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壁の落書き 高架橋はそれでも笑う

乾いた空気が運ぶ物悲しさ
10月の田園が風に揺れて波を打った

セーラー服の噂話
体育館裏に幽霊が出るという
怪奇を含んだ祭囃子
ネガの記憶に褪せていく

花束を抱えた少年は打ちひしがれていた
揮発性の高い諦観はどこへ飛んでいくのだろうか
鉄塔の上 からすが鳴いた
もう帰らないといけないのに

壁の落書き 高架橋はそれでも笑う
吸い殻の空薬莢と有刺鉄線
後ろ向きの虚勢にため息を残して
透明に染めてほしいと願った

裏庭ねこ 気まぐれの時間
憂鬱を背負った背中を撫でた
暖かな体温はある日の朝
アスファルトの上 冷たくなっていた

落ち着きのない森に一つの石像
誰も知らない道があるそうだ

踏み入る好奇心は恐れなく
閑散な道は鳥居へと続いていく
かしこみかしこみ連れていかれる

風のしらべ  高架橋は空高く歌う
夕暮れの黄昏と1人の君
泣かないでこの街はきっと
僕らを包んでくれてるから

原風景は鮮明に麗らかに
さよならを

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