見出し画像

北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【60】20日目 苫小牧〜室蘭② 2017年7月30日

週末や有休を利用して、50代のサラリーマンが、ロードバイクで北海道一周した記録。
2017年の夏、この日は雲の多いスッキリしない天候。苫小牧から室蘭へ向かって走っています。これから、イタンキ浜から地球岬への上りにかかります。

◆ 地球岬再訪

2015年の初夏に、札幌から地球岬まで走った時は、母恋から20%を優に越す急坂を登りました。
それに比べると、イタンキ浜からの道は、最初こそ少しキュッと登る箇所があるものの、間もなく傾斜は緩やかになり、その先は変化に富んだワインディングロードが続く走りやすい道。自動車の通行はほとんどありません。
しかも、手前に住宅地が広がり、その向こうに新日鉄住金の工場、さらに室蘭港を挟んでJX日鉱日石の製油所が立地するという、工場夜景ファン垂涎と思われるポイントもありました。稜線の間際まで住宅地が広がっています。この夜景を肴に毎晩飲めるとは羨ましいが、住民にとってはあまりに日常的な風景であり、私が勤務先のビルからの夜景を気に留めないのと同様かもしれません。

▲ 夜景が美しそうなポイント

この夜景ポイントからひとしきり登り、さらに急坂を下ると、断崖上の海を見渡すポイントに出ました。
ここからは、「金屏風」と名付けられた、海に突き出た断崖を眺めることができます。
確か、前回、母恋からの急坂を登り切ったところがこのポイントでした。その時は、札幌から100マイルを走り、最後に激坂を上り切って眺望がひらけた、という効果もあったろうし、素晴らしい晴天で空も海も紺青であったことも手伝って、感動と達成感でその場を立ち去り難い思いでした。
今日は、鈍色の海を背景に1枚シャッターを切り、さっさと地球岬へ最後の登りにかかります。

▲ 金屏風遠方

予想はしていたけれど、地球岬は大混雑でした。
一般の観光客、ボーイスカウト、中国からの団体。前回来た時も、中国からの旅行者を多く見かけました。不思議でならないのだけど、中国だったらもっとスケールの大きな景勝地がいくらでもあるだろうに、どうしてここへ来るのだろう。

※ 今思えば、中国からの旅行者と、台湾からの旅行者を、ごっちゃに捉えていたせいかもしれません。

▲ 地球岬

混んでいる場所は嫌、ラーメン屋でもなるべく行列したくない私。さっさと退散。
室蘭駅近くまでは、急坂のダウンヒル。海に飛び込んでいくジェットコースターのようで、なかなか気持ちが良い道。ただし最後の方はブレーキが発熱して効きが悪くなり、慎重に下りました。

◆ 絵鞆岬

さて、ここからは東室蘭を経由して伊達紋別へ向かおうと思っていましたが、考えてみれば、これでは長靴状の絵鞆半島のうち、足首から土踏まずのあたりまでしか走ったことになりません。
「北海道一周」を謳う以上、ちゃんと爪先まで足を運んでおかないと、手抜き工事のようでなんとも落ち着きが悪いのです。
しかし、千歳から予定の飛行機に乗るには、14時頃には伊達紋別について、輪行準備に取り掛かっている必要があります。
時刻は12時を回っていました。このまま伊達紋別まで直行するならば十分な余裕があります。しかし、絵鞆岬まで足を運んでからとなると、昼飯抜きで走っても、間に合わない恐れがあります。
仕方なく、今日の終着点は東室蘭駅に変更。「北の湘南」の異名を取る伊達紋別は、次回のライドの出発点に設定し、前泊してちょっといい酒場探訪なども楽しんでからスタートしたいと思っていたのだけど、仕方がありません。

室蘭駅から函館どっぐなどを横目に、半島の先端へ駆ける道は、一般的な産業道路。先端から対岸へ、東日本最大の吊り橋・全長1380mの白鳥大橋がかかっています。これを渡ることができたなら、絵鞆岬に寄ってから伊達紋別まで走ることも十分可能なのだけど、これは自動車専用橋であるので、絵鞆半島の付け根までぐるっと遠回りしなければならなりません。300円くらいの通行料金なら、サイクリストは喜んで払うと思われ、地球岬や登別温泉と組み合わせたサイクルイベントなんか開催すれば若干の投資回収前倒しにも寄与すると思うのに、もったいないことだと感じます。

白鳥大橋の橋脚の下に道の駅があるので、ここで昼ごはんにしようかと思っていましたが、施設内の食堂はどうも食指が動きません。外にある屋台村のような一隅は満席。ショップで売っていた「あげみそパン」で我慢。
今日はとことんパッとしない1日です。混む時期に混む場所に来る自分の責任なのだけど。

▲ 本日の昼食

絵鞆岬へは、どこか大企業の社宅と思しき団地を横目に、坂を登る。やっと交通量も減り、落ち着いた自転車旅の雰囲気になりました。

▲ 絵鞆岬への道

絵鞆岬には1組のカップルがいるだけでした。ここからの風景は、地球岬の豪快さには劣るものの、測量山がそのまま海に落ち込むオーバーハングした断崖を、横からではあるが望むことができます。噴火湾の方角に向けて眺望が広がっていました。雲のない日ならば、有珠山、昭和新山、羊蹄山、さらには渡島駒ヶ岳や恵山など、まさにヴォルカノ・ベイらしい風景を堪能できることでしょう。
静かな展望台に立つ看板には、絵鞆の語源はアイヌ語で突き出ている頭を意味する「エンルム」であり、明治維新まで室蘭地方を指す地名ですあったこと、慶長年間に松前藩の漁業基地として開かれ、交易所が置かれたことなどが記されていました。

▲ 絵鞆岬からの眺望

明治初期、イザベラ=バードは、森から約40キロの距離を6時間かけて船で渡り、夜8時過ぎに室蘭に着きました「大変愛らしい湾の険しい岸辺という風光明媚なところにある小さな町」で「怠け者のいる珍しい光景とこの界隈の不しだらな雰囲気の両方に感銘を受けた」と記しています。交易拠点となっていた港町の常で、数多くの女郎部屋や、不逞の輩が寄宿する宿などが町を形成していたのでしょう。

室蘭駅の傍から、運動公園、続いて日本製鋼所の大工場の塀に沿って駆け、母恋から国道を飛ばして、東室蘭駅の東口に到着しました。最高のライドだった昨日に比べ、今日は何とも冴えないけれど、まあ、こんな日もあります。週末2日揃って爽快に走り抜くという風にはなかなかいきません。
この先も、道南の森あたりまでは、通行量の多い国道を中心に走らなければなりません。噴火湾の茫洋とした風景は嫌いではないけれど、焦点がなくて見飽きてきます。熊笹に覆われた宗谷丘陵や、原生花園や色彩豊かな農地に彩られたオホーツクを走った一昨年の夏が、懐かしく思い出されます。

東室蘭駅は、蒸気機関車が活躍していた時代を彷彿とさせるような、広い構内と堂々とした長いホームを有していました。車窓を見るにも気合が入らず、南千歳まで居眠りして過ごしました。

【走行記録】
走行距離  93.1Km
走行時間  3時間55分
平均速度  23.8Km/h   max.57.2Km/h
消費カロリー  2107kCal

◾️ ◾️ ◾️

20日目の記録は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました。次は、道南の険路・礼文華峠を越えて、渡島へと入っていきます。宜しければ続きもお読み頂ければ、嬉しく思います。

▼「週末北海道一周」のここまでの記録はこちらです。よろしければご笑覧ください。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。



この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

アウトドアをたのしむ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?