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チョーヤの戦略と自分の固定観念

東洋経済ONLINEのこの記事を読んで、いくつか驚いた点がある。

チョーヤと言えば梅酒だが、従業員が130人の会社であることを初めて知った。

えっ、もっと大きな企業じゃないの?だってあんなにCMを流しているのに!

なぜあそこまでCMに力を入れているのかというと、元々は、前社長金銅和夫氏のCM好きが高じてのことだそう。

会社が傾いたときも「会社が潰れるまでCMを打ち続けよう」という強い意思があり、社内からは社長の道楽だと言われ続けたそう。

思い返してみれば、「さ~らりとした梅酒」のフレーズほどに、長いあいだ自分の記憶に残りつつ、現在も使われているCMを考えてみても、ぱっと思いつかない。

そして、多くの人が梅酒と言えばチョーヤと連想するものだと思うが、その礎は自分が想像していたものよりずっと深かった。

1950年頃、創業者・金銅住太郎が考えた自社製品とは

1. 国内ではあまり手掛けられていない商品であること
2. 海外にはない日本独自の商品で、将来、海外でも勝負できる可能性があること 
3. 突飛なものでなく、身近で親しみやすい商品であること

これに合致するのが梅酒だったのだが、当時梅酒とは家庭で作るもの。1959年から手がけてきた梅酒は、テレビCMを打ってもなかなか消費者の心には響かなかった。

しかしそれから15年くらい経つと、日本人の生活様式もだんだん変化し、梅酒を作らない家庭も増え、売上が伸び始めた。

苦しい状況でも最初のスタイルを15年も貫き通した成果だ。

しかしここで、今まで梅酒に見向きもしなかった他社も参入し、熾烈な価格競争に追い込まれる。

チョーヤは昔からの変わらない製法で、原材料は梅、糖類、酒類の天然素材のみを使用していたが、他社の、酸味料のクエン酸を中心に香料、着色料、そして梅のエキスを少しだけ混ぜたものといった商品には価格ではとても対抗できず、シェアも往時の3分の1程度に落ち込んだという。

このため、自分たちの製法の価値を明らかにすることにしたのだ。

まずは業界として、一定の規格を定める運動を展開しました。和歌山県などの後押しもあって、2015年1月、酒類の業界団体の1つである「日本洋酒酒造組合」が、梅と糖類、酒類だけを原材料とする梅酒を「本格梅酒」と定めてくれました。和歌山県の分析では、酸味料などを加えた梅酒と比べ、「本格梅酒」はポリフェノールやカリウムを多く含む傾向があるとのことです。チョーヤ梅酒の強味は、その製品の9割以上がこの「本格梅酒」に該当することです。

2015年といえば、わりと最近の話だ。

自分はここ数年、身体に悪いとされる添加物やあらゆる食材に対して関心があり、特にたくさんCMを打っている大手の量産品こそ、同じ規格のものを大量に生産するために、そういったものを大量に使用しているという勝手なイメージがあった。

酒類というものは、そういった菓子やインスタント食品といったものよりは使う材料は少ないのだが、その中でどれだけシンプルな製法で味のクオリティを保つかという追求は、量産品ほど薄いような、これも勝手な思い込みがあった。

だがチョーヤは国産の梅100%を使用した伝統製法を100年続けている。

チョーヤでは、農家の人々とともに土作りから取り組んだ高品質の紀州産南高梅を中心に100%国産の梅だけを、高さ8m、直径3~4mの貯蔵タンクに漬け込みます。その期間は長いもので18年に及び、梅の品種、酒の種類もさまざまです。つまり、じっくり「熟成」させた個性の違う梅酒が、約450基のタンクに眠っているわけです。

有名であり量産品であり、かつ伝統を守りながら、更にそれを一つの規格として確立すること。

今や食に関しては、小さな規模の手作りこそ、作り手のコンセプトがわかるから安心みたいな思いがあった。

もちろんそれも間違ってはいないのだけれど、そこで作られているものが分かったような気になるという自分のバイアスは、規模や知名度が大きくても小さくても生まれるものであり、あらゆるものごとを、もっとフラットに見たいと改めて思うようになった。

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いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。