れることそのこと以外の事こそが僕を抱いて眠る愛も希望も 夢も情もサキソフォンの調も他も
2024年2月16日 11:24
時代を彩るのは 熱帯魚なんだと交差点を渡りながらふと気付いたのは 僕の事だろう味気ない日常の中で誰かに話したかった 形の悪い想い出と夜のベンチに座った 顔の思い出せない僕と僕達いつもそうだった注釈や説明や傍線やルビを好んで本当は そうだと 誰も言っていないのに言われた気になっていることを信じた
2024年2月16日 11:11
僕は君のことをタンポポの様だと言ったタンポポの様に 可愛いと言ったタンポポと云うのは時折 パセリの様な顔をして皿の端に乗っているけど一応 食えるらしいけど食ったことはない君は帰り際明日は風邪を引くから会えないは と言った
2024年2月16日 11:05
この頃の時計の秒針はとてもスムーズに回る様でだから とても静かな夜で僕は古い夜を知らないけれど古い夜も こんな感じだったんだと思うそれから カチコチと秒針の鳴る夜があってカチコチと鳴らない時計が生まれて僕は いずれ 深く 眠る
2024年2月16日 10:58
心当たりを尋ねた彼の見せた写真は夕陽であったこれ この色を長く本当に長く探したのだと言ったすまないが 僕が知るアカは赤と朱と紅しかないと答えると彼はうなだれ とぼとぼ と去った後ろ姿に影が長い夕陽を血の色に例えるのは僕にさえ嘘だ
2024年2月16日 10:51
魚の絵をな正面から描く奴ってなぁ案外 おらんもんな とかお前 そらぁ 横に寝た魚はな皿に乗った煮えたやつだぜなんて言やぁそうでもなかろうがけれど お前にゃ参るわな泳ぐのだろういいやぁ まだ寒いわさ