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【79】北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 26.5日目 50代の転職活動、コロナ第2波、北の海辺へ

ロードバイクでの北海道一周・最終レグのスタートまで、転職活動などの話にもう少しお付き合いください。
早期退職を考えている皆さまの参考になれば、という話題提供です。

2020年の春。世界を襲った新型コロナの禍中で、こんなおっさんの転職がうまくいくものか心配しつつ、それでも面接に進める会社はいくつか出てきました。

▼ 北海道一周 ここまでの記録はこちらです。

◾️note「#旅のフォトアルバム 記事まとめ」に、本稿をピックアップして頂きました。ありがとうございました😊


◆ 54歳の就職活動

GW明けから、書類選考を通過した企業との面談が、徐々に始まりました。
オンライン面接など全く初めての経験で、最初は随分と緊張したものですが、慣れてくれば対面よりも話の内容そのものに集中しやすく、悪くはありませんでした。
自分でも驚いたことに、面談した5社全てで一次面接を通過することができました。気楽な独り身なので、年収やポジションに全くこだわらず、勤務地もオープンに職を探せたことと、あとは幸運だったとしか言いようがありません。

5月下旬。季節の変わり目を告げるような日差しが小江戸川越に降り注ぎ、柔らかな初夏の風が木立を揺らし、そしてコロナ禍で休業していた小売店や飲食店が営業再開して通りに人影が戻った日、最初の内定をいただきました。
続いて2社から内定通知をいただくことができました。残る2社のうち1社は最終面接前に辞退し、もう一社は残念ながら新型コロナの影響により採用計画を凍結せざるを得なくなったとのことで、先方から断りがありました。

▲ 内定第一号の午後、若葉に埋もれた蓮馨寺
▲ 高沢橋より北の空を仰ぐ

◆ 懊悩

内定を頂いたうちの一社に、北海道のとある名門企業がありました。
全国区の有名企業ではありません。しかし、長い伝統と信用を有し、常に革新を怠らない企業姿勢にかねてから感銘を受けていました。書類選考通過の連絡を受けた時は、嬉しくてたまらなかったものです。
一方で、同時期に応募した関西のある機関からも強いお誘いを頂き、前職並の収入とポジションを提示頂きました。担当する仕事にも、大きな社会的意義を感じていました。

この2社のどちらにお世話になるか。
早期退職はあっさり決断したのに、再就職先の決断は、2週間にわたり懊悩しました。
身体が二つあるなら、両方を選びたい。
毎朝、川越の寺社を巡って手を合わせ、自分は本当はどうしたいのか見出せないまま、自問自答を繰り返したものです。

最終的に、念願の北海道Iターンは見送ることにしました。
千載一遇のチャンスだけに、本当に苦しい決断でした。しかし最後は、人生百年時代、もう一度くらいは未知の土地で未知の仕事にチャレンジしてみたい、という気持ちが上回ったのです。
9月からは京都へ赴きます。60歳定年まであと5年半、それまでに、自分が愛する土地の役に立てるよう、もう一回り成長しよう。
大好きな北海道へ戻るのは、その後でも遅くない。

その後間もなく緊急事態宣言が解除され、6月後半は10日間ほど、国内のダイビングエリアを渡り歩きました。海外駐在時からの付き合いであるダイビング仲間たちとの再会は、また嬉しいものでした。

その年はなかなか梅雨が明けず、7月は大雨続き。そんな中、入社手続き、京都での転居先探し、引越し業者の手配、自宅を賃貸に出す段取り…
退職金の運用も決めねばならないし、粗大ゴミも処分しなきゃならないし…と、バタバタと過ぎていきました。

◆ 天候不順とコロナ第2波

さて、再就職と新生活の準備が一段落したら、夏の北海道へ走りに行きたい、という気持ちはずっと持っていて、7月中旬あたりから毎日のように天気予報と睨めっこしていました。
熊石から札幌まで走り切るには、現地までの往復まで入れて4泊5日を見ておきたい。無職なんだからそれくらいの日程確保は楽そうに見えるでしょうが、何だかんだと細々した予定が数日おきに入り、まとめて5日間を空けるのはなかなか至難の技でした。

▲ 2020年7月末 ようやく梅雨明け

7月末までに、就職や転居に関わる手続きはひと段落し、ようやく梅雨も明け、さて…と思ったが、8月に入ると今度は北海道が天候不順。
連日のように大雨が報じられていました。

体調は、ここ数年では最も充実しています。4月中旬に右腕のギブスが取れ、痛みが和らいだゴールデンウィーク以降は、天気さえ良ければロードバイクで走っていました。早朝のウォーキングと規則正しい食事を欠かさなかったこともあり、明らかに、以前よりも速く長く走ることができるようになっていました。
ただ、通勤がなくなった分、カロリー消費が減って体重が落ちないのと、血圧も上がり気味なのはよろしくないのですが。

◆ 新型コロナ 第二波

天候のほか、新型コロナの感染拡大も、出発を迷っていた理由の一つ。7月上旬から全国的に第二波が拡大している局面にありました。

現実には、自転車で一人で走っていて、感染したりさせたりするリスクは皆無に等しいでしょう。
現地までの公共交通機関での移動、宿泊、買い物や飲食の場面にしても、グループでの宴会旅行ではないから、マスク、消毒、人との間隔など、常識的な対応をしていれば、首都圏での日常生活よりリスクは低いはず。

埼玉県では連日数十人規模の感染者が発生していたが、さいたま市、越谷市など荒川の東側が中心、それもいわゆる「夜の街クラスター」が相当割合を占めていました。川越や所沢など県中部は、大規模な繁華街がないこともあってか、発生は散発的になっていました。

8月のはじめ、川越から荒川沿いに下って柴又帝釈天、さらに稲毛浜を経て小湊鐵道の懐かしい風景を愛で、養老山地を越えて外房へ。そして房総半島突端の野島崎まで210キロのロングライド。幾度も走った、そしてこの先しばらくは来られないであろう大好きな道を走りました。

▲ 柴又駅前
▲ 小湊鐵道 海士有木駅
▲小湊鐵道 上総鶴舞駅
▲小湊鐵道 上総鶴舞駅
▲野島崎
▲館山の海の幸

その晩、館山の寿司屋で伺った話だと、下総地方の感染者は一市町村で週に一人出るか出ないかというレベル、それも概ね感染経路が明確だそうで、同じ千葉県でも東葛など東京に近いエリアの状況とは格段の違いがありました。

ようやく北海道の天候が回復し、8月16日以降、安定した晴天が数日間続く見通しとなりました。
内地の記録的な猛暑に、もう耐えられなくなっていたこともあり、8月13日になって、えいやっ、と2日後の朝羽田を発つ航空券を予約しました。

◆ 雲石峠を越えて

出発の日、私は4時前に起床し、羽田空港を7時15分に出発するスカイマークで函館へ。朝市で刺身定食を食べてから、特急「北斗」に乗って八雲へ。乗り物はどれも、ハイシーズンの北海道とは思えぬほど空いていました。

▲函館から八雲へ

霧雨の八雲駅前でバイクを組み立てます。昨夜は早寝しようと思ったのに、折り良くというか悪くというか、注文してあったガーミンのエッジ1030が届き、センサーやアダプターの取り付けやテスト走行に時間を費やしてしまったので、結局5時間足らずしか眠っていません。そんなわけで少々身体が重い。
加えて、走り出すと、後輪にフレが出ているようで、小さな振動が伝わってきます。ニップルキーを持っていないので、調整のしようがありません。走行自体に支障はないが、コトコトと恥骨に響いてくるのが不愉快なこと。

これから越えていく雲石峠は、昨年春のライドの際、熊石から逆ルートで越えました。分水嶺がかなり日本海寄りにあって、八雲側はだらだらとした勾配が続いており、こっち側から上るのは気が進まないなあ、と思いながら走ったものです。路線バスで輪行という手もなくはないものの、八雲駅前と西海岸を結ぶバスは朝夕各1往復のみ。

要は、霧雨の中、35キロを自走するのが、一番現実的な選択肢なのでありました。

ただ、いざ走ってみれば、峠の麓までは、鉛川に沿ってほとんど脚に来ない程度の緩い登り。周囲の山は中腹まで霧に覆われているものの、路面は比較的ドライで走りやすい。何より、気温が20度程度と、記録的猛暑の内地からやって来ると別天地のような快適さ。
渓流を取り巻く森からは、セミの大合唱が聞こえてきました。

牧草地と渓谷の静かな道を快適に駆け、最後3キロは10%前後の本格的な登り。路面も荒れています。

霧が濃くなり、さらに雨と風が吹きつけてきました。

雲石峠に立つと、日本海側からの強風がまともに吹き上がってきました。ウィンドブレーカーを着てライトを点け、早々に峠を後にします。

▲濃霧の雲石峠

日本海側の下りは太平洋側と異なり、路面は濡れ、強風に煽られ、しかも濃霧で視界が効かず、慎重なダウンヒルを強いられました。

見市温泉あたりまで降りて来ると、ようやく霧雨が止み、再びセミの大合唱に包まれながらのライド。
そして、海岸に到着。面倒だなあ、と思っていた山越えだが、走ってみれば八雲駅からわずか1時間半ばかりの行程でした。

まだ13時半なので、海沿いの道をしばらく走りました。
熊石は平地がほとんどなく、家並みは海岸に沿って細長く伸びています。津波から高台へ避難するための階段がいくつか、背後の丘陵へと続いています。
都会から帰省してきたのか、大家族が家の前でバーベキューを楽しんでいる姿もありましたが、もやに包まれた漁村は人影も少なく、お盆休みの週末らしき賑わいはありませんでした。

▲奇岩の上の神社

町外れまで往復15キロほど走り、奇岩の上に建てられた社に立ち寄ったりしましたが、他に行くところといってもコンビニくらいしかないので、明日の食料を買い込み、山懐にある今宵の宿に向かいました。うら寂れた昔の公共の宿のような雰囲気で、部屋も昭和のビジネスホテルみたいでしたが、浴槽は分厚い石灰華に覆われたいいお湯でした。
再就職に備えて少し勉強すべきこともあり、湯上りに広い休憩室でしばらくタブレットとノートと向き合ううち、夕食になりました。食堂の客は、最初私だけ。そのうち日帰り入浴にきた客がポツリポツリと入って来ました。豊富な海の幸が並ぶ膳は悪くなかったが、あまり長居したい雰囲気ではなく、かと言って夜の街は遠く、一休みしてからもう一風呂浴びようか、と部屋に戻り、ベッドに身を横たえるなり、昨夜の睡眠不足故か、寝落ちしました。
付けっ放しのテレビの音で目覚めればもう深夜、大浴場はとうに閉まっておりました。

【走行記録(八雲〜熊石)】
走行距離:33.3Km
走行時間:1時間30分
平均速度:22.1Km/h
獲得標高:576m
消費カロリー:602kCal

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。次回は、ようやく「週末北海道一周」を再開し、岩内まで豪快な海岸線をたどります。よろしければ、続きもお読みいただければ幸いです。

わたしは、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。

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