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#15 地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅/小江戸川越と春爛漫の荒川中流を走る

2023年春、長年暮らしていた小江戸川越へ「里帰り」した時の記録です。初日はブロンプトンで飯能や高麗を訪ねました。明けて4月1日、今日も晴天。

◾️note公式マガジン「おでかけ 記事まとめ」「#旅のフォトアルバム 記事まとめ」に、本稿をピックアップしていただきました。ありがとうございます😊

▼ この旅の、ここまでの記録はこちらです。



🔲2日目 荒川CRと北本の里山へ

4月1日(土)。7時に目覚めました。
安宿の小さな窓から見える空は快晴。
昨夜の酒も残ってない。こんなにも、早く走り出したくて仕方ないのは久しぶりです。
それでも食事はちゃんと食べて、8時過ぎに走り出しました。

▲ 朝の大正浪漫夢通り

◆ 荒川サイクリングロードを北へ

今日は、荒川サイクリングロードを北上して吉見桜堤へ。帰りは東岸の田園地帯の道を拾いながら戻ってくる予定です。

伊佐沼の上手を通り、運動公園の脇を抜けて、荒川の堤防へ。
堤防は、菜の花に埋もれていました。

▲ サイクリングロードへ上る踏み跡で

この季節、菜の花、桜、スミレ、そして若葉が河川敷を彩っています。ロードバイク何台かとすれ違い、続いて5台ほどの列が私を追い抜いていきました。ついつい競争心を煽られて追いかけたくなってしまうが、自重。ブロンプトンでロードバイクと競っても勝ち目はありませんし。

▲ CRを行き交うロードバイク

きょうは肩の力を抜いて、のんびりゆっくり走ろう。そう割り切ると、すれ違うライダーの表情がみな緊張感で引き攣っているように見えてなりません。自分もロードバイクに乗っているときは、いつもあんな顔つきで走っているのでしょうか。ロードバイクの疾走感は、プロンプトンでは逆立ちしても味わえないものですけれど。

ホンダエアポートを過ぎました。早くも、上空からプロペラ音が響いています。

その先は、堤防上をひたすら走る道もあるのですが、圏央道を潜った先から河川敷へ下ります。河川敷へ降りると、灌木が生茂り小川が流れ、一見北海道のどこかのような広大な耕作地もあります。小径車でのんびり走るなら、こちらのルートの方が面白い。

▲ 初夏の北海道のような‥

◆ 吉見桜堤

そして、吉見桜堤の入り口に到着。
まだ9時を回ったばかりというのに、堤防上の遊歩道は人だかり。駐車場へ出入りする車も多く、桜並木の入口は混乱気味。
ギヤを落としてゆっくりと走り抜け、再びゆっくりと戻ります。そして、ところどころ立ち止まって写真を撮りながら3度目。

▲ 吉見桜堤

ランドセルを背負った子供と両親の姿が多くみられます。今日は4月1日。土曜日ですが、家族で神社へお参りに行ったり記念撮影をしたり、また新一年生の門出を祝う地域の行事などもあることでしょう。

桜堤でしばらく過ごした後、荒川を渡ります。ここは川幅が2537メートル、川幅日本一の場所。とはいっても滔々と水を湛えた大河が流れているわけではなく、大半は河川敷で、耕作地も人家もあります。
道幅が狭く車の通行も多い県道東松山鴻巣線を途中で外れ、滝馬室橋という仮橋のような小さな橋で、荒川本流を渉ります。
初夏になると赤いポピーが一面を埋め尽くす河川敷を少し走り、一般道へ戻りました。

◆ 高尾の田園地帯/緑のトラスト保全地

荒川東岸の、上尾〜桶川〜北本あたりは、河川敷にサイクリングロードもありますが、のどかな田園地帯に点在する神社やお寺、それに石仏や石碑を巡りながら、急がずペダルを回すのが楽しい道。
東北勤務を終えて川越へ戻った2000年頃から、いったい幾度ここを走ったでしょう。その間、この地域は乱開発が進むこともなく、穏やかな田園風景が残されています。

▲ 一面の菜の花

耕作地と雑木林の間を走っていくと、高尾氷川神社の手前に北向地蔵が立っています。泥団子を供えると願いが叶うといわれ、本当に願いが叶ったらお礼参りに来て、また泥団子を供えるのだ、といった縁起を記した看板があります。享保年間に建立されたそう。もう300年もここで、地域の人たちの暮らしを見守ってきたのですね。

▲ 高尾の北向地蔵

高尾氷川神社へ立ち寄って柏手をうちます。本殿は修繕中で足場が組まれています。入学式を迎える家族が正装で記念撮影をしていました。

このエリアには、トラスト運動によって保全されている谷地や、高尾さくら公園やキャンプフィールドがあります。公園の駐輪場にブロンプトンを停め、少し歩くことに。
小高い丘の上に立つ一本桜の下に腰掛けて、お茶を飲む老夫婦。
こういう何気ない光景に、人の幸福を感じるようになってきました。

緑のトラスト保全地の遊歩道へ足を踏み入れます。かつては日本中にあったであろう、雑木林に囲まれた小さな谷地。このような里山の自然は、人の手が入らないとたちまち荒れてしまいます。今日も近隣の皆さんでしょうか、草刈りや階段の補修に汗を流しています。
遊歩道の脇に、立派な一本桜。舞い落ちる花びらの絨毯が絨毯のよう。
その先はスミレの生垣が続きます。
この保全地は、きっと地域の皆さんの誇りであり、アイデンティティなのでしょう。

▲ 緑のトラスト保全地

◆ 石戸桜堤〜泉福寺〜エノボク〜伊佐沼

さらに南下して石戸桜堤に着くと、菜の花の斜面の下の駐車場は大渋滞。
ここはのどかな堤の上をのんびり通り過ぎます。

▲ 石戸桜堤

石戸宿では親子連れの自転車2組を追い抜きました。
今日は、自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務化される日。
この2組の親子、共に子供たちはちゃんとヘルメットをかぶっているのに、親はノーヘル。
大人は大丈夫という自信でもあるんでしょうか。

わたしも以前はヘルメットをかぶるのが大嫌いでしたが、40歳を過ぎてロードバイクを再開してから必ず着用するようになり、今ではノーヘルでは怖くて乗れません。これまでにも少なくとも2回、ヘルメットで命拾いしていますし。

県道を外れ、泉福寺へ。
ここは晩秋の銀杏並木の黄葉が見事。春爛漫の今日は可憐な若葉が芽吹いています。

▲ 泉福寺山門
▲ 芭蕉句碑に寄り添う桜も見頃

ロードバイクだったら一気に駆け抜けてしまう風景の中、松尾芭蕉の句碑などに足を止めながら、榎本牧場に到着。アイスを買って休憩。
2年半ほどのご無沙汰の間に、バーコード決済が使えるようになっていました。
牛舎には生まれてまだ一週間にもならない仔牛たちがいました。まだ立ち上がることもできないようで、床に寝そべっています。
ただ、ホルスタインの雄とか、交雑種の子とかは、その運命が知れ切っているだけに、やわな神経のわたしは目を直視できません。

榎本牧場から上尾丸山公園へ向かう道沿いには原っぱがあり、春の花が咲き乱れています。
開平橋のたもとからは、そのまま東岸を南下することにしました。フェニックスゴルフコースの脇を抜けて上江橋をくぐるルートを取ろうと思っていたのですが、彼方の堤防上を走るライダーの姿が随分と多くみられます。
行ってみると、サイクリングロードの整備工事が完了して、舗装状態の良い広い道ができていました。
上江橋を渡り、川越へ。そのまま市街地へ戻るのももったいなくて、伊佐沼を一周していくことに。ここのヒビ割れだらけの舗装路は未だに何ら改善されてなくて、まるでパヴェを走っているかのよう。
散りかけた桜を愛でながら周回し、市街地への直線路は背中から風を受けて快調に飛ばしました。

▲ 伊佐沼のほとりで

◆ ワインフェスティバルの午後

さて、川越に来たら一度はうなぎを食べたいのですが、週末の有名店は大行列必至。
なので、北郊にあるロードサイド店へ。観光客はまず来ない立地なのなけど、13時半を過ぎて席はなお八割方埋まっています。上鰻重3800円。
新河岸川の桜を愛でながら一番街へ。昨日も立ち寄ったコーヒースタンドでアイスコーヒー。とてもクリアな味で、以前から気に入っているのです。隣の店で手拭いも購入。

雑踏の中ブロンプトンを曳いて南へ歩いていくと、蓮馨寺の境内がやけに賑やか。
幾つもの露店が出て、ワインフェスをやっていました。
市内あちこちに出ていたポスターには、開催日は先週末と表示されていたのだけれど、雨で順延になっていたのでしょうか。

誘惑を背なで断ち切り、本堂を詣でて今日のよき日に感謝し、もう一走り。
…なんてできるはずがありません。
つまみなしで4種類ほどを飲み比べ。強い日差しを浴びて、顔がもうポカポカ。

鐘楼の下では、サンバダンサーがステップを踏んでいます。
本堂に近い一隅には、街角ピアノを乗せた軽トラ。ワインや日本酒のカップ片手に、多くの人たちが幸せそうな表情でとり囲み、入れ替わり立ち替わりステージがわりの荷台に上る演奏者に拍手を送っています。

▲ 境内ピアノ🎹

コロナの前、この境内では、コーヒーフェアとかコスプレイヤーの撮影会が頻繁に開催され、週末はいつも賑やかでした。やがてコロナ禍で小江戸から観光客が消え、イベントもすべて中止されました。前職を辞め京都へ越すまでの約半年、早朝の散歩と夕方のジョギングでいつも立ち寄っていましたが、おびんづる様も福禄寿も和顔地蔵尊も、本堂の軒下から寂しい境内を見つめていたものです。
今日、和願地蔵尊の隣に腰を下ろして、このような日々が戻ってきたことの歓びを感じました。

自転車を曳いて、一旦ホテルへ戻ります。結構汗をかいたのでシャワーを浴びたいし、呑んでしまったから今日のポタリングはもうここまで。
ひと休みして装いを整え、だいぶ日も傾いてきた午後の街へ。
昨晩も行った喜多院の境内を抜け、成田山別院へ。この境内に祀られた恵比寿天に向き合ういます。不思議なことに、以前から、この恵比寿天の前で手を合わせて自問自答していると、目の前の霧が晴れるようなことがよくあるのです。

住宅地を抜けて三芳野神社へ。「とおりゃんせ」発祥の地と言われる神社です。境内には竹トンボを飛ばす親子連れ。ブランコをこぐ女の子3人。背中を押してやってるのはお父さんでしょうか。
映画「東京公園」とかに出て来るような、絵に描いたような都市生活の風景は、日本のごく小さな断片。多くの人たちはこんなふうに、生まれた町で衒いなく暮らしている。

大賑わいの氷川神社にお参りし、新河岸川の流れに沿うプロムナードを歩いて見立寺へ。ヒマラヤ杉の巨木が午後の町を見下ろしています。
高沢橋のたもとに腰掛けて、行き交う人々を穏やかに見つめる老人。その姿は、2〜30年後の私の姿かもしれません。30年前の川越に、わたしは大した魅力を感じていませんでした。一番街は路側帯が狭くて歩きにくく、大正浪漫夢通りは人気のないシャッター街でした。今では世界中から観光客がやって来ます。隠れ家のようないい飲み屋もあり、清流とは言い難いけど水辺の風景があり、一歩外に出れば里山の風景が広がっています。
そして、それらを作り上げているのは、人々の小さな手。
陽がだいぶ西へ傾いてきました。少し酔いも醒めてきたし、昭和の街のワインバーへ、久しぶりで行ってみますか。

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最後までお読み頂き、ありがとうございました。これからも、ブロンプトンを連れて地方都市やローカル線を訪ねていきたいと思います。
これまでのローカル線とブロンプトンの旅、こちらへまとめております。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。


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