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家庭菜園から宇宙農業まで! 超好熱菌の可能性を探る【畑は小さな大自然・番外編】

www.kanazawa-bio.com
株式会社金澤バイオ研究所.からの抜粋記事です。

僕は都市部で箱庭菜園などを作る仕事もしているのですが、土がないところで畑を作るときは、いつも金澤バイオさんの培養土(※)を使わせていただいていて、とても重宝しています。本当に丈夫な野菜が育つんですよね。

※培養土:そのまま植物を植えられるように栄養成分が調整されている土

聡子さん: ありがとうございます。最初は土に肥料のように混ぜて使う「土の薬膳®」だけを販売していたのですが、雑貨店さんからそのままプランターなどで使える培養土が欲しいということで、培養土も作りました。ホームセンターで売られているようなものよりは値段的に高いのですが、土を入れ替えなくても良く、野菜も良くできて虫や病気の発生も抑えられるので喜んでいただけています。

土の入れ替えがいらないのはなぜなのでしょうか?

金澤先生: それはね、普通の培養土は化学肥料のように野菜に吸収されやすい状態で栄養素が入れてあるんだ。その栄養素を野菜が吸って大きくなるんだけど、それを吸いきっちゃうと栄養がなくなるから、土ごと入れ替えないといけなくなる。

でも「土の薬膳®」の場合はね、「腐植」っていう栄養素を貯めておく貯蔵庫のような役割をもつ物質がたくさん含まれているんだよ。この腐植はね、黒い色をしているから、良い土は黒いところが多いだろ? それがこの腐植の色なんだ。この腐植に貯められている栄養で野菜は大きくなるんだけどね、一度に全部は分解されずに栄養は土に残り続けるからね、野菜を植え替えるたびに少しずつ有機物の追加として「土の薬膳®」を足していくだけで、土を丸ごと入れ替えなくても栄養が足りるんだよ。もちろん他の有機質の土にも腐植は含まれているけどね、「土の薬膳®」は超好熱菌で好気発酵させているから特に良質な腐植質の多い土になるんだよ。

なるほど、土の中に栄養が貯められていて、そこからが少しずつ栄養素が吸収されていくようなイメージなんですね。化学肥料は吸収されやすい分、なくなるのも早いと。

金澤先生: そう!
金澤バイオ研究所の培養土を使ってそーやんが野菜やハーブを植え付けした直後の様子

植え付け後1カ月の様子。葉の色艶がよく、茎や葉が丈夫に育っている
――いつも土の入れ替えいらずで楽だなと思っていたんですよ。メンテナンスが楽だと、家庭菜園での野菜の栽培もとても簡単で楽しくなりますよね。

聡子さん: 微生物の違いや、土の違いってなかなか目に見えるものではないので、販売する際に金澤バイオの土の良さをアピールするのが難しいのですが。
家庭でも当たり前に野菜が作れる世の中になれば、野菜の高騰とか健康の問題とかこの土でクリアできるのはないかと思っています。

――農家でこちらの「土の薬膳®」を使っているところはあるのでしょうか。

聡子さん: 使っているところもあるのですが、やはり農家の場合は培養土の場合よりも毎回使う量が多いので費用がかかりすぎるのがネックになっています。
今は高価で良質な原料をお金を払って集めて、培養土を作っています。実は今「産業廃棄物処理業」の許可を申請していて、許可が下りれば産業廃棄物の処理費としてお金を頂き原料を集めることができるようになるんです。そうなれば原料代が抑えられるので、販売価格もだいぶ下げられると思います。
さらに、配送料が高くつくので、各地域で出る産廃や資源を使って堆肥を現地で作ってもらうようなこともしていきたいですね。

――それはいいですね! 各地域の地域資源や産業廃棄物を堆肥として再利用する循環が当たり前になると面白いですね。

聡子さん: 今は、鹿児島で農家さんに委託という形でお茶の生産も行なっています。こちらは100%「土の薬膳®」で土づくりを行なっているのですが、虫や病気の問題もほとんどなく、味も良いと評判です。


鹿児島の指宿で委託生産しているお茶(写真提供:金澤バイオ研究所)
――なるほど。費用面での問題がなくなれば、農業での利用も十分期待できそうですね。

超好熱菌は今後どう役立つか

――宇宙関連のプロジェクトにも参加されていたとお聞きしたのですが、金澤バイオの土づくりに欠かせない超好熱細菌は宇宙でどのように役立つのでしょうか。

金澤先生: それはね、宇宙農業よ。現在、火星で宇宙ステーションを作ろうという計画があって、それができたらね、そこで農業しようという話。やっぱり宇宙でもここと同じようにおいしい野菜を食べたいじゃない。それに宇宙ステーションで一番問題になるのが、生ゴミ、人の排せつ物や汚水などの処理の問題。宇宙空間にいろんな廃棄物を放り投げるわけにいかないからね。それを超好熱細菌を使ってリサイクルして、有機質肥料を作って、また農作物栽培に利用するんだよ。

――宇宙とはまたすごいですね。大地がない宇宙でも微生物の力で、循環が生まれちゃうんですね。

聡子さん: それから、あるテレビ番組の企画で、福島第一原発事故によって汚染された土から放射性物質を取り除く実証実験の中で、超好熱細菌が使われたことがありますよ。
汚染された土壌でヒマワリを育て、土から放射性物質を吸わせることで汚染土を浄化するという方法です。でもその放射性物質を吸った後のヒマワリの残渣(ざんさ)がとてつもない量になるので、今度はその処分が大変という問題があるんです。そこで、超好熱細菌を使って有機物を分解し、残渣の量を大幅に減らそうという企画でした。
結局、私たちが現場に行くことができなかったため、その企画自体が途中でストップしてしまったのですが、超好熱細菌の新たな可能性を感じられた出来事でした。目に見えない微生物の役に立つシーンは、私たちの想像を超えているとつくづく思いますね。

――へ〜、そんなことも! 超好熱細菌はこれからいろんな分野で活躍していきそうですね。

金澤先生: 研究ってのはね、実際に世の中の役に立ってこそだと思ってるからね。農業だけではなくて、いろんな分野での問題を解決できればと思ってるよ。