見出し画像

教育実習で教職を諦める学生

GWが終わり、いよいよ大学4年生にとって重要な教育実習の時期になります。教員免許取得には、教育実習が必修の単位として義務付けられています。実習で教職への気持ちを強くする学生がいる一方で、実習により教職を諦めてしまう人もいます。なぜでしょうか。


過酷な実習で断念

教育実習の内容

教育実習の中身は主に、授業見学、授業外での生徒とのかかわり(清掃やHR)、授業実施、教材研究、の4つです。また、部活動の指導を体験する時間や、文化祭などの学校行事の準備を手伝う場合もあります。このうち最も重要なのは授業です。行う授業数が多ければ多いほど、その準備である教材研究には、多くの時間を割くことになります。

教材研究とは主に指導案作りです。指導案を書いてすぐに授業をさせてもらえるわけではありません。担当教諭の指導の元、実習生は授業実施までに何回も指導案を書き直します。適切な言葉の表現やフォーマット、板書計画、教師の発問、想定される児童生徒の反応、評価方法、など指導案には授業での要素を事細かく記載します。実習先によっては、4〜5回も指導案を書き直すこともあります。会って間もない生徒の反応を考えて記載したり、経験値の少ない中で授業を考える必要があり、私の経験では、指導案作りが実習では一番試行錯誤が必要で大変でした。

連日長時間の実習

この教育実習が学生にとって過酷すぎて、心が折れてしまう場合があります。学校では、教員は朝7時から夜9時まで働いています。教育実習生も長時間の実習になりやすいです。朝8時に学校に来て、生徒の部活が終わるまで学校に残っていると、一日10時間以上は学校にいることになります。教科指導外の業務で多忙な教諭が担当になった場合、アシスタント代わりに使われて、帰宅が夜9時になるなども聞きます(福田, 2019)。

終わらなかった指導案などの課題は自宅に持ち帰って翌日までに仕上げるなど、毎日帰宅後にもやるべきことが残っています。私の友人らは土日の休みの日や平日の日付が変わる時間まで指導案作りをしていました。実習が連日長時間に及ぶことは、実際の教員生活の体験ではあるものの、学生にとっては大きな負担です。

なお、教育実習の内容については、実習先の担当教諭に委ねられている面があり、必ずしも同じカリキュラムを全ての学生が体験するわけではありません。そのため、過酷すぎる実習を体験してしまう学生もそうでない学生もいるでしょう。

学校現場のブラックさを知って断念

実習で教員としてのやりがいを感じる一方、現場の教員の働く姿を見て教職を断念してしまう学生もいます。実習で目の当たりにした教員の働き方で、教職を断念した理由として多く挙げられているのは…

  • 昼食を食べる時間が殆ど無い

  • 夜遅くまで残って働いている

  • 休日にも出勤して働いている

  • 定時を過ぎてから来校する保護者対応

などです。実習先で眼の前の先輩教員らを見て、自分が将来教職について働いていく自信がなくなってしまい、別の職業を選択するという結果に繋がっています。

まとめ

本来ならば、教育実習は教員になる志を固める意味もあったはずです。しかし、せっかく教員になりたくて教育実習にきた学生に、『この労働環境では無理だ』と思わせてしまう事態になっています。現場の実態を知り、学生は適切な判断をしているとも捉えられます。しかし、これではますます教員不足が加速してしまうのではと危惧されます。

引用文献

福田 淑子 (2019). 教育実習指導に関する全国規模での共通ガイドラインの必要性についてhttps://www.hosei.ac.jp/application/files/9415/9219/1074/2019_07.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?