「ラザニア」を食べに、高円寺に。
幸福な日だった。
そんな感想を抱く日はほとんどないけど、この日はまさに「幸福」という言葉がぴったりに思えた。
阿佐ヶ谷は、初上陸。
あぁ、ここは好みの街だ。と、南阿佐ヶ谷の駅の階段を上がり、街を一目見た瞬間に思った。
もともとは違うお店に行こうとしたが、わけあって、「ラザニ屋」というお店でランチをすることになった。名前から推測できるように、ラザニアの専門店だ。
この決断が、結果的にいい方に転ぶことは、このときのぼくらはまだ知らない。
南阿佐ヶ谷の駅から、阿佐ヶ谷駅まで歩き、そこから高円寺駅のほうに向う。人通りのない飲食街を抜けると、そこからは閑静な住宅街。本当にこの先にお店があるのかと思うくらい、静かだった。飲食店がありそうな気配はまるでない。
工事現場で汗水流して働いている人、地元民であろうラフな格好で歩く人とすれ違う。通り道にあった中学校からは楽しげな声が聞こえた。これでもかってくらい日常が、春の風とともに漂っている。
南阿佐ヶ谷からずいぶんと遠回りして、ようやく「ラザニ屋」に着いた(実際は高円寺が最寄り駅です)
カウンター席のみのちいさなお店。テイクアウトもやっているらしい。
とりあえす定番の「ラザニ屋のラザニア(税抜き 1320円)」を頼む。
店内はかわいらしくて、ゆったりしていて、タイルのカウンターがおしゃれである。内装はもちろん、調理器具、小物、流れる音楽に至るまでこだわりが感じられる。
スープとサラダ(めちゃめちゃおいしい)を食したのち、オーブンから取り出された熱々のラザニアが目の前に置かれた。
ぐつぐつと沸き立つチーズとベシャメルソースの海。それだけでヤッホーイという感じである。
お皿の中央にラザニアとたぶんトマトがミルフィーユされ、表面にミートソースがかかっている。
本当においしかった。
おいしいものは食べるだけで満足感を得られる。食って素晴らしい。
店主は気さくな方で、ラザニア専門店を始めるようになったきっかけや、よく行くお店についてざっくばらんに話してくれた。
その流れで、ぼくはあまり食に興味がなかったという話をして、その理由を聞かれた。けど咄嗟のことで、「なんでだっけ?」とてんぱってしまった。
「えっと・・・コンビニとかで普通に満足してたんですけど、ある日外食したとき、「うまい」ってなって、やっぱプロは違うなと。それで、いろんなお店を巡るようになったんです」
と、答えた。なんだか違うなと思ったけど、そのまま会話は違う方に行ってしまった。
ラザニアも絶品なうえに、会話も楽しめて、十分に満足してお店を出た。
歩いている最中も、食に興味をもった理由をずっと考えていた。「古書コンコ堂」の棚を眺めていたとき、あっと急に思い出した。
食べ物は毎日かならず口にする。毎日自分の体に入っていくものに無関心ではもったいない。そう思ったのがきっかけだった。
「ラザニ屋」の店主がこのブログを見ている可能性はほぼないが、本当はこういうことが言いたかった。
すっきりした。初心を思い出せてよかった。
そのあと、「gion」という喫茶店に行き、レモンティーを飲んだ。レトロで、なんだか懐かしい空間。
南阿佐ヶ谷駅に向かって歩きながら、なぜだか「今日はいい日だった」と思った。
こんなふうに思える日が増えればいいなと思った。
確固たる理由はわからないけど、「幸福」と思えたいまのこの気持ちを大事にしたい。
最後まで、読んでくださってありがとうございます!