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#28 地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅/比較的空いてる京都を走る②大報恩寺〜西陣〜大徳寺黄梅院〜正伝寺

桜が満開の週末。京都の有名どころは、たいへんな混雑だったようです。

さて、そんな中、よく晴れた土曜(2024/4/6)に、北野天満宮の近くにある大報恩寺までブロンプトンでポタポタ走ることにしました。ここには六観音菩薩像という、全国区の知名度はありませんが魅力的な仏像群があります。このたび、これが国宝に指定されたとの報に接し、しばらくぶりで拝観に行こうと思ったのです。
嵐山近くの拙宅から約6キロ。大した運動にもならない距離ですが。

◆ 平野神社

後になって「しまった!」と思ったことが一つ。
どうせ、運動にもならない距離なのだがら、嵐電北野線で輪行して北野白梅町まで行ってもよかった。
この路線には、桜のトンネルがあるのです。

しかしこの時は、そんな考えも浮かばぬまま、嵐山から、三条通、丸太町通などバスの多い幹線道路をなるべく避けて走ります。

京都は決して自転車フレンドリーな町ではありません。一般に道幅が狭いうえ、バスや、車幅の広い外国車が多いのです。
さらに、側道からふらふらと、自転車を無視するかのように出て来る車が多いこと。
そんなことも、京都をいまいち好きになれない理由の一つではあるのですが、北野天満宮や上七軒を中心としたエリアは結構好きな場所です。ときどき自転車や嵐電で散歩に来ています。通勤の便を無視できるなら、住みたい町。

大報恩寺の前に、桜の名所として有名な平野神社へ。
京都へ越してきた当時、地元の方々に桜の名所を尋ねると、よくここを勧められました。約60種の桜が植えられ「桜の博物館」と呼ばれるそう。
混み始める前に、と9時半頃に到着しましたが、既に結構な人出。

桜園へは、別途500円の入場料が必要。中へ入ると、満開の桜と菜の花。

確かに春爛漫の美しい風景ではあるものの、郊外の河川敷へ行けば、もっと雄大な広がりを、それも無料で堪能できるよな、と、ひねくれた感想を抱いてしまいました。

◆ 大報恩寺

北野天満宮の北側をまわり、上七軒通の北側の住宅地の中を、少し走ります。

▲ 大報恩寺 参道

大報恩寺は、鎌倉時代初期にひらかれた真言宗の寺院で、応仁の乱でも焼失を免れた本堂は洛中最古といわれ、国宝に指定されています。
この本堂の建設にあたり、棟梁を務めた長井高次の妻「おかめ」の物語が伝わっています。

寺伝によると本堂創建のとき、大工棟梁長井高次が柱の一本を短く切ってしまい、深く悩んでいるのを見た妻の亀女が、名案をだして助けた。しかし亀女は女の入れ知恵が世間に洩れては夫の名声に傷がつくと、上棟式を待たず自害したという。この塔は高次が亀女の冥福と、本堂の安全を祈って建立したもの。千本釈迦堂では毎年亀女の福徳を慕う人で「おかめ節分」が行われる。

京都観光オフィシャルサイト「京都観光NAVI」より  

現代に生きる我々の価値観からすると、これは果たして美談と言えるでしょうか。むしろ男尊女卑が招いた悲劇と読み取れます。
ともあれ、おかめの名を冠した「阿亀桜」が満開を迎えていました。これを目当てにやって来る人は決して多くはありませんが、白いドレスを着飾ったインスタグラマーの姿なども。

▲満開の阿亀桜

一方で、有料の本堂や霊宝殿を詣でる姿は僅か。
無人の本堂で、応仁の乱当時につけられたと言われる刀や槍の傷が残る柱などを見学してから霊宝殿へ。

今般、国宝に指定された木造六観音菩薩像は、如意輪、十一面、馬頭、千手、聖、准胝の六観音が揃って残されている稀有な例だそう。作者は運慶・快慶らの流れを汲む鎌倉時代の仏師・定慶。六観音いずれも、繊細で均整が取れた傑作で、しかも保存状態がとても良い。全国的に名が知れていないのが不思議でなりません。

この霊宝殿には、快慶の手による釈迦十大弟子像も収められており、こちらも表情豊かな傑作です。
本堂と霊宝殿、拝観料は合わせて500円。その価値は十二分にあります。

大報恩寺の脇に、京町家を改装したカフェがあります。人気店故ピーク時間帯には入れないこともあるので、早めにランチ。スタッフがブロンプトンに関心を示してくれました。

◆ 西陣をポタポタと

このまま帰宅するのも勿体ない日和なので、特に目的地も定めず、ポタポタともう一走りすることにしました。
工房や住宅が集まる西陣の一角に、雨宝院という小さな寺院があり、まだ行ったこともないので立ち寄ってみました。コンパクトな境内に様々な種類の樹木が植えられており、順に花開いていくようです。

▲ 雨宝院境内

このあたりは小規模ながら街並みも整備されて、居心地の良い一角。西陣織の工房なども軒を連ねています。わたしは特段織物に造詣が深いわけではありませんが、気に入った布を買い集めるのは嫌いでなく、自宅にはインドネシア、タイ、ラオスなどの織物が一山、実用化の見通しもないままに眠っています。ここで魅力的な布に出会ってしまったりしたら、散財したうえタンスの肥やしにしてしまうのは目に見えているので、涙を呑んで通過。

▲ 西陣の街角の桜
▲ 雨宝院そばの小さな園地
▲ 風情ある一角

銭湯を改装したカフェ「さらさ西陣」。しばらく前に、おっさん1人で勇気出して入ってみました。間違えて女湯に入ってしまったが如き居心地の悪さはなく、トルコライスを美味しくいただいたものです。本日は、既に昼ごはんを済ませているのでパス。

▲ 以前の訪問時の写真です。

◆ 大徳寺

住宅地を北上し、大徳寺へ。ブロンプトンならあっという間の距離です。
大徳寺というと有名な大仙院に人が集まりますが、そのほか、春季特別公開ということで、織田信長像が有名な総見院、島根県の足立美術館の庭園で知られる中根金作氏が復元した方丈庭園を有する興臨院、さらに千利休作庭と伝わる枯山水が残る黄梅院を拝観することができます。三院共通券、2100円也。
この中では、わたしは黄梅院が特に気に入っています。前回は紅葉の季節に訪れました。

住職がいらっしゃるタイミングだと、一人一人の参拝者に対して、それぞれに向けた言葉をご朱印帳に書いて下さいます。

▲ 「舟を呑む魚は支流に遊ばず」
黄梅院の住職が書いて下さった言葉。一千円也

◆ 正伝寺

まだ日は高く、暖かい。
このまま家路につくのはいかにも勿体なく、鴨川沿いを上賀茂神社まで一走りした後、久しぶりで鷹峯あたりまで上ってみるべえ、と西へ。
コンビニで飲み物を買い、一休みしていると、道の向かい側に「正伝寺」という小さな案内板がありました。聞いたことのない寺院なので、検索してみると、比叡山を借景にした枯山水のある、高台に建つ寺院とのこと。

鷹峯を目指すのは中止し、代わりに住宅地の中の緩やかな上りを北へ走り、やがてこぢんまりとした山門に至りました。

▲ 正伝寺山門

ブロンプトンを停め、静かな木立の中を登ってゆきます。
その先には、静謐な空間が待ち受けていました。

▲ 背景は比叡山

どうして、今日までこの場所を知らずにいたのだろう。

濡れ縁に腰を下ろしているのは、わたしのほか、上品な妙齢の御婦人だけ。
枯山水の向こうに二本の桜。雑木林の向こうには比叡山。
宇宙の多重構造を実感させられるような風景。
聞こえるのは、鳥の囀りばかり。

この寺のこの風景、実はデイヴィッド・ボウイや谷村新司が愛したという、知る人ぞ知る別天地。

ここに一日中腰掛けて、光線の変化を感じながら、何も考えずに本でも読みながら過ごしたい。
公共交通機関では訪れにくい場所でもあり、ブロンプトンを連れての旅にぴったりです。

3年半暮らしながら知らなかった京都の魅力に触れた一日でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。これからも、noteのネタがない時は、こんな話題の記事も書いていきたいと思います。
これまでのローカル線とブロンプトンの旅、こちらへまとめております。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。



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