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#21 地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅/プラプラデーンへの里帰り

地方都市でもローカル線でもない、番外編のような旅ですが、4年ぶりにバンコクへ、ブロンプトンを連れて「里帰り」してきました。
何ゆえに「里帰り」かと申せば、わたしのプロンプトンは今から10年ほど前、バンコクに駐在していた時に購入したものなのです。
そして、バンコクへ行くなら、どうしても走りに行きたい場所もありました。
【旅行日 2023年9月15〜18日】

◼️note「海外旅行 記事まとめ」「旅のフォトアルバム 記事まとめ」に、本稿をピックアップして頂きました。ありがとうございます!



◆ ただいま、バンコク

9月15日金曜日、午後半休をとって、昼過ぎに「はるか」で関空へ。17時45分発のタイ国際航空便でスワンナプームへ。

▲ バンコクへ向かうタイ国際航空機@関空

入国審査や手荷物受取がスムーズだったおかげで、アソークのホテルへは23時過ぎに到着できました。
このエリアは、かつて住んでいたアパートから徒歩圏内ですが、最後に来てからもう4年、帰任から数えれば9年半が経過しており、もう土地勘も失われています。
このまま寝てしまうのももったいなくて、不夜城のようなソイ・カーボーイを通り抜け、スクンビット通りの人混みをかき分けながら、かつて暮らしていたナーナーの方へ、ぶらぶら散歩に行きました。ナーナーってお前、そんなとこに住んでたのかよ、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、そうなのです。バンコクは海外駐在2カ国目だったので、ちょっとディープなエリアに住んでみたかったのです。まあ、色々なことが起き、それでいて実は人情味もある、面白いエリアでした。
久しぶりのナーナー、ちょっと通り過ぎた程度でしたが、ソイの奥の方は再開発が進んだようで、当時に比べずいぶんと健全(に見える)エリアに変貌を遂げていました。
今回は健全な旅をモットーとしておりますので、多彩な誘惑をせなで断ち切り、ギネスを一杯飲んでホテルへ戻りました。

◆ チャオプラヤ川を渡って

翌朝。少し寝不足気味。ブロンプトンを連れて通りへ出ます。

▲ 朝のアソーク交差点

目指すは、その肺のような形状と、森と沼沢地に覆われた姿から、Bangkok’s Green Lang の異名をとるプラプラデーン。
ここは、大きく蛇行するチャオプラヤ川に三方を囲まれた湿地帯。計画的に開発が制限され、豊かな緑が残されています。わたしはこのエリアが大好きで、天気の良い週末にはスクンビットの喧騒を離れ、沼沢地に茂る熱帯の森の中、鳥の囀りに包まれて、ペダルを踏むのを楽しんでいました。
スクンビットの西の方からプラプラデーンへ行くには、クロントイ寺院の近くから渡し船に乗るのが近道。クロントイにはバンコクでも有数のスラム街があり、敬遠する向きも多いのですが、わたしは特に意に介さず、というか、当初はそんなことは知らぬままこの辺を徘徊しており、危ない目に遭ったこともないので気にすることもなく、この渡船を利用していました。

▲ プラプラデーン(google mapより)

クロントイへの道は、身体が覚えていてくれるものとタカをくくって出発したところ、見事道に迷い、しばし路地裏をうろうろ。それでもやがて見覚えのあるシェルの油槽所に着き、船着場への細い通路を進みます。

▲ 船着場への怪しげな通路

この渡船では、タイ語しか通じないおばちゃんに料金を支払い、4〜5人が乗るのがやっとの小さな木造の平底船で、対岸へ渡っていたものでした。前回の訪問から4年以上を経て、窓口には若い男の子が座り、「ワンウェイ?オア、リターンチケット?」と英語で聞いてきました。船は他の渡船場にもあるような、モーターバイクも積める鉄製の船に変わっていました。ただ、やばいくらいに筋肉質の船頭は昔のまま。

▲ 渡船でチャオプラヤを渡る

チャオプラヤを渡り、プラプラデーンに上陸。
さて、わたしはマイ自転車を持参していますが、このエリアには多数のレンタサイクルがあります。なので手ぶらで来ても問題ありません。
中には、日本の放置自転車も数多くあって、異国の地でこうして活用されている様を見て、嬉しくなります。

▲ この船着場にあるものは、放置自転車ではないよう。

木造の船着場から、木立の中へ走り出します。朝の大気の中に、鳥たちの声が喧しい。
ああ、戻ってきた!

車のほとんど来ない一般道をしばし走ります。小さな寺院、船着場。懐かしい風景に心が和む。

プラプラデーンには、一般道以外に、沼地に杭を打ってコンクリート板を渡した桟道のような生活道路が、縦横無尽に広がっています。自動車は進入できないほどの幅員。この道を走り回っていると、自分の現在地がわけわからなくなりますが、そのうちどこか主要道にでるので、積極的に迷子になってしまえばよい。

桟道の幅は、自転車同士がやっとすれ違えるほど。ガードレールがなく、しかも直角に曲がっている箇所が多いので、ぶっ飛ばすわけにいきません。まあ、落ちても大怪我はしないでしょうが、澱んだ汚水をたっぷり飲むことになりそうなので、慎重に走ります。

▲ 生活道路として活用されている桟道

懐かしい気持ちで、しばし走り回ります。

◆ バーンナム・フォエン

さて、このエリアで外せないのが、バーン・ナム・フォエン(フォエン水上マーケット)。
英文表記はBaan Nam Phoeng “Floating Market” ですが、南国の果実を積んだ小舟が運河を行き交うような、インスタ映えする風景を想像すると裏切られます。おそらく、昔は近在の人たちが、小舟に商品を積んでここに集まり、交易をしていたのでしょう。しかし今日では、森の中にある水路の両側に、屋台が所狭しと軒を連ね、人々はクルマやモーターバイクに荷物を積んでやって来ます。
このローカルなマーケットには、はじめてプラプラデーンを走りに来た週末に、偶然出くわしました。後日調べてみると、”Lonely Planet” には、地味な扱いながら取り上げられていたものの、「地球の歩き方」ほか手元にある日本語ガイドには、一切紹介されていませんでした。
地域の自然を保護する目的でしょうか、バンコクの中心部からこのエリアへは、橋が一本も架かっていません。クルマで来れなくはないものの、大変な遠回りが必要。何箇所か渡船があるとはいえ、一見のツーリストには若干ハードルが高い。
故に、ここは、ツーリストの姿をほとんど見かけない、ローカル色豊かなウィークエンド・マーケット。

一般道に出て飛ばして行くと、次第に自動車の量が増え始め、駐車場の入口では交通整理係が車を誘導していました。

駐車場の隅にブロンプトンを停めます。


以前と変わらず、美味しそうな食べ物が豊富。手当たり次第にいきたいところですが、まず、一軒の屋台に腰を落ち着けて、センレックナムを啜ります。店主と、その知り合いらしき年配の女性が色々話しかけてきました。日本から来た、というと「ワタシ、日本語少しできるよ」と年配女性。ほぼ忘れかけているわたしのインチキタイ語とチャンポンで、たわいもない話をいろいろ。

ここの屋台の一つで売られている、トウキビを絞ったジュースが昔大好きでした。嬉しいことに、今も健在。
駐車場からの入口付近の、家族でやっているカノムクロックの屋台も、オースアンの店も、その隣の行列ができる腸詰の屋台も、コロナ禍を乗り越えられて良かった。もちろん、すべて賞味。

ただ、ここへ来たらオリジナルのTシャツを買おうと思っていたのですが、店じまいしてしまったよう。手書きの色鮮やかなTシャツが色々あったのですが。10年前に買ったのは、さすがにくたびれてきたのです。

▲ 以前は、こんな素敵なTシャツが売られていました。

広い敷地の北端に、屋外にベンチが並んだ休憩スペースがあり、その中央にはステージがあります。次々と客がそこへ上っては、カラオケで一曲披露。これも、むかし通っていた頃から変わらぬ情景。あちこちで買った豚串やらお菓子やらジュースやらを広げてひと休みしていると、わたしの方に手を振る人影。さっき食事した店で会った、日本語ができるおばちゃんでした。「これから、ワタシも歌う。うまいよ!聴いていくか?」嫌だ、とは言えず、タイの演歌調の曲(でも確かにうまかった)にお付き合いしました。「あなたも歌うか?」とステージへ上げられそうになりましたが、さすがに固辞。

▲ 木漏れ日の休憩コーナー
▲ 熱唱するおばちゃん

正午になり、市場は益々賑わいを増してきました。
欧米人の姿も多少見られるとは言え、圧倒的に地元民が多い。日本人は皆無。
ウィークエンド・マーケットといっても、チャトゥチャックなどと違い完全な地元密着。そういえば、駐在していた頃に、タイ語の先生が「チャトゥチャックは混んでいるし、高いし、その上暑い!わたしたちは行かないわよ」と顔をしかめていたことを思い出します。

◆ こころの故郷のような…

3時間近くも市場を徘徊して過ごし、再び走り出します。
プラプラデーンの真ん中を南北に走る幹線道路を南下。南へ行くにつれ、交通量が増えてきます。南部には化学製品の工場なども見られ、牧歌的な北部とは少し様相が異なります。
このエリアの付け根に、美しい構造の橋があるので、そこまで走るつもりでした。ところが、空模様が次第に怪しくなってきました。今は雨季。
この後、アソークへ戻ったら久しぶりでTerminal 21もブラブラしたいし、お気に入りのイサーン料理店で早めの夕食をとってから、話題のジョッドフェアーズ•ナイトマーケットへも行きたい。
そろそろ市内へ戻る頃合いでしょうか。
再び、沼沢地の中の桟道を拾いながら、東端にあるワット•バーン•ナムクンノーク寺院を目指します。ここから対岸のバンナーへ渡り、アソークまではスクンビット通りをひたすら走るつもりです。

東岸の船着場に着き、後ろ髪引かれる思いで、チャオプラヤを渡りました。

▲ 帰路の渡船

バンコク暮らしの最中、心の故郷のような場所だったこの土地へは、これからもバンコクへ来るたびに、きっと心の洗濯にくるのでしょう。

参考:The New York Timesの紹介記事


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最後までお読み頂き、ありがとうございました。これからも、ブロンプトンを連れて地方都市やローカル線を訪ねていきたいと思います。
これまでのローカル線とブロンプトンの旅、こちらへまとめております。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。

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