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何が違う?クラブ活動と部活動

中学校・高校で行われている課外活動の一つが部活動です。しかし、クラブ活動という用語や概念も学校にはあります。これらは一体何が違うのでしょうか。教師ですら勘違いしているこれらの違いについて取り上げてみます。


クラブ活動?部活動?

部活動のことを『クラブ』や『クラブ活動』と呼んでいる学校もあります。中高では部活動もクラブ活動も同じ意味で使わるのが一般的でしょう。しかし、学習指導要領上では、部活動とクラブ活動は似て非なるものです。

クラブ活動と部活動の違い

クラブ活動とは

クラブ活動は、小学校における特別活動の1つです。特別活動とは、集団活動を通して人間関係を築き、自主的自発的な態度を養うための教育活動です。特別活動には、HR活動、児童・生徒会活動、学校行事、クラブ活動(小学校のみ)の4つがあります。クラブ活動は時間割に組み込まれています。教育課程内の授業やLHRなどと同じ扱いです。

平成12年に廃止されるまでは中高でも特別活動としてのクラブ活動がありました。これも当然教育課程内の活動です。しかし中高のクラブ活動は廃止になり、現在はクラブ活動は小学校にのみ残っているだけです。

部活動とは

部活動とは、学校教育の一環に位置づけられている課外活動の一つです。部活動はクラブ活動とは異なり、授業外・教育課程外の活動です。そのため、法令等で学校に実施が義務付けられていない点が、クラブ活動との大きな違いです。

教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に、生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。

教育課程外の学校教育活動と教育課程との関連(第1章総則第6款1ウ)

クラブ活動の始まり

クラブ活動はどういう経緯で生まれたのか、学習指導要領の変遷を辿ってみましょう。

1947年 

この年の学習指導要領に『自由研究』という教育課程内の教科が明記されます。この時間の使い方として、教師の指導の下、子どもたちが自主的自発的に学習を進めるクラブ組織が生まれました。例として、スポーツクラブなどが挙げられています。これがクラブ活動の始まりです。

このような場合に,児童が学年の区別を去って,同好のものが集まって,教師の指導とともに,上級生の指導もなされ,いっしょになって,その学習を進める組織,すなわち,クラブ組織をとって,この活動のために,自由研究の時間を使って行くことも望ましいことである。たとえば,音楽クラブ,書道クラブ,手芸クラブ,あるいはスポーツ・クラブといった組織による活動がそれである。

1947年学習指導要領一般編(試案)第三章 教科課程

1951年 

授業としての自由研究が小中学校で廃止され、新たに『特別教育活動』という教育課程内の領域が設定されました。クラブ活動はこの中に組み込まれました。この時、クラブ活動はあくまで自発的参加という位置づけでした。

(b) 特別教育活動の領域
 特別教育活動の領域は,広範囲にわたっているが,ホームルーム,生徒会,クラブ活動,生徒集会はその主要なものということができる。
(中略)
クラブ活動 全生徒が参加して,自発的に活動するものの一つにクラブ活動がある。クラブ活動は,教室における正規の教科の学習と並んで,ホームルームの活動,生徒会の活動,図書館の利用とともに,生徒の学校生活のうちで重要な役割を果すべき分野である。中学校の生徒になれば運動能力も発達し,級友間に強い友情も感ずるようになり,また,団体生活に関心をもち,喜びを感ずるようになる。したがって,この時代の生徒は,クラブをつくっていろいろな活動に従事することに適している。クラブ活動は当然生徒の団体意識を高め,やがてはそれが社会意識となり,よい公民としての資質を養うことになる。

1951年学習指導要領一般編(試案) Ⅲ 教育課程

1958年

特別教育活動が引き続き設定されます。クラブ活動は全校生徒の参加が望ましいとの記述が追加されました。以下は、中学校のものですが、高校でも同様の記述です。

第2 内   容
 特別教育活動においては,生徒会活動,クラブ活動,学級活動などを行うものとする。
(中略)
B クラブ活動
 クラブは,学年や学級の所属を離れて同好の生徒をもって組織し,共通の興味・関心を追求して,それぞれ文化的,体育的または生産的などの活動を行う。
(中略)
第3 指導計画作成および指導上の留意事項
クラブ活動に全校生徒が参加できることは望ましいことであるが,生徒の自発的な参加によってそのような結果が生れるように指導することがたいせつである。
(※太字は筆者による)

1958年中学校学習指導要領 第2節 特別教育活動

1969年

この年、特別教育活動は学校行事を取り込み、特別活動となりました。同時に、クラブ活動は全員必修化になりました。

4 クラブ活動の内容の取り扱いに当たっては,次の事項に配慮する必要がある。
(1) クラブは,学年や学級の所属を離れて共通の興味や関心をもつ生徒をもって組織することをたてまえとし,全生徒が文化的,体育的または生産的な活動を行なうこと。
(※太字は筆者による)

1958年中学校学習指導要領 第4章 特別活動

また、文科省『中学校指導書 特別活動編(1970年)』には『いわゆる放課後に行なわれてきたクラブ活動は、学習指導要領に示された教育課程の基準としての内容のクラブ活動には含まれないことになる。又、参加意欲のない生徒も必ずいずれかのクラブに所属し、活動することが要求される』との記述があり、全員強制という扱いだったことが分かります。

部活動の始まり

部活動は、戦前に欧米スポーツが輸入され、学校の課外活動として広く行われていた実態があります。1886年の諸学校令が交付され、学校の体育の授業では軍隊教育の一環として体力向上を目指した体操が教えられていました。その一方、スポーツ愛好学生がスポーツクラブを作り、『校友会』という上位組織ができ、学校対抗の大会も開催されていました。戦後は、今の部活の前身は、体育に必須の課外活動として重視されていました。学習指導要領の『クラブ活動』設定以前より、課外での運動活動は学校で幅広く行われていたのです。

1915年時点で、今の高校甲子園大会の全身となる全国中等学校優勝野球大会の第一回大会が既に行われていたり、野球について1932年時点で競技過熱に対する規制が文科省から行われていたり、頻繁に開催されるようになった全国大会に対する規制として1948年に文科省から『学徒の対外試合について』という通達が出されたりなど、その過熱ぶりが伺われます。

クラブ活動必修化と廃止に至る経緯

課外活動である部活動と教育課程内のクラブ活動は並行して行われてきたようです。ではなぜ途中でクラブ活動は必修化され、逆に最終的には廃止に至ってしまったのでしょうか。どうやら必修化の背後には、教員の超過勤務と残業代の問題があったようです。

クラブ活動必修化

クラブ活動必修以前から、教員の超過勤務の問題は大きくなっており1965年より全国で残業代を求め日教組が裁判を起こしていました。結果は教員側の勝訴で残業代を勝ち取っていました。つまり、国は敗訴していました。

そこで、文科省は放課後課外の部活を教員の勤務時間内にのみにしようとしたのが 『クラブ活動』の必修化だったと言われています。給特法が成立し、授業内にクラブ活動が設定された代わりに、課外でそれでも教員がやろうとするなら自主的扱いにする、という運びになったのです。

クラブ活動廃止

ところが、クラブ活動必修化には問題がありました。前述の競技の全国的な過熱や意義深いとされる部活動へのニーズなど要因は様々あったことでしょう。そのため、1989年の学習指導要領では、必修のクラブ活動を部活動で代替することを文科省が認めることになりました。そして、8割以上の学校が必修のクラブ活動を部活動で代替するようになりました。

4 クラブ活動については、学校や生徒の実態に応じて実施の形態や方法などを適切に工夫するよう配慮するものとする。なお、部活動に参加する生徒については、当該部活動への参加によりクラブ活動を履修した場合と同様の成果があると認められるときは、部活動への参加をもってクラブ活動の一部又は全部の履修に替えることができるものとする。
(※太字は筆者による)

1989年中学校学習指導要領 第4章 特別活動

制度が形骸化し、学習指導要領の理念から大幅に乖離した結果、最終的にはクラブ活動は廃止になったとみられます。結果として課外活動である部活動のみが中高には残りました。

まとめ

クラブ活動と部活動は全く別のものです。しかし、元々教育課程内の必修のクラブ活動に対し、教育課程外の部活動がその存在を取って代わってしまったという驚きの経緯があります。

部活は全員強制参加とする土壌が残っていたり、部活は特別活動だと主張する教員がいたりする背景には、このような経緯があるのではと思われます。

引用文献

問われている部活動の在り方 ~新学習指導要領における部活動の位置付け~
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2009pdf/20090701051.pdf

学校の運動部活動・クラブ活動のあり方の検討 一 文部省の指針 ・施策におけるその学校教育上の位置づけ一https://otemae.repo.nii.ac.jp/record/1927/files/1995_jc_h001-026_kitagawa.pdf

必修クラブ活動の廃止と今後の部活動の在り方について


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