見出し画像

MMAバックボーンでは珍しい打撃競技【MMAミリしらキット】

*この記事は執筆者の個人的な考えや推測が多く含んでおり、また格闘技関係者から直接話を聞いて執筆したというものではなくただの一格闘技オタクが書いたものであるため間違った情報が書かれている可能性があります。もし間違いやご指摘、誤字脱字があった場合はコメントなどで教えていただけると嬉しいです。
 またこの記事内で選手や格闘技関係者の敬称を省略している場合があります。予めご了承ください。


➀はじめに

現在日本ではRIZINや朝倉兄弟などの頑張りで2000年前半以来のMMA(総合格闘技)ブームです。
そしてMMAという競技は当たり前ですがスタンド(立っている状態)から始まるルールですので、どれだけ寝技が強い選手でも打撃を全く行わずに試合を行うことは不可能な競技と言えるでしょう。

前に出ながらパンチを出すのとそれに合わせてミドルキックを出すスタンドでの攻防

その中でMMA選手の打撃バックボーンの競技や練習をしている競技として多いものはボクシング、キックボクシング、ムエタイだと思います。
ですがそれ以外の打撃競技がバックボーンだったり、そのエッセンスを自分のファイトスタイルに取り入れている選手も多いこともまた事実です。

そのためこの記事では空手・散打といったMMAで使われている珍しい立ち技競技やそれを駆使している選手の紹介などをしていければと思います!


②空手

日本では最もポピュラーな武道でありオリンピック競技にもある空手ですがその歴史は14世紀の沖縄まで遡ります。琉球王国と当時交流していた明(当時の中国)の使節が中国拳法を伝えたことが始まりで、その後2度禁武政策と呼ばれる民間人の武器の所持を禁止する法律により現在のような武器を使わない徒手空拳の武術となりました。
その空手を沖縄から本州に伝えたのは船越義珍で1922年には日本体育の父と呼ばれる加納治五郎の要請を受けて東京の講道館で演舞や指導を行い、それがきっかけで多くの空手家が本州に渡り現在の空手の全国的な広がりにつながりました。

そんな空手ですがMMAのバックボーンとしている選手はあまり多くありません。その理由は日本の空手を習っている人の多くはより空手が生かしやすいキックボクシングを始めたり、日本に次いで空手が広まっているヨーロッパではまだまだMMAが浸透していないことが考えられます。
ですが空手のエッセンスを自身のファイトスタイルに取り入れている選手は多くいます。例えば元UFCフェザー級&ライト級王者であるコナー・マクレガー選手や現Bellatorフェザー級王者であるパトリシオ・”ピットブル”・フレイレ選手は自身は空手経験はないものの、そのファイトスタイルは空手のように体を半身にした構えを作って前手をガードや相手との間合いを探るセンサーのように使いながら奥手のパンチで仕留めるスタイルで勝ち星を重ねています。

右の選手がコナー・マクレガー選手。175㎝の身長に対し188㎝の長いリーチを生かして前手を相手に触れられる距離において相手との間合いを測る。
左の選手がパトリシオ・”ピットブル”・フレイレ選手。前手のガードを上げることで相手の攻撃をガードの内側に誘導することが出来るためカウンターが狙いやすい。

そんな空手を駆使した代表的なMMA選手と言ったら現RIZINバンタム級王者で元Bellatorバンタム王者でもある日本人格闘家のトップの1人である堀口恭司選手でしょう。

バックボーンの伝統派空手を生かしたステップからの飛び込みと強烈な打撃が特徴で、近年ではジャブとタックルを使っての近距離での試合運びやバックスピンキックを使うなどファイターとして様々な幅を見せています。

より詳しい説明は筆者が以前に書いた堀口恭司選手の解説記事がnoteにありますので是非読んでみて下さい!

また堀口選手と同じく空手をバックボーンに持っているファイターでおススメなのは元UFCミドル級王者であるロバート・ウィテカー選手です。

剛柔術空手という伝統派空手をバックボーンに持ち堀口選手と同様に飛び込みからの打撃を得意としています。特に飛び込んでパンチの打ち終わりに飛んでくるハイキックは相手を一撃でKO出来るほど強力です。
またUFC参戦中に自国のオーストラリアのレスリングの大会で優勝するほどレスリング力が非常に高く、最近では飛び込みからの打撃とテイクダウンを軸とした打と組みをミックスさせたファイトスタイルで戦っています。

そんなウィテカー選手の個人的見ておくべき試合はUFC271で行われたUFCミドル級タイトルマッチのイズラエル・アデサニヤ戦です!
元々この2人はUFC243で戦っていてその時はアデサニヤ選手がウィテカー選手のパンチに合わせて体全体をスウェーさせての右フック→左フックというMMAの歴史に残るようなとてつもないKOで勝利しました。

その後アデサニヤ選手はライトヘビー級王座に挑戦して敗北したものの主戦場のミドル級では3連続王座防衛という絶対王政を築いていました。またウィテカー選手もミドル級トップランカー相手に差を見せる試合内容で3連勝と両者の対戦の機運は高まっていっていました。
前回の対戦よりもより高度なMMAとなったこの試合は絶対的なスタンドスキルを持っているアデサニヤ選手に対して様々な技を仕掛けてテイクダウンを獲るウィテカー選手のアプローチに注目してみて下さい!


③散打

1979年に中国が武術を未来に継承していくために競技スポーツという観点を用いて武術を競技種目とすることをコンセプトに制度が整えられて1989年に誕生したのが散打という競技です。元々散打という言葉は中国武術的には試合やスパーリングという意味を持つそうです。
そのルールは投げ技があるキックボクシングというのがわかりやすい例えだと思います。テイクダウンでもポイントをもらえるので相手にフック系の打撃で近づいてそのまま組んで投げたり相手の足を掴んでのテイクダウンも認められているためMMAばりのタックルを使うなどといった攻防が特徴です。

そんな散打ですがMMAのバックボーンとしている選手はあまり多くありません。その理由ですがMMAが盛んな国であるアメリカやブラジルにその文化が浸透していないのだと思います。というのも散打が盛んな国はフィリピンといったアジアの国が主ですのでアジアを拠点とした団体であるONE Championshipには多くの散打バックボーンの選手が参戦していますが、UFCやBellatorといった北米の団体には散打出身の選手がほとんどいないのが現状です。
しかし散打は2026年にセネガルで行われるユースオリンピックで競技種目に加えられるなど確実にその知名度を広げているのでいつかは北米の団体にも当たり前に散打出身の選手が参戦することが珍しくなくなるかもしれません。

そんな散打を駆使した代表的な選手といったらRIZINライト級GP優勝者で現在Bellatorライト級2位のトフィック・ムサエフ選手でしょう。

散打の世界大会で優勝するほどの実力を持ち、相手のガードの間を縫うような変則的な軌道のパンチと多彩な蹴り技が特徴です。またフック系のパンチで近づいて相手が後ろに引いた瞬間にタックルを合わせるコンビネーションも特徴的です。これはタックルが認められている立ち技競技である散打らしい打撃と組みを混ぜたコンビネーションだと思います。

そんなムサエフ選手の個人的見ておくべき試合はRIZINライト級GP決勝戦であるパトリッキー・”ピットブル”・フレイレ戦です!
両選手とも強烈な打撃が売りの選手ですがお互いが相手の強打に一切ビビらずに戦う凄まじい試合を繰り広げました。現Bellatorライト級王者であるパトリッキー選手とのRIZINの歴史の残る激闘を是非見て下さい!

また前述したONE Championshipでは元ONEライト級王者であるエドゥアルド・フォラヤン選手現ONEストロー級王者のジョシュア・パシオ選手のように散打を使う選手が他団体に比べると比較的に多いので、散打を取り入れたMMAを見たい方にはおススメです!


④その他

ここまで空手、散打とMMAバックボーンとして珍しい打撃競技を紹介しましたが、それらの競技より実例が少ない他にも珍しい打撃競技をバックボーンにしているMMA選手を紹介していこうと思います。

Bellatorの人気選手であるマイケル・”ヴェノム”・ペイジ選手は両親の影響で4歳から始めた劉家拳という中国武術とセミコンタクトルールのキックボクシングがバックボーンという非常に珍しい選手で、そのファイトスタイルも唯一無二です。
これらの競技で培った独特の間合いと当て感が特徴であり相手の予期せぬタイミングで強打を当てることに長けています。またパフォーマンスが非常に派手でありMMAやこの選手のことをよく知らなくても惹かれる魅力がありますので是非みて下さい!

また近年ではUFCで活躍している平良達郎選手ムハンマド・モカエフ選手のようにバックボーンがMMAという選手が多く増えてきています。これはMMAという競技自体の広がりが大きくなったことが要因だと思います。
当たり前ですがMMAを学ぶためにはMMA専門のジムに通わなければなりませんのでMMAを指導できるコーチやMMAの大会が行われている環境などが必須となります。そういうものが当たり前になって初めてバックボーンがMMAという選手が出てくると思っていたので、このことはMMAという競技が世界レベルで広まっている証拠だと思いますので個人的にはすごくうれしいですね。

そんなバックボーンがMMAのファイターで個人的におススメなのは元ONEライト級王者であるクリスチャン・リー選手です。

格闘家の両親の影響で幼少期から様々な格闘技に触れていてレスリングやグラップリングなど多くの格闘技の選手権でも名前を残すほどの選手です。
そういうバックボーンから全局面で勝負するオールマイティーなファイトスタイルなのですが、その特徴は打撃→組み、寝技→打撃といったMMAでの局面ごとのつながりがとてもシームレスということです。基本的MMAの選手はボクシングやレスリングといったバックボーンの競技の特徴が出るスタイルで戦っているため、その競技ではカバーできない局面に移行する際は何か”つなぎ目”のようなものを感じる場合があります。
例えばボクシングがバックボーンの選手がパンチを撃ちながらタックルに行ってテイクダウンを獲るシーンはMMAでは珍しくありませんが、その動きに多少の”つなぎ目”を感じるのはしょうがない事です。
ですがクリスチャン選手は幼少から多くの格闘技をやっているため自分の中に様々な格闘技の要素がある状態なので、それぞれの格闘技の要素を繋げるということに違和感なく取り込める稀有なファイターなのです。

そんなクリスチャン選手の個人的見ておくべき試合は2018年に行われた徳留一樹戦です!
この試合はRIZINやUFCにも参戦したことがある徳留選手をクリスチャン選手が打撃や組みの攻防でもそのスピードとつなぎ目を感じさせない技術で主導権を握り続けた試合です。スピードの速さにフィジカルの強さ、そして技術のつなぎ目を感じさせないクリスチャン選手のシームレスなMMAに注目してみて下さい!


⑤おわりに

今回の記事はいかがでしょうか。
基本的にMMAで使われる打撃はボクシング・キックボクシング・ムエタイの要素を含んでいますし、今回上げたファイターもこれらの練習はしていると思います。ですが組み技より見やすい打撃の要素で他とは違う個性を持っている選手がいたら目につきやすくてMMAに興味を持つきっかけになると思ってこの記事を書きました。何か興味を持っていただけると幸いです。

タイトルにある【】部分についてですが、割とまだあまりMMAを知らない方たちへ向けたマガジンシリーズのタイトルとしてMMAミリしらキットという名前を付けました。内容としてはMMAを見ていく中で疑問に持ちそうなところや業界内では当たり前に浸透しているものの一般の人は良く知らないコンテンツについてなどを紹介するものとして考えています。
とりあえずここの記事を読んでMMAに関する知識や構成する要素に興味を持っていただけたら嬉しいです!

またこの記事や今までのnoteに対しての感想や意見はドシドシお待ちしていますのでコメントやTwitterで反応や拡散をしていただけるととてもうれしいです!泣いて喜びます!

ここまで読んでいただきありがとうございます!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?