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北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【26】10日目 中標津〜尾岱沼① 2015年10月16日

風雨に祟られた第5レグから3週間後。再び、秋深まる根釧原野を目指しました。
「週末北海道一周」2015年の最終レグは、本土最東端•納沙布岬を目指します。

▲ 10日目のルート

◆ 中標津へのフライト

飛行機の下に、うっすらと雪化粧した日高山脈。
その先にモザイク模様の十勝平原が広がっています。
雨と霧に祟られた前回を埋め合わせて余りあるような、最高の秋晴れとなりました。

▲ 新雪をいただく日高山脈
▲ 紅葉に染まる十勝平野

なぜか無性に、ヨーグ・ライター・トリオの "Someday My Prince will Come" が聴きたくなり、iPhoneにイヤホンを繋ぎました。
こんな日の旅にはぴったりの、陽光がゆったりと踊り、めくるめく美しい風景が展開されるかのようなメロディーが流れ、前途に待つ秋の根釧原野を思うと、浮き浮きしてきます。

進行方向向かって右側の席に座っていた私、はるか右前方に白糠あたりかと思われる街を認めた後、阿寒湖あたりでも見えぬものかと窓に張り付いていました。ふと、通路を挟んで左側を見ると、すべての乗客が「かぶりつき」の状態で窓外を見ています。
首を伸ばして隙間から覗き込んでみると、摩周湖のカルデラが見事に見えました。
摩周湖は霧に包まれていることが多く、晴れている姿を拝むことはなかなかできないとか言うが、私は今日を含めて4回、100%の確率で快晴のもとにある湖を見ています。因みに晴れた摩周湖を見ると、婚期が遅れると言われております。

前回は土砂降り、しかも薄暮の中で、ねずみ色の印象しかなかった中標津ですが、今日は北に連なる知床山脈の稜線がくっきりと浮かび、彼方には冠雪した羅臼岳まで見えています。国内有数の大規模酪農地帯ゆえ、色彩豊かな平原の美しさは言うに及びません。

▲ 遥かに知床連山を望む
▲ 快晴の中標津空港

さて、今回は、金曜日に代休を取得して、3日間の行程を組みました。
代休と言っても実際には、新千歳空港へ向かう前に、早起きして一旦出勤し、一仕事片付ける必要がありました。それでも13時には中標津に到着してくれるのだから、飛行機輪行は癖になります。
出発前が慌ただしくなるのは嫌なので、今日は予め自転車を輪行バッグに収納しておき、10時前に会社からアパートに戻り着替えを済ませ、輪行バッグを担いで、最寄りの地下鉄駅から新札幌へ。
これは時間節約が一番の目的ですが、もう一つは、買ったばかりのの輪行バッグを初めて使うためでもありました。慣れない輪行バッグだと、準備にどうしても時間がかかってしまうのです。

◆ 輪行バッグについて

先日立ち寄った某アウトドアショップで、大変コンパクトに畳める輪行バッグを見つけました。
日頃使っている輪行バッグは、ホイール収納ポケットが付いたタイプとしてはかなりコンパクトで、もう10年以上も重宝しているのだけれど、秋も深まって気温も下がり、それなりに暖かい衣類が必要となり、泊りがけのサイクリングでは荷物も嵩張ります。
そんなわけで、目に止まった輪行バッグを衝動買いしました。今回はこれを初めて使うのであります。

ただし、結論を言うとこのバッグは使いにくかった。
フレームとホイールをまとめて結束し、その上から輪行バッグをすっぽり被せて、下部のコードを絞る、という構造なのだけれど、このコードをしっかり引き絞るのが結構難しく、隙間が空いてしまいます。
私は、輪行時にはボトルなどに工具を入れてホルダーに取り付け、またシューズも輪行バッグに収納しているので、落ちてしまわないか心配。
それに、両輪を取り外すタイプとはいえ、横型の輪行バッグはやはり幅を取ります。ハンドルとサドルで車体を支持するので、エンド破損など車体トラブルにつながりにくいのは長所ですが、車中では通路を塞いでしまい、周囲の迷惑になります。
で、結局は縦型バッグと同じく、エンド金具とサドルの後部でフレームを支えて立てる必要があります。
よく、列車の乗降口に、横型の輪行バッグが客室への通路にはみ出して置かれているのを見かけるけれど、少なくとも鉄道を利用するならば、周囲に迷惑をかけぬよう、縦型バッグを使うのがやはり常識だと思います。

着陸して、預けた輪行バッグが出てくるのを待っていると、案の定、係員はコードで絞った下側を上と勘違いして、天地逆転の状態で丁寧に運んできてくれました。
そのまま地面に置かれるとフロントギヤやフォークを痛めかねないので、慌てて受け取ります。その弾みにバッグの隙間からライトが滑り落ちたりして、結構大変。

◆ 晩秋の原野を、海へ

今日は長袖の薄手アンダーの上に、Stem Designのニットジャージーのニューモデルを羽織っています。街での普段着にも使えそうなカジュアルデザインが気に入って、9月に上京した折に買ってきたもの。
この先も根雪になるまではなるべく自転車に乗りたいと思い、防寒着も相当数取り揃えました。今回はその中から、GIROのダウンベストと防水ウィンドブレーカーを持参。ウィンドブレーカーは、少々嵩張っても防水性が欲しい、と前回のライドで痛感し、結構な出費ではあるがゴアテックスの奴を新調しました。
タイツもまた、パールイズミの製品を新調。3日間のライドとなると、さすがに一着では間に合わないし、今持っているものはもう10年も穿いていて、パッドがかなりヘタっているのであります。

荷物の詰め直しやらトイレやらで、出発までに手間取ってしまい、走り出すまでに40分以上かかってしまいました。
しかも、iPhoneの充電ケーブルを忘れてきたことを発見。私がサイクリングで使用しているアプリ "Runtastic"は、かなりバッテリーを食うので、充電器と充電ケーブルは必携なのです。

前回は激しい雨のため、中標津の市街地は通り過ぎるだけだったので、ウォームアップ代わりに街を周回し、ドラッグストアで充電ケーブルを購入。根釧原野の中心的な街故、大型店も多く、買い物には不自由なさそう。
町内の街路樹は、紅葉がまさに見頃でした。その向こうに海別岳をはじめ、たおやかな山並みが連なっています。前回の灰色のイメージは180度変わってしまい、中標津は道東を走る拠点の一つとして、何度でも来てみたい町になりました。

ニットジャージーの上からダウンベストを着て出発しましたが、保温性の高いアンダーを着ているので、このポカポカ陽気では却って余計な汗を掻きます。ダウンベストを脱いで、丸めて背中のポケットに入れ、再び走り出します。

中標津から標津への道は、路面に小さなひびや穴が多いのが玉に瑕ですが、山並みを遠望しつつ、色づく牧草地を気持ちよく走ります。
30分ほどで「第1しべつ展望パーキング」と称する駐車場に着きました。
展望パーキング、と言っても高台などではなく、路傍にだだっ広いアスファルトの駐車場があるだけですが、目の前は収穫を終えた牧草地、その向こうは色づき始めた防風林、そして山々の稜線が連なる眺めは素晴らしい。
しばし見入ってしまいました。

▲ 第1しべつ展望パーキング

快調に走り続け、正面に海が見え、やがて国道244号線にぶつかりました。北海道一周のルートへ戻ってきたことになります。

▲ 海が見えた。

今日は正面に国後島がくっきりと見えます。国後は火山島ですが、この角度から見ると高い山々は見えず、緩やかな丘陵が連なる地形のように見えます。左手には、知床山脈が連なり、ピラミダスな二つの峰がひときわ目立っています。距離的に言って、手前が遠音別岳、奥が羅臼岳だろうかと想像。

▲ 標津の海辺にて、国後島遠望

ここもまた、立ち去り難くなるような風景でした。

※ 快晴の晩秋の午後。次は、季節外れのウィークディとあって人気のない野付半島で、日本離れした風景の中をを走ります。

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