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【RIZIN.38超絶簡単解説】榊原CEOの言ってるRIZINらしさって結局なんだよ⁉

*この記事は執筆者の個人的な考えや推測が多く含んでおり、また格闘技関係者から直接話を聞いて執筆したというものではなくただの一格闘技オタクが書いたものであるため間違った情報が書かれている可能性があります。もし間違いやご指摘、誤字脱字があった場合はコメントなどで教えていただけると嬉しいです。
 またこの記事内で選手や格闘技関係者の敬称を省略している場合があります。予めご了承ください。

➀はじめに

この記事は「RIZIN.38」(9月25日15:00開始予定)の全カードを簡単に解説しようという記事です。
堀口恭司選手の1年9か月ぶりの日本の試合を始め実力や話題性にあふれたカードが集まった大会となっていますので盛り上がっていきましょう!


②大原樹里vsルイス・グスタボ

実はRIZIN.38で1番求められているカードはこれなんじゃないでしょうか?
これを1番最初に持ってくるのは流石に予想外でしたがね。

大原樹里選手は現在8連勝中で7月にはDEEPライト級王座の防衛も行ったこれが52戦目の31歳の鉄人系ファイターです。いつも言ってる気がしますが大原選手の体の丈夫さは本当にすごいです。200年代のPRIDEから現代のBellatorまで戦い続けているエメリヤーエンコ・ヒョードル選手が現在47戦なので、この大原選手の試合数はマジでやばいですね。

身長180㎝リーチ191㎝という階級の中では大きい身体から繰り出されるノビのあるパンチやハイキック、膝蹴りといった豊富な蹴り技を駆使して自分の制空権を組み立てたり、打たれ強さを生かして前にガンガン出てパンチの回転力で相手を倒したりとストライカーとして幅のあるファイトができることが何よりの特徴です。

対戦相手のルイス・グスタボ選手は往年のヴァンダレイ・シウバのような荒々しいファイトスタイルでRIZINでは5戦3勝2敗の戦績を残しています。
身長175㎝リーチ179,5㎝ですがそれを感じさせない間合いの長さが特徴でそこから一気にフックをぶん回しながら飛び込んできます。ちなみにRIZIN初戦とコロナ禍以降のRIZIN復帰戦で戦った矢地祐介選手は身長176㎝リーチ175,5㎝とあまり差のないところからもグスタボ選手の間合いの長さがうかがえます。
そしてRIZINでは寝技の攻防がほとんどありませんが実は柔術黒帯と意外と寝技も問題ないファイターです。

試合展開は非常に緊張感に包まれたものになるかお互いが前に出てガツガツした削り合いのどちらかだと思います。その理由は両選手とも同じストライカーながら共通点と相違点がはっきりしているからです。
共通点は蹴りを効果的に使うことです。パンチのイメージが強い両選手ですが意外と試合では蹴りを使っていて、対戦相手の意識を上に持って行ったり間合いを作るための起点としてハイキックを多用するイメージです。
相違点はパンチの質です。具体的には大原選手がジャブやストレートを軸とした直線的なスタイルに対してグスタボ選手がフックをフルスイングしながら飛び込んでくる曲線的なスタイルです。

そして間合いの距離感も似ていて大原選手は身体とリーチで長い距離感の間合いを作りますが、グスタボ選手は構えでリーチを伸ばして間合いを作っています。
グスタボ選手の構えは腕を横に出してからそれを前に出す懐の深い構えなのですが、それに肩甲骨を前に出すことでリーチ以上に遠い間合いを作っています。この記事を読んでいる方は一回その手を止めてグスタボ選手の構えを真似てみて下さい。この構えを作るだけだとあまり距離感は感じませんが、肩甲骨から腕を伸ばすイメージで構えてみると腕の長さが少し伸びた感じがしませんか?

肩甲骨を前に出すことでより懐の深い構えを作る。

こうすることでリーチ以上の間合いを作ることが出来るわけです。またこの構えだとパンチの威力が出しにくいというデメリットがありますが、そこを飛び込みの勢いを利用することで補っているというわけです。
そのため長い距離感がベースでありながら近距離の打ち合いが得意な大原選手と近距離がベースでありながら構えと飛び込みで長い距離に対応しているグスタボ選手という両選手のひりついた距離感の戦いからバチバチの打ち合いも出来る非常に噛み合いが良さげな試合展開が予想できるわけです。

おそらくこの試合の勝者が大晦日に予定されているであろうサトシ選手とのライト級タイトルマッチの相手になるのだと思います。
今大会ベストバウト候補であるこの試合を1試合目に置いた理由はおそらく超RIZINでメインが眠たい試合になるだろうと運営が予想していてそこから一気にテンションをぶち上げる意味合いがあるのだと個人的には思います。流石に邪推でしょうかね?


③萩原京平vs鈴木千裕

昔筆者の記事で書きましたが現在のRIZINフェザー級はいつタイトルマッチが組まれてもおかしくないやろ層、国内王者や定期参戦してくれる外国人などの国内トップレベル層、萩原京平選手や平本連選手といったまだ育成枠層の3つに区分されると思っています。
そうなるとこの1戦は育成枠同士の試合というカテゴリですがかなりの盛り上がりを感じています。やはり同じくらいだろうと考えられている選手同士の試合がなんだかんだ言って1番面白いんですね。

萩原京平選手はコロナ禍のRIZINを支えた立役者の1人であり、見た目通りのド派手な打ち合い上等のファイトスタイルとプライベートでの柔らかい態度のギャップで多くのファンがいる選手です。3週間前に始めたYouTubeチャンネルももう登録者6万人越えですからその人気がうかがえます。

ノビのある右ストレートに現在までKO負けが無い打たれ強さ、ダウンした相手に容赦なく踏みつけをすることが出来る残虐性が特徴です。

対戦相手の鈴木千裕選手はキックボクシング団体であるKNOCK OUT-BLACKの現スーパーライト級(65㎏)王者でもありながらそれに並行してMMAにも挑戦しているリアル二刀流を掲げる選手です。

キックボクシングで培ったパワーあふれる打撃に前進の勢いとフィジカルの強さ、四つ組みの展開では冷静に組み技を選択するなどMMAには完全に適応しています。

この試合は先ほどの大原樹里vsルイス・グスタボと同じように直線系のストライカーである萩原選手と曲線系のストライカーである鈴木選手のマッチアップとなっています。
ただ違う点としてはお互いの設定したい距離感です。
萩原選手は中間距離で右ストレートや後ろ回し蹴りといった縦に長い攻撃で鈴木選手を自分の間合いに入れたくないはずです。
逆に鈴木選手は近距離での打ち合いの展開を積極的に作りたいためフックの連打で一気に近づいてくるはずです。さらに近すぎてコーナー際の四つ組みの展開になってもフィジカルを生かして組み伏せることが出来ると思っているからこそこのプランを選ぶのだと思います。

お互いが打ち合い上等という盛り上がりやすいスタイル同士の試合であり、試合前に不慮の事故とは言えRIZINや鈴木選手に詐欺容疑のある政治家から援助を受けていたことが発覚してしまったため試合やそれ以外の挙動にも注目が集まってしまった試合ですが、それもあってなのかかなりの盛り上がりを感じています。
政治家の援助の件については事前に見抜けなかったRIZINの不手際だ!という意見も勿論正論なのですが、格闘技というスポンサーについても旨み0の業界に政治家なんていう信頼性のある人が名刺持って事務所来たら受けてしまうのはしょうがないのかなぁと個人的には思います。
純粋に試合内容だけでも非常に楽しみな1戦ですが思わぬ所からスパイスがかけられて味わい深くなってきました。試合後のマイクが今から楽しみです。


④シビサイ頌真vsカルリ・ギブレイン

RIZINは勝負所と決めた大会にはヘビー級の試合を入れる傾向があると思いってます。やはり迫力に関してはヘビー級は他の追随を寄せ付けませんからね。デカい漢2人の戦いの時点で非日常の極みみたいなもんです。

シビサイ頌真選手はRIZINヘビー級の顔役的な選手の1人ですね。きっちりと一本を獲れる寝技ときれいな打撃を駆使して戦うオールラウンダーな選手です。
ただスタミナが弱点で去年の大晦日の「RIZIN.33」では関根”シュレック”秀樹選手をあと一歩まで追い込んだもののガス欠で動けなくなり敗北してしまいました。

対戦相手のカルリ・ギブレイン選手は現GRADIATORヘビー級王者であり元HEATヘビー級王者でもあります。前にガンガン出ながらパンチを振るスタイルで6戦5勝1敗(5ko)という戦績を残しています。そのパンチも当たったら相手が1激で失神するようなものでその打撃スキルを買われてキックボクシング団体のRISEに参戦すると現在2戦2勝と好成績を収めています。

ですが組み技の対処が弱点であり、唯一の敗戦はHEATの王座防衛戦で北京オリンピック柔道金メダリストの石井慧選手に試合のほとんどを寝技に持ち込まれて最後にはアームロックで負けています。ここからわかる通りかなり寝技を不得手にしていることがわかります。

試合展開はパンチを振りながら前進してくるギブレイン選手に対してジャブとカーフキックでシビサイ選手がいなしながら、どこかのタイミングでカウンターのタックルを仕掛けてテイクダウンを獲るのかなと思います。
寝技の実力に関しては圧倒的にシビサイ選手有利ですのでグラウンドに持ち込むプランだと思いますが、ギブレイン選手の前進の圧力と1発の威力はそれをやらせずに試合を終わらせてしまうほどの危険性があります。
打撃vs組みと分かりやすい構図の試合でありどちらも自分の強みで相手をごり押せるほどの差がありますので、短期決戦で終わりそうな気がします。

RIZINのヘビー級もある程度層が整ってきました。
貴賢神選手や上田幹雄選手といったニューフェイスやスダリオ剛選手に関根”シュレック”秀樹選手など国内層で考えるとかなり充実してきたなぁと思います。ですがヘビー級の選手は特に他団体との競合が激しいため海外の有力な選手を呼べていないのが現状です。RIZINマッチメイカーで海外選手担当でもあるチャーリー柏木さんの素晴らしい手腕に期待してまだ見ぬヘビー級の新星発掘に期待しましょう。


⑤浜崎朱加vsパク・シウ

RIZINスーパーアトム級トーナメントももう2回戦ですね。
皆さんの予想通りの選手が2回戦にあがってきましたか?筆者的には割と予想通りのメンツがあがってきました。
スーパーアトム級トーナメントに出場する選手の簡単な紹介については筆者が書いた「RIZIN.37」の記事に書いてありますので良かったら読んでください!

浜崎選手は引き出しの多さを見せましたね。
あれだけの戦績と経験がありながらジェシカ・アギラー戦では今まであまり使っていない両足タックルや三日月蹴りといった今まで使ってなかった新しい技を使ってきました。
今までは立ち技ではボクシング、組み技と寝技では柔道をベースにしたスタイルでしたが、さらにレスリング式の組みのアプローチや立ち技でも多くの仕掛けを隠し持っていると思うとまだまだ底が知れませんね。

パク選手は試合では想定内の動きをしましたがその動きのキレが想像以上でしたね。
浅倉カンナ戦では打撃の圧力とテイクダウンディフェンスで相手のやりたい動きをやらせない試合展開でしたが、CRAZY BEEに移籍したことでレスリング面の攻防の強さがとてつもなく強化された印象です。
今まではフィジカルの強さと荒々しいパンチだけという印象でしたがこれにレスリング力が付与されたことでかなりストライカーとして完成してきたのではないかと思います。

試合展開は浜崎選手が立ち技メインで行くか、組み技メインで行くかで変わると思います。
パク選手は基本的にパンチを振りながらプレッシャーをかけていくと思うのですが、浜崎選手の場合はボクシング力を活かして打ち合ったりテイクダウンで寝技の展開を狙ったりと展開の主導権に関しては浜崎選手が選択権がると思います。
ただ浜崎選手も殴り合いはむしろ歓迎みたいな勝ち気なメンタルですしパク選手も打ち合い上等なスタイルですので打撃戦を選ぶ可能性が高そうなんですよねぇ。浜崎選手のスタイルを考えると多分組んで一本を狙うほうが確実なんですがおそらく殴り合いの展開になりそうな気がします。

韓国のストライカーと聞くと浜崎選手の長年のライバルであるハム・ソヒ選手を思い出しますね。伊澤選手とパク選手はすでに対戦していることもありますが、パク選手もハム選手と交流をしていますのでストーリーは組みやすいのかなと思います。
実は純粋なストライカーとやるのはかなり久しぶりな浜崎選手の立ち回りとパク選手の剛腕がどこまで通じるかが楽しみです。ただどんな試合展開だろうと今大会1番のタフファイトにはなりそうな気がしています。


⑥伊澤星花vsアナスタシア・スヴェッキスカ

本来2回戦で伊澤選手と戦うのはRENA選手だったのですがケガにより欠場となったためアナスタシア選手が出場となりました。
伊澤星花vsRENAは筆者含めて多くのファンが楽しみしていたカードですのでそれが飛んだことは残念ですが、アナスタシア選手がこちらの想像以上に強い選手ということが前戦で判明したのでこれはこれで面白そうなマッチメイクになりました。

アナスタシア選手は想像以上の強さを見せましたね。
IMMAFというアマチュアMMA団体で世界一になっていたため全体的なMMAのスキルが高いイメージはしていましたがまさかRENA選手と打撃戦が出来るレベルのスキルとは思っていませんでしたね。
169㎝の長身から繰り出されるジャブ→ローの対角線のコンビネーションと引き込みのように下からの寝技のアプローチも出来るプロ戦績2勝1敗の選手とは思えない完成度の高さです。

伊澤選手は盤石の強さを見せましたね。
下からの極めが強いラーラ選手を逆にギロチンチョークで締め落とすという完璧な勝ち方で2回戦に進出しました。浜崎選手との攻防でも組み際の攻防で優位に立ちグラウンドに持ち込んで相手の攻め手をつぶすスタイルが完成されて行ってるような気がします。
正直”和製ヌルマゴ”って感じですよね。打撃をもらっても後ろに下がらずにタックルなどのテイクダウンアプローチを無尽蔵のスタミナでやり切るあのスタイルが盤石すぎてやばいです。

試合展開のカギはアナスタシア選手の立ち技でどれだけ伊澤選手の前進を止められるかが重要だと思います。
伊澤選手は打撃を撃ちながらプレッシャーをかけて相手をロープ際まで追い込んでからタックルに行くのが基本の戦術ですが、アナスタシア選手の打撃でその全身をどこまで止められるかが試合の勝敗に直結すると思います。

カギになる攻撃はボディーへの攻撃です。MMAにおいてタックル対策の1つにボディーブローやボディへの前蹴りやミドルキックといった相手へのボディを攻める定石があるのですが、アナスタシア選手の長い脚なら特にそれが刺さると思います。序盤から前蹴りやローで打撃を散らして相手との距離を作りながら最後にはハイキックなんて結末もありそうですね。
ただ今の伊澤選手の覚醒っぷりを考えるとかなりきつい試合になる事は明白ですし、逆に言えば伊澤選手の前進を止めないとほぼ勝ち目のないきつい試合にはなりそうです。

大晦日興行の目玉の1つにつながるこのカードですが意外と注目度は集まって無い気がします。個人的には今大会でも注目カードの1つですしアナスタシア選手ならRENA選手が欠場した現状のRIZINスーパーアトム級で1番伊澤選手を倒せる確率が高いと思いっています。
現在の伊澤選手の無双っぷりを考えるとかなりのワンサイドゲームになりそうですが、こういうカードが跳ねるかどうかで興行全体の質が変わってくると思います。その跳ねっぷりが楽しみです。


⑦扇久保博正vsキム・スーチョル

今大会の玄人枠であり最もレベルの高いMMAが期待できそうであり、究極の塩試合になる可能性もちょっぴり秘めているカードです。

扇久保博正選手は去年行われたバンタム級GPで春日井”寒天”たけし、大塚隆文、井上直樹、朝倉海といった国内王者経験者や優勝候補2人を倒して優勝した現在国内最強のバンタム級ファイターです。

正に打・投・極すべてが一流の選手で弱点らしい弱点もないオールラウンダーです。また過去にはUFC出場をかけて世界中から王者が集まり寝食を共にしながらトーナメントで競い合う番組のTUFに日本人で唯一出場してそこで現在UFCフライ級ランキング2位のアレッシャンドリ・パントージャ選手に勝利したりと国際線の経験もばっちりです。

キム・スーチョル選手は韓国軽量級のスター選手の1人で元Road FCバンタム級王者、元ONEバンタム級王者、現Road FCフェザー級王者とその輝かしい実績とアグレッシブにガンガン前に出て常にフィニッシュする姿勢で韓国のMMA業界を引っ張ってきたファイターです。

24戦17勝(6ko、5sub、6判定)6敗1分けと戦績も良く、倒した相手も佐藤将光や手塚基伸、ケビン・べリンゴンといった軽量級の世界レベルのファイターに勝利しています。

そのスタイルは打撃ではパンチを振りながら前進したりスイッチしてからのハイキック、パンチのフェイントからのタックルなどで圧力をかけていきます。
組み技ではレスリング力とフィジカルを生かしてのトップキープ力も高いですが特に四つ組みの展開が強い印象です。相手の後頭部を持ちながらもう片方の手でパンチを入れるダーティーボクシングと呼ばれる技術や四つ組みからの膝蹴りが強力です。
さらにテイクダウンディフェンスもうまく相手のタックルを切ってガブりの体勢を作りそこからギロチンチョークを極める場面もある、全局面レベルの高いトータルファイターです。正直戦績がもう少しきれいだったらUFCに行っててもおかしくないレベルだと個人的には思っています。

RIZIN出場経験もある中原太陽選手との試合で蹴り足をキャッチしてそこからギロチンを仕掛けたシーン。

試合展開は前進するスーチョル選手を扇久保選手が受けて立つ形になると思います。
170㎝の身長とフェザー級でも通用するフィジカルを持つスーチョル選手の圧力を止めるのは容易ではないと思いますがそれを止めるためのカギになる攻撃があります。
それは扇久保選手の左ハイキックです。
グラップラーのイメージがある扇久保選手ですがバックボーンは極真空手ですので鋭い蹴りが打てるのだと思います。過去には176㎝の長身の瀧澤選手の顔面に右フック→左スイングフック→左ハイキックのコンビネーションでダウンを取っています。

ハイキックが当たり崩れる瀧澤選手。流れの中で繰り出された美しいハイキック。

この左ハイは身長160㎝とバンタム級では小さい部類の扇久保選手の攻撃の中で最もリーチのある長い攻撃で、これを相手が攻撃のために前進する際に打つことで自分の間合いをキープすることや相手が容易に近づけられないなど様々な効果があります。
そして今回は今までの試合以上にこの左ハイが刺さると思います。
スーチョル選手はグスタボ選手のような腕を横に出した構えをしているので腕の真ん中にスペースがあります。また打撃ではフック系を多用しているので直線的に入る扇久保選手の左ハイがドンピシャに入る可能性がかなり高いと思っています。
アグレッシブに前に出るスーチョル選手には想像以上にこの左ハイが勝算を左右するほど重要な攻撃になると個人的には考えています。

スーチョル選手の構え。
ミドルキックを多用することや四つ組みが強いことからこういうムエタイがバックボーンの選手のような構えになっている。ちなみにスーチョル選手のバックボーンはボクシングとテコンドー。

日韓軽量級トップファイター同士の試合なのですが如何せん他のカードが目を引くような派手なカードが多いためあまり注目されない印象です。またスーチョル選手が1度RIZINで試合をした際にかなりのレベルの塩試合をしたため塩系ファイターの印象が強いのだと思います。
そのためこの試合は日韓が誇るMMA巧者同士のトップ同士の試合なのですがかなりの塩試合になる可能性を内包していることは否定できません。

話はちょっと変わるのですが皆さんは塩ラーメンの作り方を知っていますか?
あのラーメンは塩だけで味付けしているのではなく膨大な食材を煮込みに煮込んで出たダシを最後に塩をまとめているため塩ラーメンというのですが、この試合も塩ラーメンのような両者による試合と考えればめちゃくちゃ面白そうじゃないですか?
それぞれの持つトップクラスの技術をまとめたスタイルだからこそ”塩”と呼ばれるのであって、構成しているそれぞれの食材の理解が出来ればこれほど面白いファイターもそういません。
豚骨ラーメンや家系ラーメンのような目を引くインパクトはないかもしれませんが、何度食べても飽きが来ない塩ラーメンもおいしいと思いますよ。


⑧堀口恭司vs金太郎

最強のMADE IN JAPANが1年9か月ぶりに日本に帰ってきました。
なんだかんだ堀口選手がいると大会のワクワク感が一段高まる気がします。

堀口恭司選手は現RIZINバンタム級王者、元Bellatorバンタム級王者で日本MMA界を先頭で引っ張っている最早説明不要の選手です。
伝統派空手ベースの鋭い踏み込みからのパンチに全米のレスリングエリートたちにも負けないレスリング力、近年はカーフキックといった新たな武器も取り入れさらに進化を見せています。
筆者が書いた堀口選手の紹介記事がありますので興味がありましたら是非見てみて下さい!

今年はBellatorバンタム級GPに出場したもののパトリック・ミックス選手に判定で負けてしまいこれが復帰戦となります。現在Bellatorでは2連敗と結果がついてきていませんが久しぶりの日本で快勝して弾みをつけてまた世界と戦ってほしいですね。

金太郎選手はTHE OUTSIDER出身のいわゆる不良系ファイターです。相手の攻撃に一切ビビらずにむしろ勢いづいて自分の攻撃を当てる狂気的なスタイルで非常にファン人気が高い華のある選手です。

狂気的な打撃を振り回す暴れん坊なイメージとは裏腹にMMAでは冷静にタックルでテイクダウンを獲ったり組み際の攻防でも緻密な技術を使いクレバーに試合を動かす場面もあります。またプライベートはまじめな好青年のようでYouTubeチャンネルでは仲間と談笑したり様々な企画を行ったりと試合の時とは違う金太郎選手の一面が見れます。

このカードに対しては榊原CEOが「RIZINらしいカード」と言っているのが印象的でしたね。かくいう筆者も堀口選手のRIZIN復帰戦が決まった時に対戦相手として予想していたのが金太郎選手か瀧澤謙太選手だったんですよね。
そのため堀口選手の対戦相手発表の際には割とスッと受け入れたんですが、TwitterやAMEBAでは非難や怒号で阿鼻叫喚していた人が多かった印象です。

では現在の堀口選手にふさわしい対戦相手を考えてみましょう。
まずはRIZINバンタム級GPで優勝した扇久保選手です。
筋や道理は1番通っていますが本人のケガで7月に対戦予定だったキム・スーチョル選手との試合をキャンセルしたこと、ここで堀口選手とやるよりお互い機運を挙げた中でタイトルマッチとして大晦日に行った方が盛り上がることが今回の対戦相手じゃない主な理由だと思います。
お互いが今いきなりやるよりも階段を一段ずつ上がるように段階を踏んでやることでより対戦の機運が高まるでしょう。

ではBellatorの強豪選手ではどうでしょうか?
それこそ堀口選手と同じようなGP1回戦負けの選手とのマッチメイクはめっちゃ盛り上がると思いますが、そういう試合はトーナメントを行った団体であるBellatorで組むのが普通だと思いますけどね。
それこそRIZINでやったバンタム級トーナメントの1回戦負けした選手同士の試合を修斗やDEEPといった他団体でやるのは少し違和感があると思います。実現のためにはBellatorがランキング外の強い選手を貸してくれるという漢気を見せない限りは不可能だと思ってたので個人的には1番あり得ないと思ってました。1番見たかったというのが本音ですけどね。

ならばとバンタム級GPで負けてしまった選手を考えてみると朝倉海選手、井上直樹選手はケガ、元谷友貴選手は一度堀口選手と試合しているなど対戦相手候補の選手たちは軒並み戦うには苦しい理由があったのだと思います。
で、残った対戦相手候補はおそらく瀧澤謙太選手と金太郎選手になったと思うんですが、実績では瀧澤選手ですが金太郎選手だと本人の人気と元THE OUTSIDER出身の朝倉海選手が堀口選手にジャイアントキリングをしたことに重ね合わせてストーリーが組み立てられるということを天秤にかけて金太郎選手を選んだと思います。
それらを加味すると悪くない選択だったと思いますがカード発表の際にはかなり批判がありました。2年前には「♯金太郎を出せ」がRIZINの会見をやっていたらTwitterで飛び交ってましたが今あの人たちは何をやっているんでしょうか。今こそ神輿の担ぎ時だと思うのですが。

金太郎選手としては千載一遇の超BIGチャンスですね。この棚から降ってきたぼた餅をどう掴むかに注目ですが、チャンスはかなり薄いでしょう。
金太郎選手はその剛腕から繰り出されるパンチが注目されてますが個人的に最大の武器は左ミドルと左のテンカオ(膝蹴り)だと考えています。あの左ミドルで相手選手を動かさないようにしたり相手が突っ込んできたところにカウンターの膝を合わせる技術はかなりのモノです。逆にパンチは威力は高いもののスピードは井上直樹選手が試合で見切って対処しているので堀口選手が対応するのはさして難しくないと思います。
金太郎選手陣営がどういうプランを用意して堀口選手に挑むのかはわかりませんが、個人的にワンチャンあると思っているのがテイクダウンを軸にしたプランです。

堀口選手の攻略法については2パターン考えられます。
パターン1は堀口選手が攻撃のために飛び込んできた瞬間にカウンターを当てる。これは海選手がやりましたね。
パターン2はグラウンドで堀口選手を固定させること。これはパトリック・ミックス選手が行いましたね。
これで考えるとストライカーである金太郎選手はパターン1を選びそうですが、あのプランは海選手の並外れたハンドスピードが無ければ実行は難しいと思うので、チャンスがあれば狙うと思うのですがプランの軸にするのは考えにくいです。
だからこそパターン2の寝技勝負を金太郎選手は選ぶと思いますね。金太郎選手のフレームの大きさとフィジカルの強さ、意外と組み際の攻防が出来る事を考えるとテイクダウンを獲ること自体は不可能ではないと思います。
ただミックス選手のように試合の間ずっとバックキープやコールドウェル選手のようにずっとトップキープをすることは難しいと思うので、打撃を振って近距離戦を仕掛けて隙を見てタックル→すぐに立たれるけどまた打撃を振ってタックル…というかなりハードな試合をすることになると思います。

試合展開は堀口選手が右のインローや左のカーフで足へのダメージを蓄積させながらKOを狙うと思うのですが、そこにリーチで勝る金太郎選手が左ミドルキックや左のテンカオを見せて間合いを自分有利に作ってタックルに行くのかな…という感じですね。
どういう試合展開やどの局面になっても基本的金太郎選手が不利な攻防をずっとし続けなければいけないのでかなりしんどいモノになるのは確定でしょう。
また堀口選手が思ったより安全策を取る可能性も否定できません。
堀口選手自身はガンガン行ってKO、一本を狙ういつもの堀口恭司で勝負したいと思いますが、現状Bellatorで2連敗ということでこれ以上負けるとリリースもチラついてくるので堀口選手のチームの方が安全策を選ぶ可能性も全然あると思ってます。その意思を尊重して堀口選手が安全に試合運びをすることも考えられますね。

今大会では「超RIZIN」&「RIZIN.38」と連続して大会が行われますがメイ様の影響で純粋な格闘技興行としてはかなり弱くなった気がします。ただそれを堀口選手の参戦で中和した感じですね。
こう考えるとガチ勢やライト層も関係無くあらゆる層のRIZINファンを納得させられる選手は堀口選手ぐらいですね。
ガチカードを多くしても興行的な成功は難しい、ライト層にヒットするカードを多く入れても興行的には成功するが団体自体は育たず何度も出来るわけではないため団体の維持が難しい、といったジレンマを抱えながらRIZINは大会運営をしていると思うのですが、だからこそここで堀口恭司というあらゆる層の需要を満たせる最強最高の選手を出場させる判断をしたRIZIN運営の今大会のガチ度を感じます。

そして特にこのカードに関してですが榊原CEOの思う「RIZINらしさ」が一部のファンに理解されていないと感じるんですよね。
最近RIZINのYouTubeで鈴木アナによるRIZIN関係者へのインタビュー動画がUPされましたがそこで榊原CEOの人柄や考えがかなり理解出来ます。まだの人はチェックしてみて下さい!

それらを受けて筆者的な「RIZINらしさ」の解釈なのですが

今あるモノでチャレンジ

だと思います。今回の堀口恭司vs金太郎も堀口選手に当てられる選手がいないからこそ、その中でワンチャンありそうで人気もある金太郎選手をピックすることで期待感やワクワクを届けたかったのだと思います。
フロイド・メイウェザーvs朝倉未来も極端そんな感じです。世界を顧客にした興行を考えた場合RIZINの手札でどうやって盛り上げるか?という問いにメイウェザーを用意するという選択肢を選んだのは流石榊原CEOですね。ただ誤算だったのはファンが思ってたよりもガチカードを求めてたところでした。
ガチカードを求めてた皆さんは1回立ち止まって冷静に考えてみて下さいよ。RIZINがそんなガチカードを頻繁に組むわけないじゃないですか。
コロナ禍で国内で興行を回さなきゃいけなくなったためここ最近RIZINはガチカード路線の枠を増やしてきましたが、元々はギャビ・ガルシアvs神鳥忍によくわからんこだわりを見せてたりボブ・サップvs大砂嵐だったり最近ではボビー・オロゴンvs北村克哉を組むような団体ですからね。

団体や選手それぞれに様々な狙いや思惑があるこの「超RIZIN」&「RIZIN.38」ですが堀口恭司が試合をするというところで格闘技団体としての大切な何かは守れたのではないかと思います。
これからも自由とガチの狭間を行くRIZINを温かく見守っていきましょう。


⑨おわりに

今回の記事はいかがでしたでしょうか!
この超RIZIN&RIZIN.38の視聴は今からでも間に合いますので、下部のリンクから自分の都合の良いPPVを買ってみて下さい!

また同日に開催される「超RIZIN」についても解説記事を書いたのでもしよければチェックしてみて下さい!

この記事や今までのnoteに対しての感想や意見はドシドシお待ちしていますのでコメントやTwitterで反応や拡散をしていただけるととてもうれしいです!泣いて喜びます!

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