裏表日影

小説家志望です。 ラノベっぽいのを多く書きますが、ファンタジー小説って呼称が好きです。

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小説家志望です。 ラノベっぽいのを多く書きますが、ファンタジー小説って呼称が好きです。

マガジン

  • 【小説】ソレット(2)

    針子村戦争から2年後。〈夜桜(やざくら)ソレット〉のエィンツァー・アイリスは戦闘力や成果は一目置かれているものの、その精神の不安定さから周囲に問題児と認識され、〈ソレット〉で悪目立ちする日々を送っていた。  当たり前のようにヴァイサーから叱咤を受けていたあるとき、〈夜桜ソレット〉の拠点に警報が響き渡る。 「というわけで、『ソレット・ストーン』が盗まれた」  そして新しい任務が言い渡され、全ての〈ソレット〉の人員は『ソレット・ストーン』の奪還とその犯人の捜索が最優先となる。  アイリスはタッグを組む事となったエィンツァー・ミドウリと慣れない捜査に乗り出すも、その道中はスムーズには行かず、思いがけない敵の方策に幾度も振り回される事となる。  盗まれた『ソレット・ストーン』と、盗んだ者の思惑と〈ソレット〉。  歴史の裏で暗躍し続ける者たちを描いた、リアル・ロー・ファンタジー。第二弾!!

  • 【小説】天国と地獄の(異世界?)生活

    高校二年生の夏休み。 絲色 宴(いといろ うたげ)、墓終 結空(はかおわり ゆあ)、薇 字名(ぜんまい じな)、そして教育実習生の琴石九 留見(こといしく るみ)の四人は、共にその命に終わりを迎えた。 しかし、死んだと思った四人が新たに目を覚ますと、「天使」によって迎えられ、架空として俗世に語られていた「天国」と「地獄」の存在を知る。 「天国」と「地獄」——『天界』と称される、死者の行き着くその地にて。 例に漏れずも、四人は新しい人生を歩む事に。 新しい世界、新しい人生。 しかし、全ての死者がそうであるように——過去からは逃げられない。 「死んで何かが変わると思った?」——それぞれの思いを抱えながら、四人の新しい共同(?)生活が始まる。

  • 【小説】ソレット

    人類史においてターニングポイントとなった二度の世界大戦。その凄惨さは充分に知られているが、その史実は全てではない。  非公的組織〈ソレット〉は、その凄惨な歴史の裏側で誕生し、1世紀以上経った現代社会においてもそれぞれの矜持に基づき4つに分派し、歴史の裏側で暗躍を続けていた。  その一派の〈十字(じゅうじ)ソレット〉に属するソウガは、ある日分派である〈四宝(しほう)ソレット〉の一人、ファンショが行方不明となった事を知らされる。  人員不足の〈四宝ソレット〉の代わりに、〈十字ソレット〉はファンショの捜索任務に出る事となったが、ソウガたち〈十字ソレット〉が向かったのは、〈ソレット〉の由縁(ゆえん)たる場所、「針子村(はりこむら)」であった。  甦った廃村と、行方不明の仲間。そして、我ら〈ソレット〉の始まり。  歴史の裏で暗躍し続ける者たちを描いた、リアル・ロー・ファンタジー。

最近の記事

【第0章|Lunatic】〔第0章:第2節|ひとひらに舞う〕

 一年後。 「なぜです!?」  バタン! とドアが勢いよく開き、二人の男が出てきたと思えば、二人はそのまま、照明の点いていない廊下を急ぎ足で渡り、別の部屋へ入った。  ある夜のことであった。  ビルの上階にて、スーツ姿の男二人は、次々と部屋に入っては、情報端末や電子機器を操作し、ときに破壊し、ときに鞄に詰め、さらに幾つかの書類を手に、部屋を出る――ということを、繰り返していた。  フロアにあるのは、両手の指ほどの部屋。その半分はもう、ドアが開けっ放しにされている。

    • 【第0章|Lunatic】〔第0章:第1節|{ひと区切り:エンドロール}〕

       立体プロジェクターや3Dメディアが参入し始め、立体映像媒体の本格化したこのご時世において「映画館」というものはある種、時代遅れと称される事がある。だが、書籍がいくら電子化されようと「本」という媒体は在り続け、その数は激減しようと「本屋」も存在し続けていた。通信販売が爆速で届く世界でも、「店舗」は存在し続けている。現金、テレビジョン、単体カメラ――近代技術の発展に伴って完全に消えた物と言えば、「フィーチャーフォン」や「新聞」などの、情報特化の産物くらいだろう。  世界情勢だっ

      • 【第5章|宴も勇き名を連ねて】〔第5章:第2節|願われた正義のために〕

         世界大戦時のことを『ヒトガタ大戦』と呼称するため、今回の件は『針子村戦争』と名付けられた。  〈四宝ソレット〉の春のヴァイサーは、一人ではなかった。エィンツァーが二人、背後から後を追うようにして、付いていた。  現れた春のヴァイサーは、的確な指示をして針子村を事後処理へ。  ――秋のヴァイサーの遺体を見ると、丁重に扱うように言った。  夜が開ける頃には、〈ソレット〉たちの協力で、大量の樹々を西まで運び、マジョガタの破片は全て地下へ――外から見れば、半壊しただけの村を造り上げ

        • 【第5章|宴も勇き名を連ねて】〔第5章:第1節|冬は越え切れず〕

           爆発物は、盛大に肉片を溢れさせた。  ヴァイサー・エィンツァーたちが見守る中、爛れた肉片を吐き出した濁流が、地下の奥一帯を侵食した。ドロドロの焦げた匂いを撒き散らし、土色が紫の混濁した力に染まる。  しばらくは土石流のような、泡の立つ流動が発生していたが、やがて静寂と澱みだけが残され、命の証は一つも見えなくなった。  ――〈十字ソレット〉のエィンツァー・ソウガは、仕事をやり遂げた。 「――悪いが、この場の解析と事後処理が済むまでは、触れさせてやれない」  ……だが、探す

        【第0章|Lunatic】〔第0章:第2節|ひとひらに舞う〕

        • 【第0章|Lunatic】〔第0章:第1節|{ひと区切り:エンドロール}〕

        • 【第5章|宴も勇き名を連ねて】〔第5章:第2節|願われた正義のために〕

        • 【第5章|宴も勇き名を連ねて】〔第5章:第1節|冬は越え切れず〕

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        • 【小説】ソレット(2)
          2本
        • 【小説】天国と地獄の(異世界?)生活
          8本
        • 【小説】ソレット
          20本

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          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第4節|世は情け、故に常に——〕

           ダンガを纏う一帯――と呼ぶべきように。  空気の斬撃による球体が、ダンガの周囲に唸っている。  轟々とびゅうびゅうと――和服が風剣に合わせて靡く。  二十メートルほど離れたゴルガロが、髪を風に吹かれながら、首を横に振り笑みを漏らした。 「……俺には無理だな、こりゃ」  その手には一本の矢が――矢にしては太くて長い。羽根とシャフトの境には網がくくり付けられており、中には例の――『爆発物』が沢山。  ゴルガロの背後は、ダンガによって吹き荒れていた。  そして前方も

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第4節|世は情け、故に常に——〕

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第3節|{打ち破りし者:ブレイカー}〕

           位置に着いたダンガ――ゆっくりと、風剣を抜く――。 「どのくらい掛かる?」  十数メートルほど離れ、前の方に立つゴルガロ――両手には両刃刀。背中越しに、ダンガに叫ぶ。 「さあ――最短五分だな」 「オーケー……今度それ、貸してくれよ。面白そうだ」  ダンガが抜いた風剣の刀身は、大きく湾曲していた。そしてその表面には、とても剣とは思えないほどの、無数の線――細い溝が、鍔から鋒まで渡っている。 「簡単に見えるかも知れないが、こいつは……抜くのでさえも、ひと苦労なんだぜ

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第3節|{打ち破りし者:ブレイカー}〕

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第2節|交錯〕

           ――『ヤマタノオロチ』……(仮)。  その全身の歪さは、幸か不幸か――全体の動きが鈍い原因だろう。  八つの頭は長い首があるが、八つの尾は短く、足は太く短い。  ――動きが良いのは、首から先のみ。  なら、胴体を――とは、簡単にはいかないが。  キキの『蛇腹剣』――向かって左側で奮闘する飛び道具(?)は、二つの頭に翻弄されており……届きはするものの、致命傷にはならない。キキに喰らい付こうとした頭に、クルキが冷風を浴びせるが、槍の方がまだ効果的だ――案の定、迫る顎に、クルキは

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第2節|交錯〕

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第1節|明くる日の{遺志:レガシー}〕

           ――――。  ――――――――。  ――――――――――――――――ッ――――……………………。  急激に覚醒した意識――だけの場合、身体は付いて来ない。  感覚より先に、思考が動き出す――も、情報は身体感覚より伝わるが故――――自身が置かれた状況を顧みる。  開かない――開きたくない、開けない目。右腕は頭上に投げ出されているが、空気振動は感じない。――そもそも体勢が直立じゃない。寝ているようだ。  身体の感覚が戻る――下半身が、かなりキツく埋もれている。幸か不幸か―

          【第4章|天秤と邪神】〔第4章:第1節|明くる日の{遺志:レガシー}〕

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第4節|咆哮〕

           ぶっちゃけ――囮班に取っては喜ばしい事象であった。  傷つけないよう殺さないよう気を遣っていた対象は、改造人間であったことが発覚――そのまま斬り刻んで良い――どころか逆に、絶対に世に出してはならない、危険極まりない滅殺対象になったのだ。  グレンはその通り――『殺して良い。寧ろ殺せ。絶対に村の外に出すな』と命じた。  十字剣が役に立つとき。  ――デメリットを言うなれば。 「割とこいつら、力強いじゃん!」  人間にしては――平均年齢が高めだった人体にしては、数値にせずとも大

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第4節|咆哮〕

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第3節|第七衛生管理備局〕

           ――『弾針』は突き刺さらなかった。  グリベラの肌に触れることなく――弾かれて、金属の細い針三本が、地面に落ちる。  顔を下ろしたグリベラ――グレンに向けて、余裕と嘲笑の笑みを浮かべ返す。 「――身体強化は、全身を守護しています。……マントじゃなければ傷つくとでも?」 「――君は自分が学習していないという、事実に傷つくべきだ」  キキがグレンの脇から右手を――ついさっきと同じように、グレン越しに『蛇腹剣』を伸ばす。 「もう見――ッ⁉︎」  グリベラの右半身が強打され、グリベ

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第3節|第七衛生管理備局〕

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第2節|人の形をした「何か」〕

          「……アア……ホンットに来やがった……」  女はその真っ暗な瞳で、四人を見返していた。  ウェーブ掛かった黒髪には細い稲妻のようなプラムカラーのメッシュが、左右それぞれの触覚を割る。目元は隈が濃く、痩せた頬に青白い肌と、かなり不健康的であり、その顔立ちは異国の造形であった。分厚めの本を何冊か積み上げ、両腕で抱き抱えている。  ――と。  ソウガが観察し終えたときには、クルキは『秋の楔』を放っていた。  小さな刃物は縦に回転しながら、真っ直ぐ女の顔に――刺さらず。  寸前で何

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第2節|人の形をした「何か」〕

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第1節|陽は傾き、夜は蠢く〕

           南奥展望台――駐車場の奥に停車した、白いバンとワインレッドのSUV。  傍らに、胸に金十字を刻んだ者が八人。黒い帯を締めた白の和服女が一人。  カルトの集会のような光景だったが、幸運なことに、山道を通過する車はいなかった。  SUVの開いた荷席に腰を下ろし、自身の『個有武具』を取り出したグレン。  それは〈十字ソレット〉では、唯一の飛び道具――『十字弩』。  その射出武具は変わった造形であり、本来左右に伸びている孤弦は、左右ではなく上下に広がり、柄までを含めても、約三十セン

          【第3章|闇の継承者】〔第3章:第1節|陽は傾き、夜は蠢く〕

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第4節|憂いの乙女〕

           Once upon a time。  まあ昔とは言っても……ここ数年の話ですが。  とても仲の良い、魔女の姉妹がおりました。  姉妹は両親も魔女であり、そのまた両親も――そのまた両親も、魔女でした。  当然ながら「魔女」として育ち、立派な大人の魔女になりました。 「――それ長い?」 「シダレ」 「だって面倒――」 「まだ閉じてろ」  栗鰓餡菜は、シダレとグレンにニッコリと微笑み、再び口を開いた。  姉妹は人間の学校に通いましたし、魔女の学校にも通いました。それはもう熱心

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第4節|憂いの乙女〕

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第3節|手に余りある枯れ尾花〕

          「朗報。――帰って来た」  メイロの声に待機していた一行が、それぞれ立ち上がる。  駐車場に入ってきた四人は……遠目からでも、見るからにズタボロだった。 「ドンソウ、シダレ、救急キットを」  グレンはそれだけ言うとすぐ、『基本戦闘服』のメイロと先に、四人の元へ。  全員ずぶ濡れだが、『基本戦闘服』は役に立っていたようだ。身体欠損や視認できるほどの大きな負傷はない。顔にはところどころ傷が見えるが、どちらかと言えば、疲労感の方が強く顕れている。  ソウガの顔を見てグレンは訊いた。

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第3節|手に余りある枯れ尾花〕

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第2節|Phenomenon〕

          「ホントにこれ登ったの?」  『北の岩崖』を見上げるのは――クフリとガンケイ。  月明かりの下。針子村の北東。  昨夜と同じく、『基本戦闘服』に十字剣。十字短剣と『個有武具』。 「そう。ちゃんと上まで登ってね。死にかけたような気がするけど、きっと大丈夫。――高いところ苦手?」 「特別苦手じゃないけど、好んで夜中に登りたいとは思わないのよ」 「昨日のおれもそうだった。グローブは?」  クフリは波打つように、軽く指を動かす。 「大丈夫。馴染んだわ」 「じゃあ行こう。先は短いようで

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第2節|Phenomenon〕

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第1節|地方創生観光地区調査〕

           二日目。  時計の針が太陽を差す頃。針子村の駐車場に、白いバンが停まった。  降りてきたのは三人。  全員が紺色のスーツを着用し、ネクタイを締め、名札を下げていた。足元だけはビジネスシューズではなく、ハイキングシューズだった。  アンテツとバンキは黒縁の眼鏡を掛けると、ドンソウと共に駐車場を出る。  駐車場から南のセンター通りとの間。  民家の前の古い簡素なベンチで、眠りこけるように座っていた老人に、アンテツは声をかける。 「こんにちは」 「…………」 「…………こんにち

          【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第1節|地方創生観光地区調査〕